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(4-12)どんな能力?

 神田川沿いの公園に着く頃には陽は少し傾き始めていた。夏の名残を残した夕方の空気はまだ暖かいが昼間ほどの厳しさはない。

 川面を渡る風が時折吹き抜け木々の葉を揺らしていた。


 公園には人影もほとんどない。犬の散歩をしていた年配の男性がちょうど帰っていくところで、あとは遠くのベンチに一人座っている人が見えるだけだった。

 静かだった。話をするにはちょうどいい。


「へー」


 吉岡が辺りを見回す。


「神田川沿いにこんなとこあったんだ」


「な」


 忠史は少しだけ嬉しそうに言った。自分が見つけた場所を褒められたような気分だった。

 村井も周囲を見渡す。


「向こうに見えるのって椿山荘(ちんざんそう)だよな?」


「ああ、たぶん」


「じゃあ江戸川橋の辺りか」


「そうそう」


「意外と緑あるな」


「だろ?」


 そんな会話をしながら、三人は公園の奥にあるあずまやへ向かった。

 木造の小さな屋根付きの休憩所。中には古びたベンチが据え付けられており、三人はそこへ腰を下ろした。

 神田川の流れる音が心地よく聞こえる。東京の真ん中なのに不思議と落ち着く場所だった。


「で? 何を話してくれるんだ?」


 吉岡が口を開いた。

 村井も静かに忠史を見る。


 二人とも冗談を言う様子はない。真面目な顔だった。

 忠史は一度深呼吸した。


 ここまで来たのだ。

 もう引き返すつもりはない。


「オレさ」


 ゆっくりと言葉を選ぶ。


「夏休みに袴狭(はかざ)遺跡へ行ったって話、覚えてる?」


「ああ、なんかキャンプしてそば買ってくるとか言ってたよな」


 吉岡が頷く。


「でも実はその時……遺跡には行かなかったんだ」


「うん、行けなかったって言ってたね。お土産も忘れたって」


 二人が顔を見合わせる。


「正確には、行く途中で迷った」


 忠史は少し遠くを見るような目になった。


「あの日、山の中で道を間違えてさ」


 そして、ゆっくりと話し始めた。


 山奥に存在する集落。

 地図にも載らない場所。

 奥袴狭という村。

 そこで出会った人々。


 奥園家や中村家の人々。

 奥村ヒサ子。


 そして――奥村渉。


 忠史はできるだけ事実だけを話した。

 余計な脚色はしない。

 信じてもらおうとも思わない。

 ただ、自分が体験したことをそのまま伝えようと思った。


 吉岡と村井は途中で茶化すこともなく黙って聞いていたが、ただ表情だけが少しずつ変わっていった。


「その村にさ……不思議な能力を持つ人がいたんだ」


「不思議な能力?」


 吉岡が反応した。

 村井も身を乗り出す。


「どんな能力?」


 忠史は少し迷った。


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