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塔の先端に灯る光は、変わりなく輝いている。
ランバートが利用している研究室は魔術師の塔のだいぶ高い位置に存在していて、内側にガラスの入った窓からもその光が差して見える。その窓から身を乗り出して下をのぞけば、広い中庭に設けられた騎士団や魔法騎士、兵士たちの訓練場や、謁見広場、王宮の建物の形、さらにはその王宮の中にある整えられた広い中庭までもが一望出来る。上から見ればよく分かるそれらは、王国にはじめの魔法陣の配列に整えられていて、その形そのものも魔法陣の一部を担っている。
グレイシアが王宮をさって、2年が経った。
新王には第一子が生まれ、王弟殿下はようやく婚姻を決意されたようだ。お相手がメリッサの女弟子だったことは意外に思ったが、王位継承者の誕生を受けて伯爵家両親の了承を得られたのであろう。
ランバートの実家、イーブン子爵家は弟のコルジオが爵位を継ぎ、父母とも王宮魔術師を引退している。母には爵位を継がなくとも良いから、婚姻せよと何人かの令嬢を紹介されるが、30を越えたランバートには若すぎる、と言って断った。
ランバートは、卓の上から黒いグローブを手に取り、そこに口づけた。
そこに居ない。けれど、ここに居なければならない。
ランバートは研究室を出て、王宮の地下へ向かった。
そこに残るグレイシアの魔力に触れるために。
地下の魔法陣を確認し微調整をしていると、そこに姉弟子が姿を現した。
「あらまぁ。痩せたわね、ランバート」
魔法騎士に嫁いだ筈のナリーニが、王宮魔術師のローブを纏っている。
「復帰されたのですか」
淡々と、応じるランバートを、ナリーニはイタズラっぽい表情で見上げる。
「君のためよ、ランバート君」
「は?」
間抜けな声を上げるランバートに、ナリーニは声をかけてあげて笑った。
「冗談よ。メリッサ様から依頼されたの。伝言よ」
「貴方、グレイシア様のもとへ行く気があるでしょう?」
ナリーニは自分を指さした。
「穴埋め要員よ」
そしてひらひらと指先を揺らした。
「後のことは任せて」
ランバートは全身の力が抜けて、思わずその場にしゃがみ込んだ。
「ふふふ。グレイシア様はようやく、ご自身に付与された魔法陣の研究に着手されるようですよ」
その情報が、何故自分に直接届かないのか。
「女性同士の気安さと言うものかしらね」
我が子を見るような視線に、居た堪れなくなる。
「あの目眩し、貴方の魔法陣でしょう?」
含みのあるナリーニの笑み。
ヴィンセント様には及ばなくとも、素晴らしい出来だと思うわよ。
ランバートは今度こそ、顔を上げることができなくなってしまった。




