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――幕間――妖精会合

※チエの話からいきなり場面が変わっております。



時はアイ達が工場に飛ばされた瞬間に遡る。




「お前、まんまとムッシー達の罠にはまったムシ。」


ムッシーの冷淡な声が響いた瞬間、アイ達の姿が消えた。


「ア、アイ達はイカリは何処に行ったブツ!?」


いきなりの状況にショクブッツは慌てふためく。


「ショクブッツ。落ち着くムシ。」


静止させようと手を伸ばしたムッシーの手がショクブッツの蔦によって叩かれる。


「落ち着いてなんていられないブツ!」


「彼女達ならあの工場だ。精々、助けてやるといい。」


???(ヘッビー)はショクブッツを一瞥もせずに違和感のある喋り方をした。

 

「ありがとうブツ!」


「ショクブッツ!待つッシャ!」


ドッシャの声も聞かずショクブッツは全速力で工場へ向かった。


「お前、目的は何ムシか!」


警戒態勢が一気に形成される。地面に埋め込み、触角を接続する虫、ホバリングを始める虫達によって囲まれる。


「虫の精。君なら僕から直接問いただす必要はないだろう?僕の考えていることを読んでご覧よ。」


「出来ることなら始めからやってるムシよ。でも、お前は意図的に情報を隠してるムシね。未来は思考回路すら制御できるムシか?高度文明生命体。」


小馬鹿にしたように鼻で笑い、真っ赤な眼球をムッシーの方へ向ける。


「そうだね。思考回路だけじゃなくて感情すらも手動で制御することが可能だ。基本的にはオートにしてるけどね。」


あ、因みに、と近くの虫を舌で絡め取り咀嚼しながら話を続ける。


「手動で感情をコントロールする際の練習に使うのがエモーショナルセイバーだ。喜怒哀楽をインプットしてくれるから対応する表情や態度をアウトプットできればいい。これを何度か練習して感情の手動コントロールを上達していくんだ。感情をオートにすると暴発するからね。手動にしていた方が何かと都合がいい。」


長々と話しつつ、咀嚼した虫をゴクリと飲み込む。

次の餌を探そうと周りをキョロキョロと見渡している所を上から巨大なカマキリの足に頭を抑えられた。


「何でそんなエモーショナルセイバーズにアイ達がなる必要があったッシャ!?」


高度文明生命体は口が抑えられ開かないにも関わらず流暢に言葉を並べる。


「文明移住の為だそうだ。」


カマキリの鎌が頭のすぐ下の部位にめり込む。

 

「嘘ムシね。お前はこれまで何度か嘘をついていたムシ。洗いざらい全部話すムシよ。」


この状況でなお、溜息をつく余裕のある高度文明生命体。


「流石にまだ言えないよ。情報の開示にもタイミングってものがあるんだ。」


ふざけるなと言わんばかりに周囲の虫達が圧をかける。この時点で高度文明生命体には隠しごとがあるという事実が確定した。ならば、早めに吐かせて食い止めなくてはならない。


「言っておくけど、君達にはもうどうしようもないことだ。僕の目的は8割完成したようなものだからね。後は、確定してしまえば僕の勝ちさ。」


「お前の目的が達成されたら、アイ達にどんな影響があるッシャ!」


赤い目をくるくるさせて考えているかのようなジェスチャーを行う。


「う〜ん。捉え方次第じゃないかな?あるという考え方もできるし、無いという考え方もできる。」 


「お前、本気で言ってるムシか!そもそも、何で消えることになるムシ!」


触角で考えていることを読み取ったムッシーは真っ先に糾弾する。


「消えるって…どういうことッシャ?」


いきなりのことに疑問を感じたドッシャはムッシーに問いかける。


「理由は分からないムシが、この世界…この文明…。そのものが消えてなくなるムシよ…。」


「ちょっと待つッシャ。だったら文明移住はどうなるッシャ?何のためにアニマッル達を攫ったッシャ?何より、お前は誰の味方ッシャ!?」


目を細めてドッシャをマジマジと見つめる高度文明生命体。


「文明移住は行われる。僕の目的の妨害にはならないからね。君達妖精を攫ったのは他でもない。君達の力を使う為だ。動物の精は生命資源の効率的運用に利用される。近頃、防衛兵器が攫った水の精は工場や研究施設の水質管理。魚の精は戦力増強だ。そして常に僕は利益の味方だ。どうだい、これで満足かい?」


つまり、文明移住後のこの文明を消すということになるのか。


そして、利益の味方……。やけに引っかかる。

この言葉の意味を全ての虫と共に考えていると1つの仮説が思い浮かぶ。


文明を消すことが利益に繋がる。

高度文明生命体の情報によると未来では文明に価値をつけて売買しているらしい。

そしてこの文明は維持費用に対し価値が見合ってない。だから消す。しかし、この理屈であれば、維持費用節約のためにもっと早い段階で消していたはずなのだ。


ここまで、この文明を残していた理由。文明が成長不能になると保険が下りるからじゃないのか?だが、本当にこれだけの理由だろうか。まだ、何か裏がある。そんな気がしてならない。 


「確定したよ。君達が時間を作ってくれたお陰でね。」


確定…。保険が下りる条件。成長不能な文明の未来か…?


