チエ14
文明移住計画の公共化が公になっている裏でチエのもう1つの計画が着実に動いていた。
村の昼行性の生き物が寝静まった頃、漆黒の影―――防衛兵器が忍び寄る。
そのオーラは如何なる生物も寄せ付けない程、禍々しく、怯えさせるもので、自然と夜行性の生き物からアニマッルに危険分子が来たという連絡が行った。
そして―――
「お前…何者…いや、人間…マルね…。何しに来たマルか!」
月光が照らす闇の村内で暗黒騎士を思わせる甲冑に身を包んだ防衛兵器と小さな妖精が顔を合わせた。
外野はゼロ。夜行生物たちはアニマッルの計らいで離れた場所に移動している。
暗雲が月を隠す。夜風が吹き、自然を揺らす。
防衛兵器が漆黒の装飾剣を抜刀する。
「…荒事にするつもりマルか…。後悔しても遅いマルよ。人間。」
アニマッルは生物のカタチや生命を自在に操ることができる。
普段は生命の尊厳を傷つけることになるため封印しているが、今回は村に危害が及ぶ可能性のある緊急時だ。
一瞬でカタをつけるために使わざるを得ないだろう。
「…………効かない…マル……!?まさか、強制的に抑え込んで…ッマル!」
驚愕するアニマッルに構わず漆黒の剣が襲いかかる。
間一髪で避けるのに成功したものの、呼吸の間もなく2発目が飛んでくる。
「マルッ!!」
アニマッルの持てる最高速度で空中に浮かび上がることで直撃を免れた。
「……タイマンってわけマルね……。」
アニマッルの身体が8等身の人型になり、亀の甲羅をも上回る防御力を持った皮膚を纏って地上に戻る。
防衛兵器の着地狩りに最硬の皮膚を以て弾き、怯んだ隙に肥大化させた剛腕で地面に叩きつける。
立ち込めた土煙の中、剛腕を押し退けて剣先が喉を突き破らんと飛んでくる。だが、当然、刃は通らず火花が舞うだけであった。
直ぐ様、剣を引き、隙を狙ったアニマッルの攻撃を迎撃する。次第に弾かれて怯むこともなくなっていき、相手を力で押し返すことは容易くなってきた。これが、この防衛兵器が誇る適応能力、そして成長性である。
「マルッ!?」
遂に斬り上げによってアニマッルは空高く跳ね上げられる。
瞬く間に防衛兵器も跳躍し、アニマッルを剣で叩き落とす。
そしてミサイルが如き速度で剣を突き立て、アニマッルに急接近、地面に落下する。
「マッ………ルッ……!?」
漆黒の剣は遂に最硬の皮膚を打ち破るに至った。
現世の生物であれば打ち破ることが困難な皮膚を貫かれたことにアニマッルは目を丸くする。また、アニマッルの中の疑問が強くなる。
「お前は何者で目的は何マルか!」
この人間は生物の域を超えている。
人間であることに間違いはないが人間であることに疑問を呈したい。
それに一体、この村にどんな用件があるというのか?
パッと思いつくのはイカリの存在だ。彼女は村の外から来た謎に包まれた女の子だ。その子を追って村に来たという理由であれば大方理解できる。ただ、そうすると不可解な点が出てくる。
何故、これほどまでの力を持っているにも関わらずアニマッルを無視してイカリを追わないかということだ。
そして、そこまで考えた所で1つの推論が出来上がる。
この人間の目的はイカリではなくアニマッルなのではないか……。
もし、そうならば、かなりマズイ。
「我は暗黒騎士。我が命は主の命。理由など不要。ただ、その命を果たすのみである。」
仮面の下、くぐもった声から聞こえたのは必要な情報ではなかった。
最早、聞いたのが間違いだ。
頭を切り替え、裂け目を起点に身体を2つに分ける。
刹那、剣を持っていない方の手を展開し、超吸引力で分かれたばかりのアニマッルを吸い込んだ。
争いが消え、静寂が木霊する。
任務を終えた防衛兵器は速やかに帰還した。
そして、その日の朝、村中は阿鼻叫喚の嵐に見舞われるのだった。




