二十九話 エピローグ
本日二話投稿の二話目です。
「おーい、皆こっちこっちぃ!こっちだってぇ」
「あ……愛美さん、愛美さんなのです!」
二階の一箇所を指差し呆けた表情の紗希、指差した先には最早懐かしい愛美さんや部の見知った顔が在った。
「この真下に梯子が掛かってるから急いでそこから上ってきてぇ」
愛美さんがブンブンと手を振る真下には確かに梯子が架かっていて、そこから二階へと上っていけそうだった。
「あそこ!俺が引き付けるから皆は先に上って!」
「オーケー!ロケット花火も出し惜しみ無しで使って良いと思うぞ!そんじゃ悪いけど紗希、悠璃、俺の順番で上らせて貰うぜ?勿論ギリギリまで俺も粘るけど、あきとんも無理すんなよ」
「いつも二人に危ない所をやらせてゴメンね」
「うー……すみませんがよろしくです」
全員で急いで梯子の下まで走り寄り、窓から身を乗り出して急いでと手を振る愛美さんを見上げる。
愛美さんに呼ばれるまま紗希は一度梯子に手をかけ、しかし何故か紗希がお尻を押さえたまま顔を顰めて唸っている。
作戦的に何か問題でもあるのだろうか?もしも心配してくれているのなら早く上がってくれた方が個人的には助かるんだけど。
「あの、秋斗先輩……上、見ないで下さいね?もし見たら一生変態って言い続けるのです」
「ああ、紗希はスカートだもんな……って言うかどうして俺が覗くのを前提に話されているんだよ?うーん、じゃぁ紗希が最後に登る?」
「う・え、見ないでくれたらそれで良いのです」
「あきとん、紗希のお子ちゃまパンツなんて見ても仕方無いだろうが……」
「ギルティ!誰がお子ちゃまパンツなのです!先輩喧嘩売ってるんですね……見ますか?ええ良いですとも見せてやるです!」
「もぉ、ダメだよ紗希、落ち着いて……ね?この会話を続けた先には後悔しかないから、絶対に良い事なんて一つも無いよ」
何故こうなる。女子高生の下着を見たいかと言われれば思春期男子が見たくない訳が無いんだけど、正直この状況でそんな事を考えたりする訳ないだろ。
勿論今みたいに一度意識させられてしまえばそれをしない為には鋼鉄の意志が必要になるのだけど。
余りに騒々しい仲間達に若干の頭痛を感じながら、兎に角皆に早く登る様に促す。
悠璃が先に上るからとバットを返してくれたお陰でロケット花火に頼らなくても時間ならもう少しだけなら稼げそうだ。
間断なくゾンビは迫ってくるけど、それを再び我が手に戻ってきたバットで叩きながら、睦月と共に二人が上り終わったと言う合図があるのを待った。
って言うか流石にここまで言われたら絶対に、間違ったって上なんて見れない。見た事がばれた瞬間死ぬまで変態の謗りを受け続つける事は確定事項なんだから。
そうして紗希が上り終えるのを待つ間、変な緊張感でピリピリした空気だったりしたけど、冷静になって反省したのか「すみません、おまたせです」と目よりも上だけを覗かせて申し訳なさそうに声をかけてくる。
そんな紗希の様子に苦笑いしながら俺達も急いで二階へと上ってしまう。
予定通りに一番最後に上り終えて周囲を見回す。ピンチを切り抜けた先にはチャンス有りなんて言うけど、絶体絶命を切り抜けた先には懐かしさすら感じさせる部活の皆の笑顔が待っていたのだった。
「皆無事で良かったぁ!ほら皆話したい事はあるだろうけど今は移動を優先してねぇ?えっとねぇ、私達は今は他の人達と一緒に視聴覚室に避難しているからまずは皆でそこにいこぉ?そこなら少しくらい話したって声が漏れる事も無いと思うからねぇ」
窮地を脱した先で奇跡的に合流する事が出来た天文学部の仲間達、お互いの無事を喜びあい、一気に話しに花が咲きそうな皆を愛美さんの少し舌ったらずな声が留まらせる。
そうして促されるがままに俺達は足早に移動を開始した。
勿論話したい事は色々あったけど、安全な場所で話し合った方が良いと言うのはその通りで、先を行く愛美さんと睦月の背中に引っ張られるように全員が後を追いかけて行く。
最後尾からそれを追いかける俺は、バットを握り締めながら警戒していたんだけど、実際に歩いてみるとしっかりと対策されている事を知る。
視聴覚室に避難した人達がかなりしっかりと倒したらしく、視聴覚室までの道のりで遭遇したゾンビは僅かに一体だけだった。
ゾンビが現れてから二日経って漸く、俺達は心配の一つだった部の仲間達と再会を喜び合う事が出来たのだった。
これにて一章終了となります。
もしも面白かった。続きが読みたいと思っていただけたらブックマーク、ポイント評価してもらえると嬉しいです。




