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今日から始まるパンデミック  作者: クポ
二章 黒いゾンビと忘れられない過去
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五十一話


 四月十日(晴れ) 今日は中学校の入学式だった。小学校からの仲良しの紗希とも同じクラスになれて嬉しい!部活に勉強に、新しい事を沢山楽しんで友達もいっぱい作りたいな!



 四月十五日(曇り) 陸上部に入部した。先輩達はすっごく足が速くって見ているだけでカッコいい!私もあんな風に速く走れるようになれるかな?ううん、きっとなれる!頑張ろう!



 五月一日(晴れ) GW三日目、紗希と一緒にショッピングモールへお買い物、高校生かな?男の人に声掛けられちゃった!あれがナンパって言うんだよね?えへへ……可愛いねだって!何だか少し大人になったような気がして少しだけ嬉しい。って言っても勿論断ったけどね。紗希が凄く怖い顔で不順異性交遊はダメなのです!って。

 うん、そうだよね。私もそう思う。



 八月十九日(雨) 陸上の全国大会!生憎の雨模様だったけど、そんな中でも部長が七位入賞を果たした!凄い!格好良い!私も来年の全国大会を目標に頑張ろう!



 十月三十一日(晴れ) どうしたら良いんだろう……。今日は紗希の誕生日だというのに可愛そうになる程に落ち込んでいる。

 昨日からお兄さんが行方不明になったって……。だけど紗希と付き合いがそれなりに長いのに、紗希にお兄さんが居たかどうかなんて私には分からない……。

 紗希の家族も覚えてないらしい、だけど紗希は確かにいるんだって目を泣き腫らしていた。

 もしも本当に紗希だけしか覚えていないとしたら、生きていた事を、存在していた事を忘れられちゃうだなんて……、何だかとても寂しいし怖いなって思った。

 だからもしそうなのだとしたら、紗希が覚えている事だけが、忘れれてしまったお兄さんにとって本当に救いな気がした。



 十一月十三日(晴れ) あれから毎日紗希が泣いてる。目の下に出来た隈、ご飯もあんまり食べれていないみたいだし心配だ。帰って来ない事を自分だけしか分からないのに、そんな人を待ち続けるなんてどんな気持ちなんだろう……心が痛いよ。私に何かしてあげられる事って無いのかな……。



 十一月二十日(雨) 今日は初めて料理を作った。明日遊びに来る紗希に食べてもらう為に練習だ。料亭の家の子に手作りの料理を出すなんて凄くドキドキするけど喜んでくれるかな?少しでも笑ってくれるかな?少しでも元気になってくれたら、嬉しいな。



 十一月二十一日(晴れ) 今日紗希が遊びに来てくれた。私は頑張って料理を作ったけど少しだけ失敗しちゃった……。想像よりもしょっぱくなってしまった料理を、それでも紗希は美味しいですって全部食べてくれた。

 お母さんが泊まっても良いよって言ってくれて、紗希と初めてのお泊り会!折角布団を二つ敷いてくれたのに結局一つの布団で抱き合って寝ちゃうんだもん。

 でも、うん、少しだけ紗希が笑ってくれたから嬉しかった。



 十二月二十四日(雪) 朝カーテンを開けたら雪が降っていた。ホワイトクリスマス!

 恋人が居たら絶対ロマンティックで盛り上がるんだろうな。なんて私にはまだまだ早いけどね。

 そうそう今年は紗希の家でクリスマス会だった!プレゼント交換もしたし、紗希のお父さんが作ってくれたケーキ美味しかったなぁ……。それに最近紗希が少しずつ元気を取り戻してくれているのが何より嬉しい。



 一月一日(晴れ) 明けましておめでとう!今年も良い一年になりますようにって初詣。紗希の振袖姿、可愛かったなぁ……。お人形さんみたいだった。

 私も何時かは振袖、着てみたいな。

 全然想像出来ないけど……似合うかな?



 三月十九日(曇り) お母さんが紹介したいっていう人と初めて会った。とっても優しそうな男の人だった。

 お父さんが亡くなってからもう五年も経つもんね?私は大丈夫だよ。だから幸せになってね、お母さん。



 六月六日(晴れ) 橘の苗字が今日から佐々木に変わった。前の苗字も好きだったけど大丈夫、仲良し家族になれたら良いね!



 八月二十日(晴れ) ついに念願の全国大会!必死に走ったけど惜しくも入賞ならず……頑張ったんだけどな、悔しいよ!来年こそは、だよ!



 十月八日(雨) どうしよう何だか最近あの人の視線が嫌だ……。お母さんが買い物に行っている時に冗談めいて脚を触って来たり、ああいうのって本当に気持ち悪い……。

 でもお母さんには言えない……。せめて二人きりにならないように気をつけなきゃ。



 十二月七日(晴れ) 脱衣所で着替えようとしていたらあの人が入ってきた。すぐに叫んでお母さんが来てくれたけど、知らなかった何て絶対嘘!どうしたら良いんだろう……。怖い……。



 一月三十日(雪) あの人との事、本格的に怖くなって紗希に相談した。紗希は親身になって相談に乗ってくれて、ちゃんと話した方が良いって、それで一緒にお母さんにも話してくれた。

 その晩あの人とお母さんが大喧嘩しちゃった……。そのせいであの人は夜中に怒って家を出て行った。お母さんは気がつかなくてゴメンねって抱きしめてくれて、その日は久しぶりにお母さんに抱きしめられて寝た。

