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「ヨシュアの妻、モリーでございます」
小柄で上品な婦人は、メリッサより一回りは年下のようだ。
「シア夫人と、リサ夫人。ポリアンナ様より承っております」
そう言って、にっこりと微笑んで見せた。
貴族の夫人のお手本ですよ、師匠!是非とも見習っていただきたい。
「王家には連絡させません。ご安心下さいませ」
グレイシアの隠居場所は伏せられている。王家にも知らせていないし、貴族社会ではグレイシアが爵位を返上したことすら、知られていない。
元々社交と無縁だった上に姿を見せないのが当たり前だったために、居なくなってもすぐには気がつかないだろう。
「私信で、内密にとのお話でしたので。却って驚かせてしまって申し訳ありません」
夫人が謝罪を口にすると、着替えを終えて応接間に入室してきたヨシュアが、複雑な表情を見せる。
「…驚いたのは私の方だ。謝罪は私によこすべきではないか?」
そしてグレイシアをまっすぐに見据える。
「シア殿、とここでは呼ぶべきなのだろうか」
ヨシュアは目を伏せる。
「かつては私の身勝手な言動で貴女を振り回すことになった。今更ではあるが、詫びを申し上げる」
頭を下げる元王族に、老女の姿をしたグレイシアは微笑む。
「貴方の成長に必要な時だったのでしょう。今がお幸せなら、それで良いのです」
王宮にいる時と同じトーンの口調が、メリッサの耳に心地よく響いた。
「ねぇ、ヨシュア様。私はおばあちゃんに見えるかしら?」
ヨシュアは、一瞬子どものような表情を見せ、微笑む。
「ええ、見えますよ。術式が見えません。精巧な作りですが、この技術は漏洩されないようにお願いします」




