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転生したら白ねこでした。お菓子魔法で異世界の心を癒やします。――もふもふカフェから始まる甘くてやさしい異世界生活――  作者: 明石竜


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第十章 新たな旅立ち

王国魔法顧問の称号を得て、もふもふカフェはさらに発展した。

店は拡張され、弟子も十人に増えた。

お菓子魔法の学校も設立され、多くの若者が学んでいる。

「師匠、これでいいですか?」

リリアが新作のお菓子を持ってくる。

「完璧よ。あなたももう立派なお菓子職人ね」

リリアは、この一年で驚くほど成長した。今では、私がいなくても店を回せるほどだ。

グレンも、ノエルも、それぞれ得意分野を持ち、独立できるレベルになった。

「そろそろ、次の段階に進む時期かもしれない」

 ある日、王女が訪ねてきた。

「ココ、お願いがあるの」

「何でしょうか?」

「他の国にも、お菓子を広めてほしいの。隣国のベルグランドは、今、飢饉で苦しんでいるわ。あなたのお菓子魔法なら、人々を救えるかもしれない」

新しい挑戦。心が躍る。

「行きます」

「ただし、ベルグランドは魔法を嫌う国よ。慎重に行動してね」

準備を整え、ベルグランドへの旅に出る。

今回は、弟子たちを店に残し、一人で行くことにした。

「師匠、気をつけてください」

「必ず、成功させてきます」




馬車で一週間。国境を越えると、風景が変わった。

荒れた土地。

痩せた作物。

疲れた表情の人々。


「ひどい状態……」


ベルグランドの首都、アルトハインは、石と鉄の匂いがする街だった。

白い石畳は磨かれているのに、どこか冷たく、行き交う人々の足取りも早い。

市場は賑わっていた。

だが、王都で見たものとは、少し違う。

並んでいるのは保存食や乾物、栄養価の高い粉末食品ばかりで、

甘い香りのする菓子は、ほとんど見当たらなかった。

「……甘いもの、少ないですね」

思わず、そう呟いていた。

この街では、食べ物は「生きるための道具」なのだと、すぐに分かった。

効率、保存性、実用性。

それらが何より重視されている。


お菓子は、嗜好品。なくても困らないもの。場合によっては、無駄なもの。

そんな空気が、街全体に染み込んでいるようだった。


その予感は、すぐに現実になった。


「……これは、何だ?」

露店の前で、低い声が響いた。

私が差し出したクッキーを見て、男は眉をひそめている。

「甘い……のか? 今はそんなものを食べている場合じゃない」

周囲の人々も、ちらりとこちらを見て、すぐに視線を逸らした。

誰も怒ってはいない。

けれど、誰も必要としていない。

その事実が、静かに突きつけられる。


胸が、きゅっと締めつけられた。

(今までと、同じじゃだめなんだ)

この街では、甘いものは救いにならない。

少なくとも、今のままでは。


甘味が、人を幸せにするとは限らない場所。

そんな街に、私は足を踏み入れてしまったのかもしれない。


ベルグランドでは、魔法は管理される力だった。

許可なき使用は危険とされ、特に獣人や魔族の力は、

戦争の記憶と結びついて、強く警戒されている。


だからこそ――

「魔法使いだ! 捕らえろ!」

私の獣耳を見て、人々が騒ぎ出した。

「待ってください! 私は……」

説明する間もなく、兵士に囲まれる。

「この国では、魔法は禁止されている。お前のような魔物は、処刑だ」

「魔物じゃありません!」

しかし、聞く耳を持たない。

牢獄に入れられる。

「どうしよう……」

絶望しかけたその時、牢の外から声がした。

「やあ、困っているようだね」

そこには、見知らぬ青年が立っていた。黒髪、鋭い目つき、軽薄そうな笑み。

「誰?」

「オレはレイ。しがない盗賊さ」

「盗賊……?」

「心配するな、悪い奴じゃない。ただ、この国が嫌いでね。ちょっとした反抗をしているだけさ」

レイは、牢の鍵を開けた。

「逃げるぞ」

「でも……」

「でももへったくれもない。ここにいたら、明日処刑されるぞ」

彼の言う通りだった。

レイと共に、城から脱出する。

「なぜ助けてくれたんですか?」

「さあね。気まぐれかな」

彼は笑う。

「でも、獣耳の可愛い女の子を見殺しにはできないだろ?」

からかうような口調だが、悪気はなさそうだ。

「それに、お前、何か面白そうなことを企んでいるだろ? オレは、そういうの好きなんだ」

レイの隠れ家に案内される。

そこは、街の外れにある廃墟だった。

「ここなら安全だ」

「ありがとうございます」

「で、何しに来たんだ、この国に」

事情を説明すると、レイは興味深そうに聞いていた。

「お菓子魔法ね。面白い。この国の連中は、魔法を悪だと決めつけているが、実際は違う」

「違う?」

「ああ。昔、魔法使いが王を裏切って、クーデターを起こしたんだ。それ以来、魔法は禁止されている。でも、それは一部の悪人のせいで、魔法自体が悪いわけじゃない」

「そうですよね」

「お前のお菓子が本当に人を救えるなら、それを証明すればいい。そうすれば、この国も変わるかもしれない」

レイの言葉に、勇気をもらった。

「手伝ってくれますか?」

「おう、任せろ。オレは、こういう無茶な計画、大好きなんだ」

こうして、私とレイの奇妙な共同作戦が始まった。


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