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現代神話のエルカヴァリア  作者: 白卯兎 健太
日本編
30/44

飛騨湖園

 さて、俺たちはいま、岐阜県のとあるアトラクション施設へ遊びに来ている。先日の福岡のミッション終了後、EUNは完全に日本から撤退し、日本全土がついにホープの勢力圏となった。重税に苦しんだ大勢の市民もようやくホープを受け入れてくれたが、EUNに洗脳された一部のプロ市民から、ものすごい反感を買い、EUNの非人道的な証拠を見せてもそれは逆にこちらのねつ造であると否定したり、あいかわらずEUN万歳の政党やマスゴミの捏造放送云々と大変であった。そんな奴らを日本から追放、あるいはその他市民による重圧に屈したりし、比較的平穏を取り戻しつつあった。EUN万歳の連中はどうやら裏でひっそりとEUNから金を受け取っていたらしい……。

 まだ、中国ではBSとEUNのにらみ合いが続いており、日本を気にかける余裕もないようだ。そのため、こちらにもある程度余裕ができ、休日も増えていく。まあ、さすがに全員が休日になることはないがな。もとEUNのホープの一員(日本人数名)も久々に故郷に帰ったりしているようだ。残念ながら俺には故郷なんてないがな。


『キター!遊園地なんて久しぶりだからたっくさん遊びまくるわよ!』

「相変わらずお子さんだな………ちっさいくせに声だけはでけーんだな」

『はあ?何よ糞レオン!あんただって背ちっちゃいくせに、声まで小さいとか救いようがないでしょ!』

「お前よりははるかにマシだボケ………」

『あ~!かわいい女の子相手にボケっつった!天!命令よ!あいつを今すぐしばいて!』

「ハイハイとりあえずお二人さん落ち着いて……」


 自分でかわいい女の子って言うか……?まあそれがイヴリーンらしいといえばらしいけど。


「しかし遊園地なんて久々だな。ホープを建ててから初めてかな?今まではそんな余裕もなかったしね」

「じゃ、最初はどこに行くんだ?やっぱり最初は定番中の定番たるジェットコースターか?」

「それでいい………ちっさなお子様は身長不足で乗れないしな………」

『はあ?私を仲間外れにする気なの糞レオン!あんた!男としての何かが腐りきってるわよ!』

「お前も自称レディとしての自覚がないぞ」

『何が自称よクソガキ!!!』

「はいはい二人ともケンカはそこまで!……子供か……」


 思わずため息が出てしまう。


「ジェットコースターに乗る?でもイヴリーン乗れないか……?120センチもないよなあ?」

『大丈夫よ!私小さくなれるから!天のパーカーの中にいればいいから!』

「お!ばれなきゃいいの精神か!今日からイヴリーンも俺たちの仲間だな!」

『ギクッ!で、でもあんたたちよりはましだと思うわよ…』アセアセ

「ギクッ!……て、わざわざ口で言うのか……。そういえば小さくなれるんだっけ?でも吹っ飛ばされないか?」

「こいつ幽霊だから吹っ飛ばされても浮くぞ」

『だから幽霊じゃないって言ってんの!何回言えばわかるのよ!あんたの脳みそ脂肪でできてんの?逆にあんたを吹っ飛ばしてあげようか?』

「わ~やめやめ!こんなところで魔法ぶっ放そうとしてんじゃねーよ!警察に捕まるぞ」


 そう、むやみやたらと攻撃魔法をぶっ放してはいけません。法律で魔法の種類にもよるが、10~200万以下の罰金または、懲役一ヶ月~二年以下です。まったく、これだからお子様は短気だから……。まあ、レオンがいちいち突っかかってくるからな。


 まずはジェットコースターに乗ることに。ふつうはイヴリーンは乗れないが、ばれなきゃいいの精神で……よい子のみんなはマネするなよ!


 ところで俺、実は今までジェットコースターに乗ったことないんだよね……。みんな絶叫してるし。俺、高所恐怖症なのかどうかはわからないけど、結構地面から離れているところを眺めたら、心臓ほんのちょっとバクバクする。


 ジェットコースターに初乗車。意外と座り心地がいい?発車まであと一分だ。


『すごいわくわくするね!』

「俺は乗ったことないからめちゃくちゃ緊張してる……」

『あはは!頑張りな天!』


 イヴリーンは気楽でいいな。精霊魔法で接着剤のごとくくっついているから落ちることはない……らしい。せこい……。


「天は初めてなの~?実は私も初めてなの~。楽しみね(笑)」

「楽しみ……なのね」

「ん?どうしたんだセシル?お前顔真っ青だぞ」

「アハハ……実は初めて乗った時、吐いたことあるんだよね……」

「「「「『え!?』」」」」


 驚愕の事実発覚!あのイケメン君だったセシルの過去が……。意外過ぎて俺だけでなくみんなもびっくりし、固まっているようだ。

 変な空気を感じながらジェットコースターが動き出した。

 最初はゆっくりと景色を楽しめる。意外といい眺めだ。飛騨山脈やそのふもとにある飛騨湖(多分この世界固有の湖?)、そのほかの小さな湖を一望できる。ほんといい眺め。そしてだんだんとスピードを上げて……かと思ったら上り坂でゆっくりと昇っていく。


「……た、高過ぎね?」

「…………」

「テンション上がるな………」

「上がってんのそれ?」

「おお~ちょっと怖いかも(笑)」

『天!頑張ってね(笑)』


 意外と高いぞ……。セシルは明後日の方向を向いて……しかも顔が引きつっている。道理でさっきから無口だったんだな。過去がトラウマになっているのかも。

 そして頂点に上がり、だんだんスピードを上げてきた。そして下り坂で猛スピード!


