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「領主さま?何かございましたか?」
辻馬車の主人の声に、ヨシュアは我に返ったようだ。外に向かって幾つか指示を飛ばすと、辻馬車の主人に、馬車の出発を促す。
そして、そのままグレイシアたちの向かいの席に座った。
突然現れた領主を、辻馬車の乗客たちは少し距離をとって物珍しそうに眺めている。
「…何故ここに居るのです?」
メリッサを通り越して話しかけてくる。目眩しは見かけを変えても魔力までは隠しきれない。
老女の姿になっても、グレイシアを知っていれば、グレイシアだとわかるものだ。
「え?おばあちゃんに見えない?」
メリッサは脱力する。
ヨシュアを見れば、彼も複雑な表情だ。
「大丈夫よ、シアは立派なおばあちゃんですよ」
メリッサは未亡人の使用人になりきることにした。
「ほら、領主さまにご挨拶しましょう?」
「まぁ!領主さま?」
グレイシアはメリッサの小芝居に乗ってくれるようだ。
「シアと申します。おばあちゃんです」
ダメだった…
次の停留所で降りるように促され、領主の馬車で連行された。
「なんで、おばあちゃんです、が自己紹介なんですか!」
メリッサがブチ切れてる。
グレイシアはしっかり空気を読んだつもりでいたのに。




