操り人形
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―――仮面の女が奴隷蜘蛛によって支配したマキシに命じたことは、
八雲の暗殺指令だった―――
「九頭竜八雲は妻であるお前達には絶対の信頼と愛情を置いている。そんな男であれば、一人で此処を護り抜いたというお前が頼めば必ず夜の相手に選ぶだろう。お前はそれを利用して九頭竜八雲の息の根を止めるんだ。愛するお前の手で冥府に送られるなら、九頭竜八雲も本望というものだろう……」
それだけ命じると、仮面の女はマキシを外に再び戻すために繭の内部から外へと通じる道を切り開く。
「さあ、此処を通り抜けて外に戻りなさい。そして九頭竜八雲を待つのよ。死ぬために戻って来る九頭竜八雲を」
「……」
仮面の女の言葉が脳裏に響くマキシは、ゆっくりと開かれた外に通じる繭の通路に向かって歩み出す。
―――しかし、
「……どうした?」
仮面の女の前を通り過ぎようとした時、マキシがその場で立ち止まって女に振り返る。
立ち止まったマキシに仮面の女が冷静に問い掛けると、
「……貴女の……名前」
呆けたままの表情でフラフラと足元のおぼつかないマキシが女に問い掛けた。
奴隷蜘蛛によって主と思っている仮面の女の名をマキシが問い掛けてきたことに、一瞬怪訝な視線を送った女だったが、
「……スパイダー」
静かにその問いに女が答えると、マキシはそれに続けて呟いていく。
「……スパイダー……貴女の……目的は……九頭竜……八雲を……殺すこと……」
たどたどしい口調でそう確認するように告げたマキシに、スパイダーと名乗った女は先ほど命じたことを繰り返す。
「……ええ、そうよ。だから早く戻っていつも通りに振る舞って、九頭竜八雲が帰ってくるのを待っていなさい。そして殺すのよ」
改めてマキシに命令を重ね掛けするようにして言い放つ。
「うん……いつも通り……振る舞う……」
そこで浮ついたように囁いたマキシ。
「うん……そうか……僕の……普段通りに……だったら―――そうさせてもらうよっ!!!」
―――そう叫んだマキシが一瞬でスパイダーの懐に入り込むと、鳩尾に下から歯を食いしばって『身体強化』を施した右拳をアッパーカットで繰り出す。
メリメリという感触を受けながら撃ち込んだスパイダーの腹部からは、バキバキと聞こえてはいけない音が鳴り響く―――
「ぐぶぅうう―――っ!!!」
―――完全に予想外だったスパイダーは腹部にめり込んだマキシの拳の威力によって、仮面の口元から真っ赤な血を吐き出しながら空洞の天井まで吹き飛ばされていった。
だが、しかし―――
―――その十mほどある天井まで打ち上げられたスパイダーが落ちてくることなく、そのまま天井に四つん這いになりながら貼りついている姿を見てマキシが驚く。
「うわぁ……そのまんま蜘蛛だね……」
呆れたような声で顔を顰めるマキシを天井から血反吐を吐きながら睨みつけるスパイダーは、
「ゴホッ!ゴフッ!ハァハァ!……ゴボッ……な、何故だ!!―――何故、お前は奴隷蜘蛛の毒に侵されていない!!」
確かに首に噛みつかせた奴隷蜘蛛の支配に置かれないマキシの様子に驚愕する。
「ああ、奴隷蜘蛛ねぇ……そんなもの―――」
そう言いながらシャツを捲り、スカートをズラしたマキシが曝け出した下腹部には、八雲のモノである象徴―――
―――薄桃色の『龍紋』が輝いていた。
「―――この最強の雄である八雲君から刻みつけてもらった『龍紋』の前には関係なかったね。僕達はこの『龍紋』によって既に八雲君に心から従属しているのさ。だからその程度の蜘蛛が打ち込んだ毒なんかで八雲君の『龍紋』を上回る支配なんて出来る訳ないのさ」
「なん……だと……だったら!!」
スパイダーは天井から腕をブン!と振り抜くと、その動きに呼応してマキシの周囲からこの巨大な繭を形成している細かい糸が束になって襲い掛かってきて、グルグルと身体を覆い尽くしていく。
「ハァハァ……奴隷蜘蛛は効かなくても、その糸の《麻痺》はどうしようもないでしょう」
そうして天井から糸を出してそれに掴まり、下に降りてくるスパイダーが糸に巻きつかれて蚕の繭のようになったマキシに近づいていく。
だがその次の瞬間―――
「なにぃ!?」
―――ズボッとその糸の繭から突き出された二本の腕にスパイダーは腕を掴まれ、そして次の瞬間に繭の中から、
「―――《風刃》!」
風属性魔術で風の刃を生み出して全身を包み込む糸を切り刻み、中から平然な顔をしたマキシが姿を現した―――
「クゥウッ!?―――何故《麻痺》が効かないのだ!?」
「初めは効いていたさ。外で捕まった時は正直焦ったからね。でも、僕達の旦那様はそうした状態異常の耐性を持っているんだ。その能力は状態異常を受けると次第に耐性を身につけられるって能力でね。そして、それは『龍紋』を通して僕達龍紋の乙女にも加護として働いている。だから麻痺も効かなくなって、さっきの蜘蛛の毒も効かなかったって訳さ」