「ぎゃああああああああ!!!」

『きゃああああああ!!!』

「寒い……」

「おお!速い速い!(笑)」

「うおおおおお!さすがにビビるなこれ!」

「春先はちょっと辛いな………」


 みんなの反応は様々だ。俺みたいに普通にビビる者、時期が時期だけに寒がっている者、純粋に楽しんでいる者……。さらにぐるぐる回転しまくって……ようやく乗り場に到着した。ずいぶん長く感じたよ……。


「ああ……普通に怖かったし、ちびるかと思ったよ…。ちびらなくてよかった……」

「いや~楽しかったわね~!」

「できれば夏ぐらいに行きたかったな!」

「今でもテンション上がりまくりだ………」

「……テンション上がってんのそれ?」


 レオンがテンション上がっているところを俺は見たことがない。今テンション上がっているらしいけど表情は相変わらず眠そうな顔だ。口調もいつも通り。


「れ、レオンはポーカーフェイスなんだから許してあげて(笑)」

「ああ、そう……」

「テンション上がるのはわかるぜ!俺も久々に興奮しちまって鼻血が止まらねえぜ!」

「何に興奮したんだよお前!?え?何!?いったいジェットコースターのどこに興奮する要素が!?」

「セド……たぶんその興奮と通常の興奮とはちょっと違うと思うよ……」


 汚ね~こいつ……鼻血が滝のごとく流れてる。出血多量じゃない?止血しなくて大丈夫?あ、ティッシュで鼻血を抑えようとしている。


「いや~俺ってジェットコースターに乗るとエロい妄想をするんだ……」

「知らねーよ!」

「ほら、女の子がジェットコースターでおっぱいが揺れる妄想とか……」

「どんな妄想だ!マラソンならまだ分かるけど」

『………』


 イヴリーンが俺のポケットからフラ~と出てきた……。なんか不安定な飛び方だ。どうしたんだ?


『……ねえ、ビニール袋ない?』

「あるけど……はい」

『………おええ………』

「え……」

「………フッ」


 吐いた……。大丈夫かイヴリーン?最初あんなに元気だったのに数分経てばもうこんな感じか……。意外と大丈夫だったセシルが背中をさすってあげている。きっと過去の自分と重ねて、同情してしまったのだろう……多分。しかし、精霊が吐くなんてな……。因みにレオンは鼻で笑っている。

 なお、この一件以降、イヴリーンはジェットコースター恐怖症となぜか高所恐怖症になった。精霊は飛べるし浮くから転落死はないはずだが……高所恐怖症って……。記憶がフラッシュバックでもするのか?


 そのあと、様々なアトラクションを楽しんだ。スワンに乗るとき、イヴリーンがレオンを強風で湖(飛騨湖ではないほうの小さな湖)に落としたとかなんとかあったが……。


 そしてちょっと変わったイベント。飛騨湖で“カミツキウオ”なる魔物狩りが月に一度行われており、今日がその日だ。

 飛騨湖には、外来種であるカミツキウオ(ギャングフィッシュ)が数を大きく増やしている。それだけならまだいいが(在来種を食い散らかすので全然よくない)、問題はこいつが宙に浮くことである。

 ほら、RPGをやったことがある人ならわかるだろうが、戦闘シーンで魚などのモンスターが宙に浮いて勇者一行を襲い掛かるやつである。船の上でも、浜辺でも、あるいはその他の場所でも……。

 そいつらが農村や川に現れて人や農作物に被害が出てしまう。そうなる前に魔物狩りを行うというわけだ。カミツキウオはドロップアイテムのレア度が高く、ハンターにとっては人気の魔物だ。さらにこいつは食える。狩った後、主催者側に一匹200円で売れる。ただこいつは狂暴(Dクラス)なので、それなりの腕前でないと最悪死ぬこともある。この世界もかつて存在していたらしいギルドで依頼を請け負う冒険者みたいなものだな。

 それで俺はもちろん参加することにした…というよりかは、させられた。

 魔物の戦闘は初めてだ。カミツキウオは牙がやばいから噛みつかれたら超痛そうだが……。防御魔法をかけまくってどうにかしよう。結界符があればもっと安心なんだけどなあ……。


