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魔法陣の向こう〜呪いの魔女グレイシアの物語〜  作者: サンガツワサコ


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メリッサは呆れ果てている。

目眩しは、老婆ではなく、幼女にすべきだったのではなかろうか。


ポリアンナが用意した屋敷に移った二人は、当初「未亡人の大奥さまと使用人」という役回りで生活していた。

一人で出て行く気満々だったグレイシアを、

「生活力を付けるまではダメです!」

と、メリッサとポリアンナが許さなかった。


それにしても、グレイシアがポンコツすぎる。


まさかと思っていたが、本当に、買い物の仕方も、物の値段や価値もわかっていない。


先ずは魔法以外の知識を頭に入れて貰おうと本を与えれば、寝食を忘れる勢いで読書に没頭する。


貴族女性の嗜みだからと刺繍をやらせてみると、仕上げるまで止めない上に、意匠が浮かばないと言って、そこに魔法陣を縫い付けてしまったために、風をまとう不思議なハンカチが出来上がってしまった。


大奥さまというからには、それなりに貴族らしい振る舞いを求められるのであるが、社交界に疎すぎて人の話題にも応じられないし、テーブルマナーもおかしい。


昔はこの順番だった、というカトラリーの並びも皿の配置もはちゃめちゃだ。


「ねぇ、隠居って、ひとりで何処かに住むことじゃないの?」


「それって、不自由になって場所が変わっただけで他はなんも変わってないと思いません?」


唯一の救いは素直に教えに応じること。


かろうじて夜に眠り昼に起きて活動してくれているものの、適度、という言葉を教えるのが1番大変だ。


お金の使い方を覚えたら、実際に買い物をしたいというので、辻馬車で出かけることにした。


目をキラキラさせて辻馬車に乗る老婆…

ああもうこれは、耄碌した未亡人という事にした方が良いかもしれない…


ウンザリしながらグレイシアの相手をして居た時、とんでもない魔力が馬車に乗り込んできた。


メリッサは反射的に魔法陣を強化する。

そして素早くグレイシアを隠すように覆い被さった。


「…王子?」

グレイシアの呟きに、振りかえると、


そこに居たのは


馬車に乗り込んだ姿勢のまま固まったブリア公爵ヨシュアだった。


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