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現代神話のエルカヴァリア  作者: 白卯兎 健太
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亡命者

設定変更:エルカヴァリアの略称をカヴァリアからエルクに変更

設定追加:エルメルに関係する長い名前(人名含む)を省略するときは最後はう段になる

 北京では両軍とも互角に戦っているが、俺たち(とBSの一部)が大連軍事拠点を陥落させた。これがEUNに響いているようで、徐々に押され気味になっていた。

 一方で【ブラックローズ】の連中は、大連に派遣した部隊が全滅したことを受け、急遽北京に部隊を派遣したようだ。どうやら【ブラックローズ】は大連の一件で相当焦っているらしい。しかし北京に参戦したことによって、再び泥沼化してしまった。


 ところで北京って中国の北東に位置あるんだな。初めて知ったよ。しかも大連に近いし……。でも実際に戦争が起きているのは北京市内ではなく、北京の近く(山西省と内モンゴル自治区)というだけで、北京から結構離れていたりする。東日本をひとくくりに東京と言っているようなものだ。この世界の人間はかなりアバウトだ。いや、外国だから当たり前?


 それとここからが本題だが、EUNから亡命者を保護した。彼女は一般兵士らしいが、いたって健康的だ。やせ細ってはいない。本当に一般兵士なのか?


 これから彼女は参考人として取り調べを受けることになるが、念のためにレオンやセドを除いて俺たちも取調室(というか客室)にいる。彼女の魔質が高いためだ。レオンやセドは怪しいやつがいないか警戒中だ。


「では改めまして。わたしは【EUNオセアニア支部】に所属するで“ディートリンデ・チェルハ”と申します。階級は曹長です。私たちはこれ以上のEUNの蛮行を止めるためにあなた方ホーパステリウムに亡命いたします」


 かなり凛とした女性だ。EUNの軍服がよく似合っていらっしゃる。ちなみに学ランみたいなやつではなく、曹長からはブレザーの制服になっている。軍服の女性か……。こうしてみると……ありだな!


『(……あんた女性をじろじろ見過ぎよ。何?ひとめぼれでもしたの?)』

「(いや~彼女は本当に一般人なのかなって思って)」

『(ほんとうに?)』

「(だって痩せてなかったんだぜ?あの人たちはみんなやせ細っていたというのに……)」


 イヴリーンが疑いの目で見てきたので適当に流す。しかし俺の疑問はみんなと同じなので説得力があまりない。

 しかしなぜホープに亡命してきたのだろうか?まだBSのほうが規模も戦力も上なのに。


「私たちということは、亡命を希望しているのはほかにもいるということかね?」

「はい。私をここに派遣した攻略軍隊長であるアラスター・ヒギンズ大佐らがホープへ亡命を希望しております」

「ではあなた方はなぜBSではなく、ホープを亡命先として選んだのでしょうか?」

「それは我々があなた方に対し、今まで一度も戦火を交えておらず、兵士たちもホープに対して抵抗感が少ないためです。それにホープは今後、勢力拡大の可能性が小さくなく、あらゆる要素を総合的に判断してホープに賭けたほうが賢明であると判断いたしました」


 なるほど。確かに彼らとは一度も戦ってはいない。元EUNだからちょっと信用がないが、ミランダとか、戦ったことのある人ではちょっとギクシャクしそうだ。彼らは軍隊の兵士である以上、上からの頭がおかしいような命令に逆らえないという仕方がない面もあるのだが、犠牲者や遺族は彼らに対する抵抗感は強い。


「フム、では君たちが亡命に至った経緯について話してもらおうか」

「はい。私たちはEUNの兵士として、BSと事を構えてきました。EUNでは、自分たちがやっていることは正義であり、BSが無差別に人を殺していると信じています。実際にEUNのネットワーク情報はすべて偏向的に報道しています」


 なるほど、やはり彼らは偏向報道にいいように操られているんだな。偏向報道って怖いな……


「しかし、オーストラリアで一部の極秘情報が流出しました。その極秘情報の中身はEUNの数々の非人道的な実験の記録や虐殺の記録など、とても正義とはかけ離れているものでした。そのことについてメディアは報道しませんでしたが、ネットや口コミによって世間に広がり、EUNに不信感が生まれました」


