首都防衛戦
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―――黒龍城から《空中浮揚》で飛び立ったマキシ達
まずは首都アードラーの状況を確認するために向かうと、マキシ達が到着した時にはラース率いる連邦軍が地平線を埋め尽くすほどの虫の魔物達の側面中央辺りから分断しようと突撃しているところだった。
「―――もう始まっていますわ!!」
空中でウェンスが叫ぶ。
「どうなさいますか?マキシ様」
同じく空中のサジェッサがマキシの指示を仰ぐ。
「そうだねぇ……うん、八部衆が分断してくれているから、後ろ側の群れを貰っちゃおうか」
中央を分断されたことにより、ラース達によって後方に斬り裂かれた虫の群れだけでも十五万はいる。
それほどの大群をマキシはあっさりと貰う、つまり始末すると言ってのけたのだ。
本来なら何を言っているのかと思うが、蒼天の精霊の二人はその判断に異を唱えることはない。
「それじゃあ―――虫退治の開始だよ!」
二人にそう言い放つと、マキシは虫型の魔物の群れに空中から突撃していく―――
「サジェッサ!ウェンス!―――着地と同時に僕が仕掛けるから!その後は一匹も逃がさないように!!」
「―――承知しました!」
「―――畏まりましたわ!」
空中から一直線に地上に向かうマキシ達―――
直上からの落下中にウェンスは蒼龍鎧=『蒼壁』を装着し、全身を蒼く反射する輝く鎧に身を包む。
サジェッサは無手の闘士であるため、拳に闘気を貯めていく。
―――そして分断された虫の魔物の群れの中心辺りへ素早く着地したマキシは、
「―――【呪術・殺虫陣煙】!!!」
魔力を呪術に変換して右手に集中すると地面にその手をついた。
その瞬間、大地に巨大な【呪術】の呪印が円陣でマキシの周囲に刻まれたかと思うと、その大地から白い煙が辺りに噴き出して虫型の魔物達に降り掛かる―――
―――するとその煙に触れた虫型魔物の身体に呪印の紋様が浮かび上がったかと思うと、藻掻き苦しむように大地に倒れてビクビクと身体を震わせて、やがて次々に絶命していった。
その様子を降り立った大地から見つめるマキシ―――
「マキシ様!これは……」
続いて大地に降り立った鎧を纏うウェンスがマキシに問い掛ける。
「―――【呪術】は本来なら畑の作物をこうして虫や魔物から守るための手段として使われていたんだ。だから殺虫に特化したこんな【呪術】も当然あるんだよ」
これは亡き母にも、師であるラーズグリーズにも教えられた呪術の本流だ。
「この術は煙に触れた虫を倒して、その虫の身体に触れた虫も【呪術】が伝染して広がっていく。虫以外には無害だから安心していいよ」
マキシが言った通り、サジェッサやウェンスには異常はないが、周囲の煙に巻かれた巨大な虫達はその大きな体躯を震わせながら次々と倒れていき、それに身体が触れた虫にも効果が広がっていく。
既に直径百mほどの範囲では虫の死骸だけが地面を覆っていた。
「さあ、それじゃあ残りを片付けようか。僕は八部衆にこっちの半分は片付けるって話してくるから」
「―――承知しました!」
「此方は掃討致しますわ!」
サジェッサとウェンスはそう告げると『身体加速』で掻き消えて、まだまだ群がるほど残っている虫達を殲滅に向かった―――
―――その一方で首都アードラーの西門から虫の群れに突撃して分断したラース率いる八部衆は、
「―――ラース!群れの分断には成功したわ!」
「ああっ!このまま外壁に取り付いている方を掃討する!」
「後ろの群れはいいの?」
ナディアが問い掛けるとラースが分断した後方の群れを指差す。
「さっきマキシ様が空から舞い降りてくるのが見えた。きっと後方に攻撃を仕掛けてくれているはずだ」
「―――マキシ様が!?加勢に行かなくてもいいの?」
蒼神龍の御子が自ら魔物の群れに飛び込んだと聴いて不安に駆られるナディアだったが、
「マキシ様と雪菜様は神龍様の試練を受けて黒帝陛下もそれは驚くほどにLevelを上げられたそうだ。黒帝陛下のお墨付きだから心配はいらないだろう。蒼天の精霊の御二方も供をしているのが見えたからな」
「だったらいいのだけど……」
すると後方の魔物の群れの中から白い噴煙が立ち昇ったことにラースとナディアは驚く。
「―――あれは何!?」
ナディアがそう叫ぶと、そこにウォルターが駆けてくる。
「どうやらマキシ様が大地に降りたと同時に何か仕掛けられたようだ」
その報告を聴いてラースも頷くと、
「ならば、やはり此方は外壁に取り付いている側の虫共を駆逐するぞ!」
そう告げて八部衆の四師団を引き連れて、進行方向を首都側に分断した虫魔物の群れに向けるのだった―――
