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魔法陣の向こう〜呪いの魔女グレイシアの物語〜  作者: サンガツワサコ


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便利な魔法道具は簡単に手放してはもらえない。

想像はしていたが、グレイシアは

王族たちに引き止められる。とくに、5年後には譲位を決めているセヴァリウス王は、譲位の際の魔法陣の書き換えをグレイシアに依頼する。

教え子の戴冠だと言われれば、強く拒否することもできないが、動くと決めた以上、5年ここに止まる気はない。

「では、3年だ。グレイシア。私が即位したのと同じ28歳に、シュドリウスに譲位する」


3年。グレイシアは自分の歳を思う。3年後は65歳か。まぁ、キリの良い数字のようにも思えてきた。とはいえ、そんなものは今は数字上のものでしかない。彼女はここを出たなら、年相応の見た目になるように目眩しの魔法を自らにかけて、静かに隠居するつもりでいる。65歳の老女が住むに相応しい場所を探そう。それに、3年後であれば、まだ同世代が生きているだろう。これがさらに10年後となると、生きている同世代がいたとしても、寝台の上から動けないレベルとなる。行くなと言われて振り切るには心が痛むに違いない。最も、彼女にそこまでの執着を持つのは寧ろもう少し若い世代のものたちであるが。


「良いでしょう。それまでに私の研究は弟子たちに引き継げるよう、手配しておきます」

猶予がなければ、研究は全て捨て置いてゆくつもりで居た。

彼女の弟子たちであれば、数年かければ彼女の研究を容易に引き継ぐことができるだろう。今現在も弟子として残っているランバートが居れば途中で放り出していた研究のその先も、グレイシアと同じように結果を導き出してくれるだろう。

創世と魔法陣の歴史と劣化について。

彼女の研究は、ヴィンセントのそれを引き継いでいる。偉大なる魔法使いは、新たなる魔法陣を開発する前から、そちらの研究に力を入れていた。魔法陣の更新をおこなうようになったのは、ヴィンセントの師事した先代の頃からだという。おそらく、今の手続きはヴィンセントが確立させたものなのだろう。他の魔術師たちが挙って新たな魔法、魔法薬、開発や魔石も含めた改造に時間を費やす中で、彼女は寧ろ過去を紐解いてゆく。ヴィンセントも同じく、過去を紐解き、そしてなおかつあの偉大な魔法陣を開発したのだ。彼女の弟子たちは必ずしも同じ研究をしているわけではないし、研究に興味を持たずに職業として魔術師を名乗るものたちも居る。だが魔力を操る力を持つ者たちの中でも、魔術師になったものたちは大概が探究心に優れていて、子どもの頃から魔力の上手い使い方を模索した挙句に今の職についていると言ってよい。魔力を持たない研究者もいるが、魔力を持った研究者の方が多いのがこの国の特性にある。グレイシアのもとに師事しにきた弟子たちは、彼女と、その師匠であるヴィンセントの研究に興味を持った者たちである。彼らもグレイシアの元で学んだことをもとに、独自の研究をしているが、彼らの研究もまたグレイシアの研究と無関係ということはないのだ。


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