 オーストラリアか……。あれはやはりブルースカイの仕業なんだろうな。オセアニア地域は完全にEUN派だったから。


「情報流出?」

「はい。当初は何者かがハッキングを仕掛けたものと思われましたが、外部からセキュリティが破られた形跡が一切ありませんでした。おそらくEUN関係者の可能性が高いですが、結局、犯人は今のところ一切不明です」

「……そうか」


 おや?リーダーの顔が一瞬険しくなった……ような気がした。しかし犯人は不明か……。足のつかない犯行なら、相当腕の立つ人間なのだろう。いったい何者か分からないが、敵に回したくない奴だ。


「EUNとオーストラリア政府は、EUNから独立する運動を展開している人々に、化学兵器等で虐殺を行いました。この一件は、国民の怒りを買うだけでなく、EUNや政府内部からの反感も買い、我々もEUNを見限るきっかけとなりました。ケイン首相は自由平等主義者と名乗る元EUNの兵士に暗殺され、オーストラリアは混乱状態に陥り、やがて【EUNやエルメル帝国】、そして【BS】が介入し、不安定な情勢が続いています」

「なるほど、オーストラリアの混乱はそれが……」


 オーストラリアの件、BSが噛んでいると思ってたけど違うのか。


「私たちは恥ずかしながら偏向報道に操られ、本意ではなかったとはいえ、彼らの蛮行に手を貸してしまいました。その責任をひどく痛感し、ホープ側に回り、世界をより良い方向へ変えていくことが我々の重大な責務であると思って行動に移した次第であります」


 この世界にも蔓延る偏向報道……メディアというものはこれほど厄介なものだったんだな……。フェイクニュースとかもあるし……情報はあると便利だけど、あまり鵜呑みにはできないということだな。


「我々は、彼らに対する情報を入手しており、彼らが日本に攻め込むという作戦行動も事前に察知しております。こちらをご覧ください」


 ディートリンデさんがタブレットをリーダーに手渡した。そのタブレットにおもな作戦内容等が表示されている。

 どうやら敵は横浜を攻め入るつもりらしい。一気に東京を陥落させようとするつもりのようだ。

 相手はEUN本軍。これまでの支部とは違い、機体がやや豪華だ。勿論腕の立つ奴も多い。ちなみにEUNの本部は太平洋のどこかの島にあるようだ。ここらへんは謎の妨害電波のせいで様子を探れない。エルメル帝国は妨害電波の範囲内にある。俺の世界では存在しない島国だ。もしかしたらエルメル帝国にあるのかもしれない。


「しかし日本にはまだ攻め入る準備は整っていないようだな」

「オーストラリアの混乱が収まれば日本に本格的に攻め入るでしょう」

「しかし我々は中華を取るつもりだったんだが……今のうちがいいか?」

「しかしリーダー、彼女が裏切らないという保証がありません。有益な情報を提供していただきましたが、それでも彼らを完全に信用するには至らないかと……」

「ご安心ください。私があなた方の交渉材料として人質となります。それに私が日本に亡命した機体はヒギンズ大佐の機体であります。その機体を失うことは、我が隊の莫大な損失に繋がります」

「ム……」


 なるほど、交渉材料としてディートリンデさんとあのエルクを人質にしたか。流石にそこまでされると、リーダーやソフィアさんですら唸るしかないだろう。しかもあのエルク、どのようなものかは知らないけど、量産型とは違うようだし、曹長の身分とはいくら逆立ちしようが釣り合わなさそうな機体だ。


「ところで君はずいぶんと健康的だが……」


 さて、ここからが本題だ。個人的に一番気になっていたところ。


「私はたまたま上司に恵まれただけであります。ほかの部隊の方々はとても悲惨な生活を強いられていらっしゃいますが……」

「そうか、とても良い上司だな」


『(上司次第でここまで変わる……涙が出てきそうだわ……)』

「(EUNにいったいどれほど良識のある上司がいるんだろうな……?)」


「では、君たちのことを信じよう」

「ありがとうございます」


 ディートリンデさんが深く頭を下げた。特にこの人からは悪い印象はないし俺も信用できる。

 そういうわけで、ホープは亡命者を保護することに決定した。決め手となったのはディートリンデさんが嘘をついているようには見えないことのほかに、エルク、上司の人柄等がよいという点だろう。ほかの亡命者はまた今後ホープに合流する予定らしい。


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