ミッション11「北京制圧」前編
~ミッションエリア:中華国山西省~
《セシル、ミランダをやるぞ!》
「分かった。みんなはほかの敵を頼む!」
《ああ、任せるぜ!》
《こちらも任せな…………》
ミランダと相手をするのはセシルと対戦経験が2回目のソランジュ。セドリックとレオンハルトらは、取り巻きや一般兵士などを相手する。
《ありゃ?いつもと比べてなんか遅くね?》
「確かに……今までは短期決戦用なのかもしれないな」
短期決戦型は弾やエナジー、マナなどの節約を考慮しない、その名の通り短期間で決着をつける戦術だ。
初めてミランダと戦った時や、ソランジュや天が刈谷のミッションで交戦した際も短期決戦型だったのだろう。確かにミランダに与えられたであろうミッションは、そこまで時間をかける必要性はないことは容易に推測される。
しかしいつもと比べて遅いといってもやはり飛行型。スピードは速い。しかしそれだけならFCSでも普通に当てることはできる。ミランダの場合は距離を取りながら発射のタイミングを見極めているようで、さらに必要最低限の動きで攻撃をかわすことができる。まさに蝶のように舞い、蜂のように刺す戦術であろう。
《クソ……全然当たらんな。流石はミランダといったところか》
連携で挑み、ダメージを与えているが、致命傷には至らない。よくかわすことに加え、AFもあるため、そのダメージも微々たるものに過ぎない。
(どうにかしてミランダを落としたい。最悪あれがあるけど、できればミランダ戦ではまだ使いたくはないな……。いや、一発だけなら使ってもいいかな?)
セシルの新兵器は二発使える。本当はBS戦のために温存したいところだったが、使わずして落とされるなど愚の骨頂。それなら一発使って落とされたほうがまだましだ。
「ソフィ、天のEスナイパーを拝借できないか?」
《了解しました。座標を送信します》
「ソランジュ……時間稼いで」
《ああ……わかったよ》
セシルは一応スナイパーも扱える。天がホープに来る前にセシルがスナイパー役を引き受けていたこともある。最近はスナイパーを全くしていなかったとはいえ、そこまで腕は落ちてはいない。
《!何をするつもりかは知らんが……!》
ミランダがセシルにターゲットを絞って攻撃を仕掛けてきた。
(こちらの動きに気付いたか!)
躱せない攻撃はAFで防ぐが、ひびが入り、破れて機体にダメージを与える。
(あと一分、だが状況によっては……)
《セシル!》
「大丈夫だ」
ターゲットを絞ったといっても彼女はずっとセシルを優先的に狙っていた。ソランジュを無視するようになっただけだ。ソランジュの分もセシルに集中しただけだ。しかしそれが予想以上に大きいものであったが。
《この!俺を無視するんじゃねー!》
ソランジュがミランダ機に接近し、レーザーを放つが、間一髪で避けられる。
《なんでよけれるんだよ……》
ソランジュが萎え気味にそうつぶやく。ソランジュはミランダの完全視界外から攻撃したはずだが、まるで分っていたかのような動きで避けた。
(よし、時間だな)
「ソランジュ、目をつぶって!」
《おう!》
回避に専念していたセシルはミランダの正面に立ちはだかる。
《何をする気だ!》
ミランダがミサイルを一斉に発射した。大量のミサイルを一斉射撃することを、この世界ではミサイルカーニバルと呼ばれている。
「ミサイルカーニバルか!だが!」
セシルの新たな切り札を発動。するとセシル機がまばゆい光に包まれた。
《うあ!》
突然、非常に眩しい強い光がミランダを襲う。思わず声を上げてしまい、動きも悪くなった。そのすきを逃さずに、ソランジュが攻撃を始める。しかしミランダが放ったミサイルカーニバルは避けきれずにセシル機にダメージを与えた。
「ぅぅ……だが大丈夫だ」
座標地点に到達し、ドローンからEスナイパーが届く。
「久々だし、うまく扱いこなせるといいけど。やるしかないな」
マシンガンを一時的にパージし、Eスナイパーを装備する。
一方ミランダはようやく視力が回復し、再びセシルを狙い撃つ。
《今のは閃光弾……?一気に決めていったん離脱したほうが……!!》
ミランダはセシル機に一瞬、何かしらの違和感を覚えた。それが右腕に装備されている細長い武器であると瞬時に気付いた。
《(チぃ!あの時か……)》
恐らくあの一撃で致命傷を食らう可能性が高いだろうと判断し、再びミサイルカーニバルを放ちながら、ジェネレータの出力とラジエータの冷却力を最大に上げた。
「逃がすか」
セシルはAFを展開しながらスナイパーを放つ。その青白い閃光はミランダ機のAFを貫通し、致命傷を与えた。一方、ミサイルカーニバルはソランジュもターゲットになりにセシルの横に並んだ。AFは破られたが、セシルへのダメージはかなり軽減された。
《すまないフィル。どうやら私はここまでのようだ。離脱する》