 こんなに肩、細かったんだね……一人で私を育ててくれたんだもんね、何時も無理させてごめんね。折角好きな人出来たのに私のせいでゴメンね、お母さん。



 一月三十一日(雨) 怖い……怖い怖い怖い。もう嫌だ……。今日だけはどうしても外せない仕事があると仕事へと出て行ったお母さん、今晩には祖父の家に行くって言ってくれたけど。

 外は激しい雨が降っていた。お昼ご飯を食べ終えてすぐ玄関のドアが開き、そしてあの男が顔を出した。私を見た瞬間のあのイヤらしい顔を生涯忘れる事は無いだろう。私は髪の毛を掴まれ、そして押し倒された。

 ……怖かった。涙が溢れた。

 男の人があんなに力が強くて、そしてあんなに乱暴だなんて思っても無かった。私が泣き叫んだら殴られた。何度も何度も殴られて、口の中が血の味でいっぱいになった。

 私はここで犯されるんだって思ったし、実際に心配して紗希が来てくれなかったらそうなってたと思う。


「お巡りさんこっちです!」


 そう声がしてドアが開いた瞬間、ズボンを半分降ろしたままのあの男は窓から飛び出して行ったのだ。

 紗希の顔を見た瞬間、こんなに涙って溢れるんだって位に泣いてしまった。そのまま紗希に手を引かれて外へ飛び出すと激しい雨が全身を濡らした。

 この気持ち、この恐怖、全部雨が流してくれたら良いのにな……。

 気がついたら私は紗希の家に居て、そして次の日そのまま祖父の家へと行く事になった。紗希と離れ離れになるのが本当に辛かった。



 二月二日(曇り) 髪の毛をばっさり切った。女の子らしさなんてもういらない。折角綺麗な髪なのに良いのかい?そうボクを心配して祖母が何度も聞いてくれたけど、もう心は決まっている。でもありがとねお婆ちゃん。



 二月三十日(晴れ) 今日は紗希が遊びに来てくれた!電車で一時間以上も掛かるのに本当に嬉しい!今日会いに来てくれただけでも嬉しいのに、紗希はボクに月に一度会いに来てくれるって言うんだ。本当はボクも行きたいんだけど……ゴメンね、怖がりで。



 五月十三日(曇り) 憂鬱だよ……告白されても今はただただ迷惑だし、男の子と二人っきりでいるだけでも怖い、だから今年になって三人から告白されたけど全部丁重にお断りしている。出来ればボクをそういう目で見ないでくれたら嬉しいのにな……。



 八月十八日(晴れ) 全国二位!惜しくも後一歩で優勝は逃したけど、それでも納得の走りは出来たよ!これで紗希と約束していた学校にも推薦が貰えると思うとそれだけで嬉しい。これ以上お母さんにも祖父母にも負担は掛けられないからね。



 二月一日(雪) やった!無事推薦入試に合格したよ。奨学生としてだからお金の心配もしなくていいし、これで紗希とまた同じ学校に通えるよ!お母さんより先に紗希に電話したら喜んでくれた。全寮制の学校だけど女子と男子は完全に別みたいだし、女子寮はセキュリティーも万全だって言ってるし、うん、新しい生活楽しみだな。





 気がついたら紗希の香りがして、ふわりと優しく抱きしめられていた。あれ……私泣いていたんだ……。

 ゴシゴシと慌てて手の甲で涙を拭う。


「大丈夫……。大丈夫です。ごめんね悠璃ちゃん、最近が楽しくて、そういう事が書いてある可能性を考慮してなかったです……」


 しかし離れかけた身体をしっかりと抱きしめられ、耳元で聞こえる紗希の優しい声が心地良い。

 そんな温かで柔らかい時間が流れ、何時の間にか涙も乾いて気持ちも落ち着いていた。


「ううん、大丈夫だよ。もう大丈夫なつもりだったんだ……。何時もありがとね紗希。―――あ……、だけど……ゴメン……鼻ついちゃったかも知れない」


 照れ隠しに両手を合わせて謝る。


「ギルティー!許さないです!例え親友のものだとしても乙女的に鼻を付けたまま街を歩ける訳が無いです!」


 紗希はそういうと両手をグネグネと怪しく動かし迫って来る。その目は笑っているのに、悪戯をする時の紗希は結構真剣だから困る。


「あはは……紗希、ごめんちょっと待った、ボクが悪かったから許して……。お願い!ちょ、んあっ、そこダメだって」


「んふふ、悠璃ちゃんの弱い所はお見通しなのですよ。イヤだイヤだと言ったって体は正直なのですよ」


「ふぁ……ちょっと紗希、ごめんって、本当に、んっ……ダメだって」


 暫く紗希のお仕置きと言う名のじゃれ合いは漸く続き、紗希が満足そうに「んふー」と抱き着いてくるまでそのじゃれ合いは終わってくれなかった。


「ああ、そうなのです!明後日、学校の屋上で天文学部の皆と天体観測をするのですけど、悠璃ちゃんも一緒に行きませんか?女子部員は皆優しくて良い人達ばっかりです。男子はバカも若干二名混じってますが、ちゃんと近寄らない様にきつく言っておくので!だから、一緒に流れ星を見ませんか?きっと気晴らしになると思うので是非にです」

 

 何だか変な汗を掻いてグッタリするボクを尻目に、やけに艶々とした笑顔を浮かべた紗希は、そう言えばという感じで提案をしてくる。

 そしてその観測会が行われる予定だった日から、ボク達は当たり前を無くしていくのだった。


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