『さあ、いっぱい狩りまくっておこずかいがっぽり稼ぐよ!』

「なんだお前、もう元気か?さすがは亡霊だな。一度くたばっても………」

『私は亡霊じゃないわよ!あんたなんか弱っちい奴から横取りしかできないハイエナ野郎のくせに!』

「ハイエナに近いのはセドリックだぞ………」

『見た目じゃなく、性格のことを言ってんのよ!』

「イヴリーンは戦えるのか?」

『当り前よ!私は森の精霊なのよ!水生生物ごとき、私の種マシ〇ガンで効果抜群よ!』

「お前のゲロのほうがもっと効果抜群だとおも――」


 イヴリーンは風の魔法でレオンを吹き飛ばした……しかも湖のほうへ……。容赦なく人のトラウマをほじくりまくるレオンハルト君。余計なことばっかり言うから……。しかしイヴリーンも飛ばし過ぎない?みんな顔が引きつってるよ……。


「まあ、今のはレオンの自業自得だね……」

「しかし結構飛ばしたなイヴリーン!」

『そう!これが私の実力よ!』

「褒めるとすぐこれだよ……」

「ところでレオンは泳げるの~?」

「泳げるよ」


 いや、泳げるとかそういう問題ではないと思うのだが……。しかもセシルまでボケてるし……。結構湖の奥のほうへ飛ばされていったぞ……。大丈夫?カミツキウオに噛まれてない?……と思ったら、湖の真ん中に竜巻が発生!そしてカミツキウオがイヴリーンに向かって飛ばされていく……


『え……?きゃあ!』


 あの竜巻を発生させたのはどうやらレオンの仕業のようだ。レオンは魔法を巧みに操り、逃げ回るイヴリーンにカミツキウオを飛ばしている……何あれすげえ……。


『ちょっと!感心してないで私を助けて!』

「あ、はいはいはい」


 仕方がないのでカミツキウオを攻撃魔法で狩りまくる。イヴリーンも竜巻を起こしてカミツキウオを……て俺も吸い込まれてるし!


「ちょ!待て待てイヴリーン!俺まで巻き込むな――」

『馬鹿レオンにプレゼントをくれてやるわ!』

「そんなひ弱な精霊術でこの俺と勝負する気か?いいだろう………なら俺の本気を見せてやる」


 レオンとイヴリーンの激しい雪合戦ならぬ、カミツキウオ合戦!あとついでに俺を含め巻き込まれた数十名も飛ばされている。やべえ、目が回る……。


ポイポイポイポイ……


「「「「「「「「『『『ぎゃあああああああああ!!!』』』」」」」」」」」


 ついでに俺を含む巻き込まれた者たちの悲鳴の大合唱。竜巻から逃れたカミツキウオは弱り果てたところ……


「お、ラッキー!カミツキウオ狩り放題じゃねーか!」

「やったーお小遣いお小遣い………」

「あの二人滅茶苦茶じゃん……しかも天や固有種も巻き込んでいるし(苦笑)」


 こうして通りすがりの冒険者に狩られるのである。




*********

『ちょっと!馬鹿レオンのせいで出禁食らったじゃない!どうしてくれんのよ~』

「お前だけじゃないし、俺も食らったから文句言うな………」

『ムッカついたわ!呪ってやる!南無南無チーン、南無南無チーン……』

「まあまあ二人とも落ち着いて……」


 セシルが二人をなだめる。てか、南無南無チーン……て何?精霊語?つうか、ここだけ日本語かよ。

 こいつら二人のせいで飛騨湖を荒らしてしまい、罰金を払う羽目になったよ……。高かったけど大量にカミツキウオが取れ、さらにドロップアイテムの中には売れば1万以上の代物プレミアムレアアイテムが何個かあったため、1400円程度のダメージだが……。イヴリーンとレオンは飛騨湖でのカミツキウオ狩りは出禁になった。しかし根こそぎ狩りまくったためにカミツキウオ狩りはこれを機に行われなくなったのは後の話。さらにこの二人はSNSを中心にいろんな意味で有名になったのも、後の話。


「いや~今日は楽しんだわね~」

「夏に行きたかったなジェットコースター!」

「まだ言ってんの……。しかも人狼族だし寒さに強いんじゃ……」

「………」

『………』

「二人とも萎えずに元気出せよ、セドみたいに」

『(天……なんで私の呪いがあいつに一切効いていないの?)』

「(あんなでたらめな呪いじゃ効くわけないだろ)」


 なんて話していると……


プルルルルル……


「……?ソフィアさんか……もしもし」


 ソフィアさんからセシルに電話をかけてきた。何かあったのだろうか?


「……はい、わかりました」

「なんの電話だったの~?」

「緊急事態だ……EUN派と思われるテロリストが市民を人質に関空を占拠しているようだ」

「人騒がせな連中だな!さっさと一掃……おわあ!」ドスン!

「『あ』」


 セドリックが何もないところで盛大にこけた。大丈夫か?


「おい、イヴリーンの呪いじゃないのか……?」

『わ、私レオンにかけたはず……』









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~イヴペディア~

*カミツキウオ(ギャングフィッシュ)・・・凶暴だがドロップアイテム的にハンターから人気がある。噛みつく攻撃や水、氷系統の魔法を唱えてくる。

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