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今日から始まるパンデミック  作者: クポ
二章 黒いゾンビと忘れられない過去
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四十七話


「ったく!流石に湧きすぎだろうがよっ!チッ!あきとんそっち行ってるからな!」


 入口側から飛び出してきたゾンビに真っ先に対応してくれる睦月が声を上げる。バリケードで侵入を拒んでいた分だけ、それ以外の場所でのゾンビの数が結構エグい事になっていた。

 目の前のゾンビを殴り飛ばしながら睦月の声に視線を忙しなく動かす。

 多いって!内心でそうボヤキながらも、それでも忠告のお陰で不意打ちを喰らう事無く、新たに出てきた三体のゾンビを確認する事が出来た。


「っ!……このっ!」


 三体の内の一体、先頭にいたゾンビをやり過ごすべくしゃがみ込んで足払いを仕掛ける。盛大にすっ転ぶゾンビを横目にすぐ後ろから迫っていたゾンビへと意識を向ける。

 真っすぐに突き出された腕を身体を屈ませる事でやり過ごせば、もの凄い勢いで目の前を半分溶けて崩れかけた腕が通り過ぎていき、そこで飛び上がる様に反転すれば目の前には隙だらけのゾンビの後頭部が曝されていて、俺は全力でバットを振り抜きその頭部を叩き潰す。

 

 もう一体のゾンビは悠璃が視聴覚室から持ってきたゴルフクラブで脚を叩いて転ばせていた。

 更に追加で横の教室から湧いてきたゾンビをバク転で躱わして足蹴にし、転んだ二体のゾンビに連続してクラブを叩きつける。そんな何時も通りにキレのある悠璃の動きに心配無かった様だと胸を撫でおろす。

 因みに最初に俺が転ばせて放置していたゾンビは、紗希が色々入って重くなったカバンを叩きつけて止めを刺してくれていた。


「もぉ……!カバンがねっとりしているのです……」


「あははっ、どんまいどんまい!」


 こんな状況でも頼れる仲間達が居るのは心強かった。愛美さん達も何とか遅れずに付いては来てくれているけど、経験の差なのか流石に他の三人程の余裕は無いようだった。

 初めてゾンビと相対した時の事を考えると、本当に慣れなんだろうけど、まぁ慣れ……たくは無いよな。


 振り返る様に急に方向転換してきたゾンビを転ばせながらふと思う。

 何時の間にか他人が戦う事に慣れてないって心配出来る程、この状況に慣れてしまっていたのかと。

 こうして変わってしまった世界に慣らされていき、ゾンビがいる事が、死が常に隣り合わせにある事が当たり前になっていくのだろうかと、そう考えると少しだけ怖くなった。



 そうして数えるのもバカらしくなる程のゾンビを倒しながら、その襲撃の全てを何とかやり過ごしてきた俺達の目にもやっと東階段が見えた時だった。

 何度も背後を振り返って確認してくれていた紗希が警戒を促した。


「警戒を!後ろの人数が増えてるのです。付かず離れずで機会を伺ってたのも、もしかしたら合流してからで十分だと考えてたのかも知れないです。何だか嫌な感じです」


 紗希の声に後ろを振り返ると、確かに先程までよりも多くなった男達の姿が見えた。

 

 因みに紗希の肩には今は弓が入ったケースが下げられいる。先程まではカノン先輩が持ってくれていたのだけど、念の為にと鞄と弓を交代してもらった。

 とは言え流石に走りながらだと矢を取り出す事も無理そうなので使う場面はもう少し無いとは思うし、そんな機会は無いに越したことはない。

 それでも最悪は想定しなければと気を引き締める。


 一番最後に視聴覚室を後にした俺だけが目にした光景が蘇る。

 男達に捕まった生島さんは悲痛な叫びを上げながら無理やり肌をさらけ出されていた。

 そんな生島さん達三人を見捨ててきたのは、皆に同じような思いをさせたくないからだ。







「悠璃!紗希!こっちは何とかするから皆を助けてあげて!」


「「了解!」」


 後は階段を上るだけだという所で現れた八体、俺達がゾンビに苦戦しているとみるや一気に攻勢を強めてきた袴田達、後ろでは愛美さん達が必死に戦っているけど、そもそもが非力な上に半分が武器すら持っていない状況、牽制以上の事が出来ていない。

 秒刻みに悪くなっていく状況、幾度となく上がる悲鳴に堪らず二人をサポートに回す。本当ならゾンビを一気に叩いて進みたかったのだけど、流石にそうも言ってられず、全体の状況を少しでもマシなものにしようと誰もが必死だった。


 二人が下がった事で睦月と二人囲まれる機会がグンと高くなる。

 今は何とか耐えてはいるものの一秒毎に消えていく余裕、今もガチンという音と共に崩れかけた顔が迫り、上半身を限界まで反らした顔の前を通り過ぎていく。

 体勢を整える間すら貰えず間髪置かずに後続の腕がブンと二方向から伸びて来て、それを後ろに転がる事で何とかやり過ごす。

 余裕なくそのまま二転三転と転がり必死に距離を取り、急いで立ち上がって元居た場所を見ると、そこにはゾンビが体ごと投げ出すように転がっていて、距離を取らずに立ち上がっていたらヤバかったと肝を冷やす。


 しかし危険だったのと同時に転がってきたチャンス、この機を逃してたまるかと死に物狂いでバットを叩き付ける。

 ガィィンと地面を強かに叩く音が響き渡り、しかし手応えが浅いかと目の前のゾンビへと視線を向ける。幸いにも叩いた時には手応えに反してどうにか動きを止めてくれたようだった。


「あきとん後ろに飛べ!」


 一体倒した事にホッとした瞬間だった。少し離れた場所から睦月の叫び声に慌てて後ろへと飛び退る。

 同時に先程まで俺が居た場所目掛けて飛び掛かるゾンビの姿が見える。


「あっぶなっ!」


 そう悲鳴をあげた次の瞬間、そこの空間目掛けて思いっきり木刀を振り切る睦月の姿が見えた。


「うっし!クリティカルヒット!」

 

 すぐにその場を離脱した睦月は歓声を上げながら次の一体へと木刀を振るいに駆け出していた。

 睦月がそのまま同時に二体の頭部を吹き飛ばす事に成功し、更にそこから一気にもう一体を倒してくれた。おかげで残るゾンビは四体となり精神的にもいくらかの余裕が出来る。

 この調子ならいける!残るゾンビにバットを振りながら、いくらか出来た余裕を使って愛美さん達の方にも視線を移すと想像していなかった光景に戸惑う。

 悠璃と紗希、二人が向かえばバランスがある程度取れるものだと思っていたのだけど、俺の計算には一つの大きな計算違いが残されていたのだった。

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