「虫の精。君の推理はおおよそ当たっている。一応、クライマックスだ。文明移住を見届けよう。」


赤い目から黒い異物が黄色の液体を飛び散らせながら飛び出し、その異物からスクリーンのように映像が空間に映し出される。


「ドッシャ。これで擬似シミュレーションをして欲しいムシ。」


高度文明生命体から得た文明移住の方法をドッシャに渡す。


ムッシーの見込みでは成功率自体は高い筈だ。だが、どうなるのかは予めドッシャの創る疑似空間内でシミュレートする必要がある。


「成功率は8割を超えてるッシャね。残りの2割は機械の不具合や不運ッシャ。」


「土の精はそんなこともできるのか。まぁ、ただ、現実はどうだろうね?」


成功率がかなり高いわけだから、大半の人間は移住先で戸惑っている映像が映る。ムッシーもそう思っていた。


「どうなってる…ムシ…!?」


移住先に人は映るがすぐに苦しみ始め、数分後には何事もなかったように消えてしまった。


そして高度文明生命体の脳内に開示された全ての情報を見て、ヘッビーは絶句する。


「虫の精。君の間違いを指摘しよう。まず、貰えるのは保険金じゃない。保険金は積立てないと貰えないだろう?貰えるのは倫理委員会からの謝礼金、もとい、御香典みたいなものさ。次は君も気付けなかったことだね。」


「お前……とことん全てを利用するムシか!?」


突然、高度文明生命体の身体が消えたかと思えば、巨大なカマキリに喰らいつく程の巨体となって現れる。  


「当然だ。彼女達が文化侵略という悪を買ってくれたんだ。それを粛清して謝礼金を貰うチャンスでしかないじゃないか。文化侵略はかなりの大罪でね、これを未然に防いだことは僕達の世界では英雄に等しい行いになっている!」


巨大なカマキリはその大口によって2つに分かれ、小さな虫達は蹴散らされる。そして、ドッシャを狙い毒牙を走らせる。 


ドッシャを狙う理由。それはこの文明の生命の祖であるからだ。既にミッズが消え、次はアニマッルが消えることが予知されている。残るはドッシャだけである。


ドッシャも消える可能性が露見している。それも、エモーショナルセイバーズによってだ。


エモーショナルセイバーズ計画は文明移住に関わることを建前に、本来は生命の祖を仕留める為に考案されたものだ。


特にアイの感受性が哀のエモーショナルセイバーと相性が良く姉と同様に極度に追い詰められると高い殺戮衝動が湧くことを利用し、それを哀しみへと変換することで殺意の属性を持った一義的な哀として出力される。


結果としてアイは哀しみに暮れた殺戮マシンへと変貌し、目に映る生命体を哀しみから解放するために殺すようになった。アニマッルもそれによって死んでしまう。


ミッズが死んだ以上アニマッルが死ねばこの文明は倫理委員会が定める安楽死の基準を満たす。


高度文明生命体の狙いはチエが文明移住へと計画を変えた時点で謝礼金目当てにシフトしていたのだ。


反対していた文明移住に積極的に手を貸したのも、チエ達にオーバーテクノロジーを渡したのも、チエの勘を外すために防衛兵器の実験で失敗させたのも全て。


エモーショナルセイバーズの力も一度昏睡させてから投与していた。

外の2人は森の中で、イカリはアイの初陣の際に、そしてアイには気付かれ、姿を見られた。そのため急遽、記憶を抹消し、投与を行った。少しでもタイミングがズレているとショクブッツに見られるところだったらしい。


これが全ての全容。

文明移住もエモーショナルセイバーズも所詮は利益を上げる為の餌でしかなかったというわけだ。




ドッシャが地面を割り、巨大な高度文明生命体をマントルまで突き落とす。

しかし、既に2匹目、同一個体のコピーが工場の方から迫って来ていた。

そして、その背後には異様な雰囲気を纏ったアイが房に搭乗、浮遊し、追いかけてきているのであった。

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