―――自分に状態異常が効かない訳を話したマキシに、スパイダーはギリッと奥歯を噛みしめる。
「クソォオオオ―――ッ!!!」
そう叫んだ瞬間―――
―――突然スパイダーの背中から八本の長く巨大な脚が飛び出して、自分を掴むマキシにその爪先で襲い掛かる。
「―――ッ!!」
八方から貫かんばかりの勢いで襲い掛かる蜘蛛の脚に、思わずマキシはスパイダーを掴んだ両手を放してバックステップで間合いを取り直した―――
「やはり九頭竜八雲の周りの者達も一筋縄ではいかないようね!だったら一人ずつ、此処に連れ込んで始末してあげる!!」
―――背中から生えた巨大で長い八本の蜘蛛の脚が床につけば、スパイダーの身体が空中にぶら下がるほどの長さがあり、その蜘蛛の脚に移動を任せてスパイダーは両掌から今度は赤い糸を繰り出す。
「ッ!―――その糸は!?」
まだどのような力を持っているのか分からない赤い糸の噴射をマキシは軽々と身を翻して躱すと、『収納』から鉄のナイフを取り出して指に挟みスパイダーに向かって投擲した―――
―――するとそのナイフを赤い糸で絡みつけて落とした途端に、巻き込まれた鉄のナイフが一瞬で真っ赤に発熱して赤く輝き変形していく。
「超高熱の物理攻撃か……考えたね」
状態異常系の効果が望めないと知ったスパイダーは、今度は物理攻撃の出来る糸に切り替えてきたことにマキシは内心で感心したが油断すれば消し炭になってしまう―――
「もう此処から逃げることは出来ないわ。大人しく『溶岩糸』の餌食になって死になさい」
―――カサカサと節目同士が擦れ合う音を立てながら、八本の脚で高速移動を生じさせるスパイダーが、空洞の中を壁も天井も関係なく移動しては溶岩糸を手から噴き出してマキシに襲い掛かる
「フン!―――ハアッ!!」
自分に襲い掛かる溶岩糸を『身体加速』で軽々と回避していくマキシ―――
―――その的を外した溶岩糸が床や壁に接触すると、そこから高熱によって発火した赤い炎が立ち上がりマキシの周囲を照らしていく。
「これは当たったら火傷じゃ済みそうにないね!」
「―――骨まで残さず消し去ってあげる!!」
軽々と攻撃を躱していくマキシを躍起になって追い立てるスパイダーだったが、そこで何かに気がついた―――
「これは!?―――お前!!一体何をした!?」
―――自らに起こった異常事態に驚愕するスパイダーの声が空洞に響き渡る。
それは自分の両手に浮かび上がった黒い炎のような紋様が目に入った途端に身体の自由を奪われ、その場で動けなくなってしまったのだ。
そして紋様が現れたと同時にスパイダーの腕が上がらなくなってしまい、ダランと足元の床に向けて垂れ下がり、その手から攻撃をすることも不可能な状況に陥っていた―――
「うん、効いてきたみたいだね。さっき君の両腕を掴んだ時に【呪術】を仕込んでおいたから」
「―――【呪術】だと!?」
途端に身体が痙攣して身動きが取れなくなったスパイダーは、背中から飛び出した八本の脚も維持出来ずシュルシュルと縮まって背中に収まり、やがて床に自らの足をついたがバランスが取れずにその場に前のめりになって倒れ込んでいく。
「そう、【呪印・操戯】……魂や意志にまで干渉はしないけど、身体の自由を奪うための初歩的な呪いさ。心配しなくても時間が立てばこの呪いは消えるよ」
―――【呪印・操戯】
意志はそのままに身体の自由を奪う初歩的な呪術で効果も時間で効果が切れる呪い。
且つてのマキシがイェンリンに発動した【呪印・封魂操戯】のように魂にまで干渉する呪いとは違い、獲物を捕獲する際などに用いられる。
発動者のLevelによって拘束力には効果の強弱があるが、Level.100を超えた超越者のマキシに拘束された場合は神龍達を除いて八雲や雪菜、そしてイェンリンクラスの超越者でなければ解くことは出来ない。
マキシが此処に連れて来られた時とはまったく逆の立場に陥ったスパイダーは、床に這い蹲って悶えるが身体は完全に自由を奪われて芋虫のようにモゾモゾと震えることしか出来なかった。
「クゥウッ!―――私を捕縛してどうするつもりだ?」
辛うじて動かせる首を床から伸ばしてギロリと八雲を睨みつけてくるスパイダーに、上から見下すような視線でマキシが静かに答える。
「そうだねぇ……君が八雲君を暗殺させようとした動機を教えてもらおうかな」
「―――動機だと?」
「そう。八雲君を僕に殺させようとしたことは目的だよね?だったら、そうさせようと思った動機を教えてもらえないかな?」
「……」
そこから閉口したスパイダーは何も答えない。
「答えたくないと?……まあ、別にいいけどね」
「なんだ?私を……拷問にでもかけるか?」
