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39話 逆手

「ちょっと、この紐緩めてくれない?」


「はっ」


 マリーサはドレスの背中の編み上げられた紐を外させると、脱げそうになったドレスを手で押さえた。


「じゃあ私はこのままベッドで待つから、あなたも少し着崩しておいて?捕まってもすぐに出してあげるから、心配しなくていいわ」


「承知しました」


「あとどのくらいで起きるかしら?」


「…もうそろそろでしょう。少なめに盛りましたから」


「そう、手際の良いこと。じゃあ目が覚めるまで少し待ちましょうか」


 そう言って、マリーサはベッドに入ると、ソファで眠るアイリスが目覚めるのを待ちながら、顔を醜く歪めて眺めていた。




     ◆ ◆ ◆




「ぅ…ぅゔっ」


 頭がズキズキとして意識が戻ってきたアイリスは、目を少し開けた。

 先程のダンスホールではないということがわかり、マリーサを見失ったことに愕然とする。

 自分がまず何処にいるのか辺りを慌てて見渡した…その視線の先に!


「…⁉︎あ、あなた!…何してるの⁉︎」


 先程の男がベッドで誰かにのし掛かかっているのを見て、アイリスは目を丸くして驚いた。しかし、その声を上げた途端、


「キャーーーー」


 と突然大きな悲鳴が聞こえ、驚いたアイリスは、ベッドで男に押さえつけられている女性に駆け寄った。


「えっ⁉︎……マ、マリーサ様⁉︎ど、どうしてっ⁉︎」


 ベッドの上のマリーサは泣いている。

 襲われていると思ったアイリスは、急いで助けようとした…その時——


 守衛たちがマリーサの悲鳴を聞きつけ、バタバタと部屋に入ってきた。


 マリーサはまだ泣いている。

 状況が全く飲み込めないアイリスは、ただ呆然とその様子を見ているしかなかった。


 男は捕らえられ、どこかに連れて行かれた。

 マリーサが何か守衛に話している。

 話し終わると、アイリスに守衛が近づいてきた。


「失礼します」


 そう言って、守衛は素早く後ろ手にアイリスを縛り始めた。


「な、何してるの⁉︎やめて!離して‼︎」


 アイリスはもがきながら叫んだ。

 マリーサに助けを求めようとそちらを見ると、マリーサはアイリスを見てしたり顔をしている。


(…⁉︎…まさか……やられた⁉︎)


 そう思った時にはもう遅く、アイリスは守衛に連れて行かれてしまった…

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