黒神龍特区防衛戦
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―――首都アードラーの防衛にある程度の目途がついたマキシは飛ぶ。
《空中浮揚》によって魔力の尾を引きながら飛翔するマキシは、黒神龍特区の上空に差し掛かる―――
「あれは……」
眼下に広がる黒神龍特区からおよそ一kmの距離で、魔物から特区の防衛に当たるアクシアの乾闥婆師団と、シリウスとエルカミナの迦楼羅師団の連合は迫り来る山のように巨大な蜘蛛の魔物と、その周囲を固める虫型の魔物の群れと既に衝突していた。
(ナターシャが見たっていう巨大な蜘蛛の魔物っていうのはあれのことだよね……だとしたら黒神龍特区が本命だった?それとも他に何か……)
自分が標的だという考えは根底に残しつつ、敵の意図を探るマキシだが今は目下のところ魔物と戦闘を繰り広げるシリウス達の応援に駆けつけるのが先決だと判断して地上に向けて降下を開始するのだった―――
―――黒神龍特区に迫る魔物の群れに対峙するシリウス達は、
「騎馬隊は前衛から突撃します!魔術師部隊は後方より攻撃魔術で支援を!!」
アクシアの号令が発せられて黒麒麟に乗った二つの師団の騎馬隊が突撃を開始する―――
―――シリウスとエルカミナも黒麒麟に跨り突撃の先頭を位置取り突き進んでいった。
山のように巨大な蜘蛛の魔物の周囲に集う虫型の魔物は凡そ五万体―――
―――漆黒の騎馬隊は黒麒麟に付与された防御系の魔術をフル活用しつつ、手にした武器を振り翳して巨体で進む蜘蛛に向かっていく。
そして、アクシアの手にする大剣はソプラ・ゾット諸島連合国で秘蔵されていた国宝武装=海聖剣アクアレイドである。
水色に輝くその大剣の刃の正体は、膨大な水を神の力で超高密度に圧縮したものであり、その刃であらゆるものを斬り裂く鋭利な刃を生み出している。
何よりこの剣の特徴としては刃こぼれを起こすことがなく、常に刃を形成する水が新しい刃として保持されるため、このような大量の魔物や戦争においても刃の手入れは不要という修繕要らずの武器という特性を持っている。
「駆けよ!―――疾く駆けよォオオッ!!」
アクアレイドを天に翳して先陣を切るアクシアにすべての騎馬隊が続く―――
―――襲い来る虫型の魔物に対して袈裟斬りにアクアレイドを振り抜いていくアクシア。
その超高密度の水の刃は外殻の硬い虫型魔物を何も抵抗を感じる様子もなくスパスパと斬り裂き、アクシアの実力も伴って巨大な蜘蛛に突き進み、すぐ傍まで接敵する―――
―――そして大蜘蛛の目の前まで到達した時、
「―――シリウス!!」
アクシアがシリウスの名を叫び、それと同時に黒麒麟の背から飛んだシリウスが山のように巨大な蜘蛛の背中に飛び移る―――
「―――『孤狼魂』!!!」
―――『孤狼魂』
シリウスの固有スキルで『身体強化』 『身体加速』 『思考加速』 『状態異常無効』 『魔術攻撃耐性』が発動する。
ステータスの数値では八雲のそれには及ばないが、常人からすると驚異的な各能力の上昇が発動する。
―――その手に鳳凰剣=天舞を握りしめて振り被ると、巨大な蜘蛛に向かって振り下ろした。
しかし―――
「―――なにぃい!?」
―――キィン!とまるで金属と金属が激突したような甲高い音を響かせて、天舞の切先が土色の巨大蜘蛛の外殻で停止し、それ以上斬り裂くことが出来ない。
「クッ!なんて硬さだ!!この天舞でも傷一つつかないだと!?」
蜘蛛の背で困惑した表情を浮かべるシリウス―――
―――その蜘蛛の足元では、
「どうした?シリウスは何をしているの?」
地上では蜘蛛を見上げながらそう呟くアクシアだが、この突撃作戦の要であるシリウスの攻撃がどうなっているのか分からずに不安が胸を過ぎる―――
―――その間に巨大蜘蛛の長い脚の爪先がアクシアに向かって襲い掛かってくる。
「チッ!―――喰らいなさい!!」
その爪先が襲って来るところに黒麒麟を駆り回避したアクシアは、その回避と同時に迫り来る蜘蛛の脚にアクアレイドで斬り掛かった―――
―――しかし、
「これは!?アクアレイドの刃が通らないなんて!!」
国宝武装である海聖剣ですら刃が通らないことにアクシアは驚きを隠せない―――
―――その間にも巨大蜘蛛の周囲に群がる虫型魔物は師団の兵士達に向かって襲い掛かってきていた。