《え!?ちょっちょっと!》
《お前たちもこのようなところで死ぬ必要はない》
ミランダはフィリップという部下に離脱する旨の通信を送った。フィリップは落とされるとは思わなかったようで、一瞬冷静を失いかけたが、先ほどの光が原因だとすぐに推測した。
「ありがとうソランジュ」
《な~に気にすんなよセシル》
生身同士ならグーでガッツポーズをしていたであろう雰囲気を作り出す。
《(腕をかなり上げてきたな……骨のあるやつが増えたようだ。しかし上層部とブラックローズの連中はいったい何を考えている?なぜわざわざ首を絞めるようなことをする?)》
ミランダはセシルやソランジュの機体を横目で一瞬見て、それから煮え切らない上層部に不信感をあらわにしながらミッションエリアから撤退した。
《キャ……キャンプス中尉……》
《……上の連中はテロを鎮める気はないのか……。EUNは上層部からすでにやる気を感じられない。ここまでテロが広がったのはすべて上層部の無策ゆえのことだ》
《BSがエリアに接近してきています!》
《ち!連中も疲れているんじゃないのか!?全員さっさと出るぞ!》
《ハ!》
フィリップはイライラし、クソ……と吐き捨てながらミッションエリアから撤退した。ほかの兵士もフィリップの後を追うようにエリアから離脱していく。
《ミッションエリアにBSが到達します》
「BS……来たか」
《危な~い!!!》
《へ?うわ!》
ミッションエリアから到達したBSの機体のうち、いきなりライトブルーの機体からレーザーが放たれた。その攻撃はソランジュに向かって撃たれたが、ソランジュは機体を少し動かし、回避した。
《本当に危ない!》
「Eさん。不意打ちとは……」
《おい!》
《だから警告したじゃん……危ない~って》
この隊のリーダーと思われるナディアがユーフェミアにこら!っと一喝した。ユーフェミアは特に悪びれることもなく、それどころか明後日の方向へ口笛を吹き、まったく反省していない様子。
《はぁ~本当に頭が痛い……》
《痛いの痛いの飛んでイケーって誰かかけてあげて》
《すまないなジェームズ。バカがバカをやって》
《は!無視された上に妹呼ばわりされなくなった!》
《私のことを姉と思ったことないだろう》
《……どう突っ込めばよいのか……》
《Eさんは相変わらずですね》
ユーフェミアの暴走っぷりにナディアだけでなく、ジェームズやソフィア、それにセシルまでも頭を抱えたり、ため息をつく事態となった。一方性格があまり変わっていないことにセドリックやレオンハルトは内心安堵している。
《我々はブルースカイと休戦を申し入れる》
《我々もお前たちと停戦し共通の敵であるエルメルとEUNと交戦すべきだと思っている。だがそれには条件がある》
《条件だと?》
ナディアの条件という言葉に全員が反応した。
《それはお前たちが我々ブルースカイの傘下に入ること。ヘンリーの命令には絶対厳守すること。ホープの資産や権利等の全てをブルースカイに無償譲渡すること。以上》
《冗談ではない》
ブルースカイ側の三つの条件にジェームズは即却下した。ホープ側にとって有利な面など一つもない、一方的な条件である。
《条件が呑めないというのであれば、休戦はありえんな。裏切者のお前たちに信用はない》
「信用?条件を呑むことが信用を産むと……?」
《そうだ。ゼロから……いや、マイナスから信用信頼を積み上げるからにはまず条件を呑むこと以外に何がある?》
「ナディ……君も変わったな。そこまで変わるほどヘンリーに付いていくのか」
《セシル……我々は世界をより良い方向へ、そして円滑に導くためにも多少の犠牲を払わなければならんのだ》
「けれど君たちは不必要な犠牲者まで生み出している」
《違うな。不必要な犠牲者は生み出していない。我々は多忙の立場だ。彼らを助けたかったのは我々も同じだ。しかし、だからといって、小のために大を切り捨てるわけにはいかん。ヴァリアントといえども、スーパーマンではないのだ》
《だからその役を俺たちに任せればいいじゃねーかよ!関空の件もうまくやったし、どうせお前らなんて関空がどうなったってどうでもいいと思ってんだろ!》
《お前たちは大のために小を切り捨て過ぎだ…………》
「俺は君たちから離れたことに後悔はしない。それがたとえナディたちと対立することになっても」
《そうか……》
ナディアはホープに圧力をかけても屈しないことにひっそりと評価した。
(それならそれでいい。そうでなくてはな。むしろ【我々】の計画も順調に進む。しかし今は……)
《ナディ、そういうわけでお前たちの考えには到底賛同することはできない。我々は我々だけでやっていく。お前たちの条件は飲むわけにはいかん》
《交渉決裂か、残念だ。ならばお前たちを消すしかないな……》
41部「自爆魔」の内容を一部修正しました




