(4-13)反応
言葉にすると途端に嘘みたいになる。
自分でもそう思う。
だが隠しても意味がない。
「自分の目の前の視界の範囲を一枚の絵みたいに見立てるんだ」
「絵?」
「うん」
「それを捲る」
「捲る?」
「本のページを捲るみたいに」
忠史は手を動かして説明した。
「そうすると、自分が行きたい場所に行ける」
沈黙。
数秒、いや、十秒近くあったかもしれない。
吉岡と村井は顔を見合わせた。
さすがに驚いている。だが「いやいや何だそれ」とか「嘘だろ!」とは言わなかった。
それが逆に忠史にはありがたかった。
「続けて」
村井が静かに言う。
忠史は頷き、そしてさらに話を続けた。
夏休みの間、自分が何をしていたのか。
リゾートバイトと言っていたが本当は違ったこと。
本橋や渉がやっていること。
「最期師」という仕事。
人生の終わりを迎える人の最後の願いを叶えるために各地を巡っていること。そして、その手伝いをしていたこと。
夏休みのほとんどを奥袴狭で過ごしたこと。
須永栄一との出会いや大村環とのことも話せる範囲で少しずつ話していった。途中からは自分でも驚くほど自然に言葉が出てきた。
概ね話し終えると、忠史は小さく息を吐いた。
「だからさ……リゾートバイトって言ったの、嘘だった」
二人を見て少し苦笑した。
「ごめん。あの時はどう説明したらいいかわからなくて」
正直に頭を下げた。
沈黙。
静かな風が吹き、神田川の水面がきらりと光る。
「いや……」
最初に口を開いたのは吉岡だった。
「そんなことは別にいいんだけど」
そう言ったものの、その先の言葉が続かない。
村井も困ったように笑った。
「ごめん」
「うん?」
「話がすごすぎて」
村井は額を掻いた。
「何をどう聞いたらいいのかわからない」
「それ」
吉岡も即座に同意する。
「俺も今ちょうど同じこと考えてた」
再び二人は顔を見合わせた。
「えっと……まずどこから整理する?」
そんな反応になった。
忠史は思わず笑ってしまった。
笑われるかもしれない。
信じてもらえないかもしれない。
そんな覚悟もしていたが、二人はそうではなかった。
信じるとも疑うとも言わない。
それが忠史には嬉しかった。
吉岡は腕を組みながらしばらく考え込み、そして指折り数えて村井と二人でわからない点をあげていく。
「えっと……まずは村のことかな……?」
「人が行けない村?」
「そして最期師?」
「能力?」
「ページ捲って移動?」
「大村って人が村に行った?」
三度、二人は顔を見合わせた。