「ハァアアアッ!!!」
その襲い掛かる虫魔物の群れにエルカミナは果敢に生まれ変わった魔槍=雷影で次々に討伐していく―――
―――だが中心にいる巨大蜘蛛の動きを止められない以上、黒神龍特区への接近を止めることが出来ないでいた。
「―――おのれぇえっ!!!」
能力を全開にして蜘蛛の背中で天舞を振るうシリウスだったが、それでもまるで歯が立たないでいる時―――
「随分手を焼いているみたいだね―――シリウス」
「ッ?!―――マキシ様!!どうして此処に!?」
―――突然その姿を現したマキシに驚くシリウスだが、マキシは至って冷静に告げる。
「このデカい蜘蛛は特殊な魔術を施されているね」
「特殊な魔術を?」
「うん。かなり物理と魔術両方の防御に特化した魔術みたいだね。この蜘蛛自身の能力じゃなくて、誰かに掛けてもらっている魔術だよ」
「だから天舞の刃が一切通らないのか……」
冷静にマキシの話しを理解したシリウスだが、それではどうすべきという次の案が浮かんでこない。
「だからまずはその防御を崩す。僕が【呪術】で蜘蛛の防御力を落とすから、その隙にシリウスは蜘蛛に攻撃を仕掛けるんだ」
「ッ!―――承知しました!」
シリウスが返事をしたその時、巨大蜘蛛の身体を這い上ってきた虫型魔物の群れが背中に乗っているマキシとシリウスの二人を取り囲んでいく。
「鬱陶しいね……シリウス、【呪術】を行使するまで暫く任せてもいいかい?」
「はい!お護り致します!!」
マキシの呪術発動まで一匹たりとも近づけさせないと誓ったシリウスは、鳳凰剣の固有能力である孔雀の羽根模様のピットを出現させて、周囲の虫型魔物に向けて解き放つ―――
―――縦横無尽に飛翔するピットは次々と二人に迫る虫型魔物の脚や身体を斬り裂き、シリウス自身も『孤狼魂』で向上した能力値によって高速の動きで立ち回りながら、次々に魔物を天舞で斬り裂いていった。
その間にマキシは魔力を変換して【呪術】を展開すると―――
「―――【呪術・防御破壊】!!!」
―――足元の大蜘蛛の背中に右手をついて、且つてのフォンターナ迷宮でラーズグリーズから教えを受けた対防御力低下の呪術を発動する。
するとマキシの右手から周囲に向かって荊の棘の紋様をした呪印が広がり、巨大蜘蛛の防御力を低下させていった―――
―――フォンターナ迷宮で使用した時よりLevelも上がり、明らかに魔力量も膨大なものになったマキシには、この程度の大型魔物の全身防御率を低下させることなど容易なことになっていた。
「今だよ!!―――シリウス!!!」
マキシの掛け声を聴き、シリウスの手にした天舞に自分の魔力を込めると同時に刃が発火して燃え盛る―――
「―――喰らえぇええっ!!!」
―――炎上する天舞を両手でしっかりと握り締めて足元の巨大蜘蛛に振り下ろしたシリウスの天舞は、何の抵抗もなく大蜘蛛の身体を斬り裂き、更にその体内に伸びていく炎の刃が深くまで貫いていくと、やがて腹の下にまでそれが貫通して飛び出した。
「―――あれはっ!!!」
「―――シリウス!!!」
地上のアクシアとエルカミナは頭上を見上げて大蜘蛛の腹を突き破ってきた炎の刃を見た途端にシリウスによるものだとすぐに察知した―――
―――更にマキシの【防御破壊】の効果を示す荊の棘の紋様が大蜘蛛の身体中に広がっていくのを目にして、
「この紋様が攻撃を通るようにしたのね!」
勘でそれを察知したアクシアはアクアレイドに魔力を注ぐと―――
「唸れ!!アクアレイド―――ッ!!!」
―――水で形成されたアクアレイドの刃が途方もない長さに延長されて、両手でアクアレイドを構えたアクシアが横一文字に振り抜くと右側に並んでいた大蜘蛛の四本の脚が、その刃の触れたところから次々に切断されていき、バランスの取れなくなった大蜘蛛が斬られて脚を失った右側に倒れ込んで来る。
「全員!衝撃に備えて!!」
アクシアが地上で展開する師団の兵士達に大音声で叫ぶ―――
―――地上に倒れた大蜘蛛の下敷きになって、足元にいた虫型魔物がブチブチと押し潰されていく。
ズシンッ!と地響きを立てながら、その巨体を倒した大蜘蛛に、背中に乗っていたマキシ、シリウス、そして地上で戦闘していたアクシアとエルカミナが一斉に武器を手に襲い掛かる―――
