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チエ15

「チ………エ……マル……。」


全身を拘束具によって拘束されたアニマッルはまるで忌み者を見るかのような目を向けてくる。


完全に身動きが取れなくなったアニマッルは特殊なケースの中に入れられる。


これで私の欲しかったものは全て得られた。


「一体、何のつもりマルか!」


「あんたには言っても分からないよ。」


研究者達がケースに様々なケーブルを繋ぎ、ヒダさんと私で機械の調子を見る。


「ヒダさん。そっちはOK?」


ヒダさんは言葉では答えず首をコクリと縦に振るだけである。

近頃のヒダさんはだいたいこうだ。YESかNOで答えられる質問には言葉で伝えない。視線をヒダさんに向けてないといけないから、そこそこ面倒なのだが。


「まぁ、いいや。研究者達、スタートしてもらっていいよ!」


研究者が機械を操作し、ケーブルに電流が流れる。


「マアァァァァァァッ!?」


アニマッルの悲鳴が研究施設内に響き渡る。


この悲鳴の原因が痛覚によるものなのかは分からないが、妖精達にとって能力を奪われることは悲鳴を上げるに相応しいらしい。


何故、アニマッルの能力を奪う必要があるのか。

簡単なことだ。アニマッルの能力をいつでもどこでも使うことができるようにするためだ。


始めからこの手段を用いることが出来ていれば文明の発展が可能だったかもしれないが、如何せんこの装置が出来たのがここ最近だ。


だから、以前はアニマッルとの接触に不確定要素が絡むことがあった。だが、これで不確定要素は排除され、私達の手でアニマッルの能力を自在に操ることができる。


「チエ……こんなことをしたら、村の皆が…生きられないマル…!」


どうやら、能力を殆ど奪っても殺すことは出来ないらしい。まぁ、アニマッルの能力を全て奪う技術は現在、存在しないため死んで貰っても困るが。


「それが?あんなカルト集団は死んだ方が世のためだよ。」


世のためというよりは私の私利私欲か。そんなことはどちらでもいい。

次は能力の移植をしなければならない。

移植先は当然、防衛兵器。移植、順応を終えた後にデータをサーバーに残さないといけない。


「能力奪取率84%です。まだ、続けますか?」


モニターの前にいる研究者が状況を伝える。本来ならもう少し欲しい所だが伝えられたということは奪取がそれ以上進まないということだろう。


「いや、大丈夫。移植の方に移って。」


装置を通して防衛兵器が入っているカプセルの方へ指示を送る。


「チエ!やめるマル!それは、生命の冒涜マル!相手はチエと同じ人間マルよ!そもそも、人間にそれは重すぎるマル!」


弱ってる癖に口だけはよく動く。

確かに、有り体に言ってしまえば神の能力を人の身に宿すようなものだ。そう考えれば、アニマッルの言っていることにも一理ある。それはあくまで普通の人間だった場合だが。


防衛兵器の戦闘データを見た所、終盤辺りでアニマッルの行動を即座に分析し、予知した上で対処することに成功していた。

アニマッルが本気を出してなかったにせよ、現時点で防衛兵器の方がアニマッルより強い。ならば、アニマッルの能力にも耐えることは可能なはずだ。


「移植に成功しました!しかし、しかしこれは…マズイです!」


「アァァァァァァッ!」


カプセルを粉々に粉砕し、黒い(もや)を纏い、叫びながら暴れ出た。


「ヘビ!」 

 

巨大化させた口で防衛兵器を咥えると天井を突き破って地上に出る。

壊れた天井の破片が落下し研究施設内の設備が破壊される。


「珍しくあなたの勘は外れたのね。」


ヒダさんが煽るような口調で私の神経を刺激する。ただでさえ、破壊された設備で私のフラストレーションは最高潮だというのに……。


とはいえ、ヒダさんが言っていることは正しい。今回は完全に外れた。

勘だから、外れてもおかしくないといえばそれまでだが、私の勘はかなり当たる方だと思っている。


取り敢えず、次の指針を打ち出さなければ。幸い、ここにある設備は実験用の設備だけだ。文明移住に必要なものは全て国の研究施設に設置している。


となると、解決すべき課題として残るのは暴走した防衛兵器をどう対処するかということだ。

また、勘にはなるがヘビに任せておけば一時的に暴走を抑えることはできるだろう。能力的には簡単に暴走を抑え込むだろうが、それをずっとする義理もメリットもヘビにはない。


ヘビの気まぐれに掛けることも1つの手かもしれないが、流石にリスキー過ぎると言わざるを得ない。


「1つ提案があるのだけれど?」


縋る期待と愚答かもしれないという呆れを抱き、ヒダさんの提案を聞く。


「私達にもオーバーテクノロジーを投与して、彼の莫大なエネルギーを分担し、抑え込むっていうのはどう?投与の影響はあの男の人で確認済みでしょう?」


耳に髪をかきあげながら飄々と語る様子に苛つくものの、言っていること自体は私の考えよりも良案だ。


「それしか道はなさそうね。」


「……生物を超越してしまうマルよ…。チエ……。」


戯言を言うアニマッルを横目に見る。どうやらアニマッル関連の設備も無事なようだ。研究者は何人が下敷きになって死んでしまったようだが。


「だったら、あなたのお友達に話をつけないと。行きましょう。」


私達はいつも通りの道を使って地上へ上がった。

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