―――マキシがラース達の元に飛び立った後、
「ハァアアア―――ッ!!!」
無手のサジェッサが拳に貯め込んだ闘気を正拳突きと共に前方の虫魔物達に放つと、青白い闘気の塊が飛び出して発射される―――
―――その飛翔した闘気が着弾すると同時に青白い闘気が膨張するように広がり、周囲の魔物を取り込んで一気に破裂する。
眩しい閃光と爆風を伴ったその爆心地には胴と腹の部分や節足の節目からバラバラに吹き飛ばされた虫魔物の残骸がバラバラと大地に降り注いできた―――
「フウウ―――ンッ!!!」
―――更にまだ相当の数が残っている虫の中から巨大なダンゴムシ型の魔物に、蒼いバトラー服で後ろ回し蹴りを厚い装甲のような外殻に撃ち込む。
ピシッ!と外殻に亀裂が入ると同時に、その巨体のダンゴムシが地平線に対して真横に向かって弾丸のような速度で吹き飛び、その先にいる他の虫魔物を巻き込んで次々に身体をバラバラにして絶命させていった―――
―――続いてサジェッサが肘を曲げて腰の両脇に構えると、
「ハァアアアッ!!!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!―――」
腰を落としながら交互に撃ち出した拳から、青白い闘気をまるでマシンガンの弾丸のように高速で撃ち出す―――
―――剣聖技の衝撃拳にも似た技だが、イェンリンの衝撃拳が純粋な拳圧に対して、サジェッサの技は集団戦用に魔力も込められている。
繰り出した闘気の弾丸は虫の外殻を次々と貫通し、やがて最後に込められた魔力によって散弾のように周囲に弾けると、粒状の闘気の塊が周囲の虫魔物に細かい穴を穿ち、大量殺傷を引き起こす―――
―――続いて群れの中を駆けるサジェッサは同じく魔力を撃ち出しながら拳や蹴りを繰り出していく。
それらが命中する度に青白い光がドームのように広がって、その中にいる虫達が破裂して残骸へと変わっていった―――
「いい鍛錬になる……おっと、これは八雲様に聴かれたらお叱りを受けてしまうかしら」
―――ティーグルの首都を襲った魔物の災害を鍛錬の題材にしたことを、反省するサジェッサだが彼女にとってはその程度のことでしかないのだ。
「では早く片付けてマキシ様に合流するとしよう!」
こうして再び残りの虫魔物の掃討に飛び込むサジェッサだった―――
―――時を同じくして虫の群れに飛び込んだウェンス
飛び込んだ先で蒼龍鎧=『蒼壁』を纏い、両手には二本の大剣を握ったウェンスが大地に仁王立ちしていた―――
―――すると当然のように周囲から巨大な虫魔物が群がり、次々と重なっていくと瞬く間にウェンスを覆い隠してその場に虫の山を生み出す。
鎧の中では群がる虫の牙や足の爪がガチガチと蒼壁に襲い掛かる音が、鎧の中のウェンスの耳に響いていた―――
「……お前達、虫ケラ如きが蒼神龍様の鱗で出来たこの蒼壁を貫くことなど不可能。では一気にいかせて頂きます!」
―――右手の大剣に纏われる風属性魔術と、
左手の大剣に纏われた水属性魔術が膨張していく―――
―――そして虫に群がられたまま苦も無く大剣を交差させると同時に、その交差点で風と水の魔術がスパークを起こしたかと思うとウェンスを中心にして雷が発生して白い閃光と放電が駆け抜ける。
【GYUUUU―――ッ?!】
【GIGIGI―――ッ!?】
ウェンスが放った超高電圧の稲妻は自らを覆うように群がる虫達の体躯を駆け巡り、その場で感電死させるだけに留まらず、虫達が気づかない間に足元で予め展開させていた水属性魔術によって巻かれた水が、周囲で群れる虫達まで感電させて身体の節目から白い煙を立ち上げる―――
―――何かが焼ける臭いを漂わせて瞬く間に大量感電させていった。
「―――フンッ!!」
気合いと同時に山のように積み重なった虫の死骸を吹き飛ばすと、
「まだまだいきますわよ!!」
遠巻きに残る虫魔物達に向かって『身体加速』で突撃しながら、身体を回転させて両手の大剣で斬り裂いていく―――
―――まるで巨大なミキサーのようになって次々と魔物を狩り取るウェンスの脳裏にはマキシの安否が常に気になっていた。
「とっとと片付けてマキシ様の後を追いますわ!!」
そうしてサジェッサと二人だけで既に十五万のうち相当数の虫の群れを殲滅したウェンスは、更に気合いを入れると両手の大剣に今度は火属性魔術を展開して剣を炎で包み込む―――
―――その剣に触れられただけで全身が赤い炎に包まれて燃焼していく虫達。
炎によって体内の水分を一気に蒸発させられる虫達は、成す術もなく炎を立ち昇らせながら大地に倒れていった―――
―――そして、八部衆のラース達が分断した首都側に向かう虫の群れを掃討しているところに、
