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新王の戴冠と同時に、ガルディア公爵アルドレットは将軍職を退き、家督を娘婿のヒューイへ譲る。
ガルディア公爵家は、代替わりとともにフェイ辺境伯家を拝命し、元フェンスベリアの領地の一部を治める。
ナタリーは宰相職補佐としてガルディア公爵の家名を頂き、王都に残ることになった。
まだ若く婚姻したばかりの女性王族への配慮。
野心家ではないと評価されているロットバッハ侯ではあるが、果たして若き女公爵をどう見るかはわからない。
夫となったルーンベントは若干の魔力持ちだった。
魔力を感知する習慣がなかった夫は、ナタリーの魔力に触れてひどく感動していた。
年下の夫にどう接すれば良いのか、ナタリーにはわからない。けれど、ルーンベントからの隠しもしない好意に別の戸惑いを感じている。
腹の中に感じる自分のものではない魔力は、女児のものか、男児のものか。
子を抱えながら領地を治めることを思えば、王都に残されたのは兄なりの配慮だったのだろう。
「ナタリー!」
執務を終えて、共に私室に入ると、ルーンベントに抱きかかえられた。
出会った頃は華奢な少年だった婚約者はいま、体つきのしっかりとした青年となり、ナタリーの夫であり、腹に宿った子の父である。
敗戦国と占領国の王族同士の婚姻という、政略結婚のはず。
結婚をして一年たった今も、ルーンベントはナタリーを抱きしめる。顔じゅうにキスの雨を降らせ、甘い魔力の交換を求める。
「子に障ります」
「大丈夫、そっとするから」
これが演技であったとするなら、末恐ろしい。
ルーンベントはかつての敵国であるディバレイド王国の中枢に来て、「王女ナタリーの崇拝者」として認知されている。
国王や王弟のような圧倒的な魔力はなくとも、真っ直ぐに伸びた気持ちの良い青年として、違和感なく王国の社交に居場所を作った。
意地の悪い王国貴族たちがどんなに誘いをかけても、彼の目はナタリーを見つけ続け、「可愛げのない行き遅れの王女」を「夫に溺愛されている女公爵」にした。
「大好きだよ、僕の奥さん」
ナタリーは答えに困り、彼のこめかみにキスを返した。
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