努めて冷静に問い掛けているが、マキシにはスパイダーの瞳に動揺している色が見えていた。
「う~ん、八雲君がいれば《魔神拘束》で三日と経たずに君は、淫らな顔を浮かべて八雲君の女になってペラペラ口を割ってくれるんだけどねぇ……生憎と八雲君はノワールと一緒に不在だ」
「……」
そこで床に這い蹲るスパイダーに近づいたマキシは、藍色の髪を鷲掴みにすると顔を持ち上げる―――
「ぐぅあ!!」
―――突然うつ伏せの状態から首を持ち上げられて喉が伸びて変な息が漏れ出したスパイダーの仮面に手を掛けると―――
―――マキシはそれを剥ぎ取った。
その仮面の下から現れたのは―――
藍色のウェーブ掛かったボブカットの髪をして赤い瞳をした美女―――
―――セルバルス=アラヴァエンシスだった。
「君……この学園の生徒だよね?確か雪菜とイザベルと仲良くなったっていう農学部の生徒だったかな……名前は確か……セルバルス……だったよね」
「クッ……」
セルバルスは持ち上げられた頭を必死に横へ向けて視線を外そうとするが、髪の毛を掴んで引き上げたマキシによって反対の手で顎を掴まれ、視線を戻される。
「なるほど……君がこの学園に入学したのも、雪菜とイザベルに近づいたのもすべては八雲君の暗殺への布石って訳だね?でも今この誰もいなくなった黒神龍特区で、一番狙いやすくなった僕に的を絞ったってところかな?」
「……」
セルバルスはゴルテスト=ペイウッドスベンの統べる闇の組織『深淵』に所属する暗殺者だ。
暗殺者として育てられた亜人のセルバルスは、敵に捕縛された時の対応も組織から叩き込まれている。
蜘蛛の魔物とのハーフとして造り出されたセルバルスは人間ではない。
彼女もまたニンゲンと同じくゼロワンの作品の一つに過ぎない。
そんなセルバルスを見つめながら、マキシは暫し考える―――
―――そして、何かを思いついたかのような素振りを見せると、
「君……いいねぇ」
「……なに?」
マキシはそれまでの普段の態度から変貌していく。
「その反抗的な態度……誰かに忠義立てした行動……それによって口を割らないその精神。どれを取っても僕の琴線に触れることばかりだよ♪ そしてその様々な虫を従えて扱える能力……役に立ちそうじゃないか/////」
何故か高揚した表情を見せ始めるマキシに、セルバルスはこれまでの暗殺者としての経験からも体験したことのない空寒いものを背筋に感じていた。
「フフフッ♡ 試練世界で僕が新たに得た能力……それを試すのに君ほど適当な相手はいないよ♪/////」
「ッ!?―――どういうことだ!」
驚いた声を上げたセルバルスをマキシは仰向けに転がすと同時に、その身に纏った革のスーツの胸元を『身体強化』した手で破り裂く―――
―――その破り裂かれた革スーツの胸の裂け目から、推定Fカップの白い胸がぷるん♪ と飛び出して、その先端にある桃色の突起が外気に晒されて小刻みに震えていた。
「綺麗な身体をしているね♡ もっと見せてよ♪/////」
「―――や、やめろっ!!!お前、一体何をするつもりなんだ!!!」
声でしか抵抗出来ないセルバルスのスーツを更にバリバリと引き裂くマキシ―――
―――するとあっという間にセルバルスは全裸にされて床に転がされていた。
「うん♡ 本当に綺麗な身体だ♡ さあ、それじゃあ……ここからが本番だよ♡/////」
そう告げて徐に自らのスカートを捲り上げていき、その中のマキシの股間を見たセルバルスは青い顔をしてサッと戦慄する―――
「そ、それは……」
―――スカートの中には左右が紐で結ばれた濃い青色のフリフリのレースが付いたショーツが顔を覗かせている。
そして―――
「これから、その能力について教えてあげるよ♡……その身体にね♡/////」
そう言ってペロリと唇を可愛い舌で舐め上げるのをセルバルスに見せつけると、小さな下着から突き出るようにして可憐な美女であるマキシの股間に何かが立ち上がっている―――
―――試練世界で成長を遂げ、大人びた美女に変わったマキシには不釣り合いなその男性器にセルバルスは恐怖で息を飲んだ。
そのセルバルスの反応を見て、マキシは可愛らしい笑みを浮かべて淫魔の顔を覗かせていた―――
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2023.07.27
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漫画をご担当くださいました森あいり先生!本当にありがとうございました!!
商業案件はこれにて終了ですがこれからも、どうぞ宜しくお願い致します☆
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誤字報告も本当にありがとうございます!
これからも宜しくお願い申し上げます!




