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師匠はさ、自由になったら何をしたいの?
メリッサの言葉が魔法の手紙で送られてきた。
グレイシアは寝台から起き上がり、手のひらを見つめる。
魔法陣を描く筆と杖くらいしか持つ事がなかった白く細い手。
「ああ、爪を切らなくてはね」
「…ご用意いたします」
独白に、侍女が答える。グレイシアは侍女の背を見送った。
離宮の侍女は王家に仕えている。
清潔な寝室、整えられた自身の身の回り、用意される食事も水も。
自由と引き換えに置いていくものだ。
グレイシアは1人で着替えることができる。以前、伯爵家の使用人がいなくなったときに、一人で脱ぎ着できる形の服をポリアンナが用意してくれたからだ。髪を片側に纏めて編む事だって出来る。
爪は、自分で切った事はない。
平民はどうしているのだろうか。家族が互いの爪を切るのか。
単身者は?知人に依頼するのか?
それとも爪を切ってくれる店があるのか。
侍女が小さなハサミでグレイシアの手の爪を切り、ヤスリで整えてゆく。10本全て終えると、次はグレイシアの足に取り掛かる。
以前は入浴時に湯船に浸かっている間に整えてくれていたことに思い至る。
最近、入浴を一人で済ます習慣を付けたので、爪を切ることがなかったのだ。
何をしたいより前に、1人で生きていけるようにしないといけないわね。
メリッサは爪をどうやって切ってる?
そう返した日。
メリッサがやってきた。