「ウオォオオッ!!!―――燃やし尽くせ!天舞!!」
―――振り被った炎に包まれた鳳凰剣を大蜘蛛の首の付け根に振り下ろしたシリウス。
マキシによって防御力の低下した大蜘蛛の首に深く突き刺さり、頭部が炎に包まれる―――
「ハァアアッ!!!―――暴れなさい!雷影!!」
―――穂先の周りに出現した黒い稲妻のような刃がエルカミナの突き立てた大蜘蛛の体内に侵入する。
大蜘蛛の体内に入った黒い刃は体内をズタズタに斬り裂いて暴れまわり、更にエルカミナが突き刺した穂先には八雲の改造で取り付けられた属性魔術増幅効果で展開された魔術によって巨大な風属性魔術の魔法陣を展開させて、防御力の低下した身体を風の刃が走り抜け全身に亀裂を生じさせていく―――
―――そして最後に控えるのは、
「……いくよ蒼夜
―――風属性魔術・極位《極空》!!!」
―――蒼龍剣=蒼夜を手に飛び上がった空中から直下で倒れた大蜘蛛の横腹に突撃するマキシ。
その刃が容易く大蜘蛛の外殻に根元まで突き刺さると、発動した《極空》が大蜘蛛の体内で暴風の刃を巻き起こし、その巨大な体躯を突き抜けて全身が斬り裂かれ、暴風の嵐が周囲に残っている虫型魔物まで巻き込み炸裂する―――
「ハァアア―――ッ!!終わりだァアアッ!!!」
―――膨大な魔力を膨らませたマキシが蒼夜にその力を更に注ぎ込むと、大蜘蛛の身体が一瞬大きく膨らんで、そして爆発音と共にその場で飛散していった。
ドォオ―――ン!という爆発音が周囲には響き渡り、脚を切断されて横倒れになっていた大蜘蛛は見る影もないほどバラバラに吹き飛んで、周囲でそれを見ていた兵士達も思わず息を飲んで固まっていた……
「―――マキシ様!!!」
大蜘蛛から離脱して離れていたシリウスにエルカミナ、そしてアクシアは爆心地状態の大蜘蛛の残骸の中でマキシの姿を探していく。
まだ周囲に虫型魔物の残りが這いずり回っている中で、マキシがもし動けない状況になっていたらと皆は気が気ではない。
すると大蜘蛛の残骸の影から大ムカデの魔物が飛び出してくる―――
「チィッ!!―――邪魔をするなっ!!!」
―――シリウスが怒鳴り声を上げて天舞を大ムカデに向けて振り抜こうとした時、
地面から上半身を立ち上げた大ムカデの首の下辺りを鋭い刃で斬り飛ばす者がいた―――
「ッ?!―――マキシ様!ご無事ですか?」
大ムカデの首を斬り飛ばしたのは探していたマキシだ。
「フゥ……ちょっと張り切りすぎちゃったね♪ 自分まで吹き飛ばされちゃったよ」
笑いながら現れたマキシにシリウス達はホッと胸を撫で下ろす。
「さてと……此処もコイツを倒したら、残りの魔物はシリウス達でも大丈夫だよね?」
「はい。それはお任せ下さい」
シリウスの返事にコクリと頷くとマキシはアクシアに視線を向ける。
「指揮を取ってくれていたのはアクシアだよね?引き続き此処の魔物達の殲滅は任せてもいいかな?」
「はい。必ず殲滅致します。マキシ様はどうなさるのですか?」
アクシアの問いにマキシはある方向に視線を向けると、
「僕は黒神龍学園に向かうよ。今回の魔物の襲来……色々と気になるところがあるから」
「御一人で行かれるのですか?」
心配顔のシリウスの問いにマキシは笑顔で、
「学園の方が龍の牙達にルドルフ先生やレベッカ先生、アラミス達にダイヤモンドもいるからね。様子を見に行ってくる」
シリウスが安心するように答える。
「承知しました。ですが、くれぐれもお気をつけください」
「ありがとう、シリウス達も気をつけてね」
それだけ言ってマキシは再び《空中浮揚》で空中に浮かびがると、黒神龍学園を目指すのだった―――
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2023.07.27
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漫画をご担当くださいました森あいり先生!本当にありがとうございました!!
商業案件はこれにて終了ですがこれからも、どうぞ宜しくお願い致します☆
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誤字報告も本当にありがとうございます!
これからも宜しくお願い申し上げます!




