(4-11)公園へ
そして続けた。
「彼女?」
「宗教?」
「借金?」
「全部違う」
忠史は思わず吹き出した。
「なんだよそれ」
「いや、候補を挙げてみた」
「ひどいな」
三人で笑う。
久しぶりに肩の力が抜けた気がしたが、本題はここからだった。
「オレ、何か変だった?」
忠史が尋ねる。
村井は少し考えた。
「変っていうか……」
「うん」
「感じが変わったよね」
「感じ?」
「前より落ち着いたというか、何か目標見つけた人みたいな」
そう言う村井の言葉に忠史は少し驚いた。自分では気付いていなかったが、言われてみれば確かにそうかもしれない。
吉岡も頷く。
「ああ、それだな。前から真面目な奴ではあったけど、もっと真面目になった感じ」
そう言って笑う。
「昔のちゅうちゅうなら、もっと適当にサボってた」
「言えてる」
「うるさいな」
忠史は苦笑した。だが悪い気はしなかった。
「そうか……」
自分ではわからなくても周りからはそう見えていたのか。
「で、どうする?」
吉岡が鞄を肩にかける。
「軽く居酒屋でも行く?」
「あー……」
忠史は少し迷った。
そして首を振る。
「いや」
「ん?」
「いつも行ってる場所があるから」
「お?」
「そこで話そうかと思って」
「へぇ」
村井が興味深そうな顔をする。
「よく行く店とかあるの?」
「あ、いや……」
忠史は少し申し訳なさそうに答えた。
「公園なんだけど」
一瞬の沈黙。
そして。
「公園?」
「公園」
「居酒屋じゃなくて?」
「うん」
「ファミレスでもなく?」
「うん」
「公園?」
「だから公園だって」
三人とも笑った。
「まあいいじゃん」
村井が言う。
「話聞くだけだし」
「だな」
吉岡も頷く。
「いつも行く公園なんて、むしろ気になるわ。秘密基地みたいな場所なの?」
「秘密基地じゃないから」
忠史は苦笑しながら言った。
神田川沿いの公園。
毎日通っている場所。
いつも練習している場所。
自分の中で何かが変わり始めた場所。
話をするなら、あそこがいいと思った。
「じゃあ行こう」
吉岡が先に歩き出す。
「案内してくれよ、ちゅうちゅう」
「ああ」
忠史は頷いた。
三人が校舎を出ると、夕方の柔らかな陽射しがキャンパスを照らしていた。
これからどう話そうか。そして、二人がどう受け止めるのか。
まだわからない。
それでも忠史の足取りは不思議と軽かった。




