表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
140/148

(5-8)正直で

(なるほど……)


 能力を持つ人にはそれぞれ帰る場所がある。

 渉には奥袴狭がある。

 だとしたら、自分にも――。


「そうか……」


 思わず声が漏れる。


「そういうことなのかもしれません……」


 渉も静かにうなずいた。


「そうですね……ただ、こればかりは私にもわかりません」


 少し考えるように続ける。


「私はずっと『村があるから私がいる』と思っていました。もちろん父もそうだったでしょうしその前も。だから、その逆があるのかどうかは……まだ何とも言えません」


 誰にも答えはない。

 だからこそ、確かめていくしかなかった。


 由紀は樹へ目を向ける。


「でも、もしそんな大事なことだったら……樹で大丈夫かしら」


 少し心配そうな表情になる。


「えー?」


 樹はすぐに口を尖らせた。


「ぼく、忠史くんと山行きたいよ!」


 その無邪気な声に部屋の空気が少し和らぐ。

 ハジメは苦笑しながら言った。


「樹は『根と話ができる』と言っていますし本当にできるんだろうと信じています。ですが、もしかするとこの辺りの山だけなのかもしれません」


 冷静な父親らしい口調だった。


「そうなると、結果的に何の力にもなれない可能性もあります。そのことだけは頭に入れておいてください」


「もちろんです」


 忠史は素直にうなずく。


「最終的に判断するのは僕や母です。樹には、ちょっとしたアドバイスをもらうくらいのつもりで考えています」


「それなら安心ですね」


 ハジメも穏やかに笑った。

 そして、ふと思い出したように尋ねる。


「それで……そもそもの話ですが」


「はい」


「遠藤さんの親御さんは、樹くらいの子が一緒に来ても大丈夫なんでしょうか」


 その問いに忠史は一瞬言葉を失う。

 確かに、その通りだった。

 さっき家では「山に詳しい友人」としか話していない。


 嘘ではない。


 だが、母も美樹も、まさか小学生の男の子が来るとは思っていないはずだ。

 少しだけ考え、そして静かに答えた。


「そこは……もう正直に話そうと思います」


 自分でも不思議なくらい迷いなく口をついた。


 出石(いずし)のキャンプ場から山へ入り、迷って遭難しかけたこと。

 山の中で樹と出会ったこと。

 樹は山奥の村で暮らしていて、山のことなら誰よりも詳しいこと。

 そして本人は『根と話ができる』と言っていること。


 そこまで、ありのまま話そう。


 新しい年を迎えた。

 そして、自分の中でも新しい力が目覚めた。

 だからこそ、隠すよりも今は正直でいたい。

 忠史は、そう思うようになっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