ラースから数十m離れたところに空から舞い降りた人物がいた―――
「―――【呪術・殺虫陣煙】!!!」
その瞬間、大地に巨大な【呪術】の呪印が円陣で刻まれたかと思うと、その大地から白い煙が辺りに噴き出して虫型の魔物達に降り掛かる―――
―――するとその煙に触れた虫型魔物の身体に呪印の紋様が浮かび上がったかと思うと、藻掻き苦しむように大地に倒れてビクビクと身体を震わせて、やがて次々に絶命していく。
「これは―――」
その煙に巻き込まれたラースだったが、絶命していく虫達を見て驚愕する。
するとその白い煙の中から先ほどの舞い降りてきた人物が姿を現した―――
「大丈夫かい?―――ラース」
「―――マキシ様!今の煙はマキシ様が?」
現れたマキシに驚くラースが先ほどの白い煙について問い掛ける。
「うん。虫を殺す【呪術】だよ。人体には無害だから安心して」
「―――そのような【呪術】まであるのですか!」
「本来は農業を支援するための【呪術】なんだけどね。あの煙に巻かれると呪術に掛かって、その虫に触れた虫にも伝染していくんだ。だからこの周囲の虫は殲滅出来るはずだよ」
「それはありがたい!後方に分断した虫の群れもマキシ様が?」
「あっちは今サジェッサとウェンスが片付けてくれている。だから八部衆は首都に近づいている此方側だけに集中してくれていいよ」
「御加勢に心から感謝致します!我々はこのまま外壁の中の師団と共闘して此方の魔物を討伐致します」
ラースが黒麒麟の馬上から告げると、
「だったらまだ此方は数が多いから、僕も数を減らすのを手伝うよ」
そう告げて『収納』から蒼龍剣=蒼夜を取り出すと、スラリと鞘から抜いて魔力を注ぎ込む―――
「なんという魔力の量だ……」
―――マキシの蒼夜から溢れる魔力を感じ取り、その膨大な力に戦慄するラース。
するとマキシは魔力が注がれた蒼夜を構えると―――
「―――水属性魔術・極位……《極凍》!!!」
―――横薙ぎに蒼夜を振り抜き、ブリザードのような冷気が走り抜けるとその場にいた虫型の魔物達がまるで氷像のように次々と凍りついていく。
氷結した大地と魔物達の彫像が出来上がっていく様子をラース、ナディア、ウォルターは驚愕の表情でただ黙って見守っていくしかない―――
―――やがて首都の外壁に取り付く魔物達まで凍らせていくと、それらが次々に外壁から下へと落下して大地に衝突すると同時に亀裂が走り、粉々に砕け散っていく。
神龍の試練世界で修練を積み、Level.100に到達したマキシにとっては『蒼神龍の御子』としての加護とグラハムドから与えられた『魔神の末裔』というClassの加護により、魔力が以前より更に膨大な量を保有出来るようになったことで、試練世界で練磨した魔術が遂に極位まで到達していた。
「これで此方も任せて大丈夫かな?」
「はい!重ね重ねのご助力、感謝申し上げます」
「よかった♪ それじゃあ僕は黒神龍特区に向かうから後は宜しくね!」
それだけ言い残してマキシは《空中浮揚》で空中に舞い上がる。
首都の上空を回って他の場所の様子を見ていくが、少数だが別の方角から外壁を越えて侵入してきた虫型魔物は、外壁内に残ったギルベルトの緊那羅師団と、クリスティーナの摩睺羅伽師団、そして首都の防衛に回っていたレオとリブラが殲滅しているところが空から目に入った。
「ヒィイイッ!!!やっぱり虫は嫌だァアア―――ッ!!!」
そう叫びながら半泣きで虫の魔物を討伐するクリスティーナの様子に苦笑いを浮かべるマキシだが、
「首都の方はこれで一応は何とかなりそうかな。次は黒神龍特区だね……」
そう呟くと魔力の尾を引いて特区に向かって飛翔する。
その特区は現在シリウス、エルカミナとアクシアの師団が防衛に努めているのだった―――
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2023.07.27
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■2023年7月27日■
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漫画をご担当くださいました森あいり先生!本当にありがとうございました!!
商業案件はこれにて終了ですがこれからも、どうぞ宜しくお願い致します☆
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感想頂いてとても励みになります!
誤字報告も本当にありがとうございます!
これからも宜しくお願い申し上げます!




