胸糞悪い夢
遅くなりました。申し訳ありません。
何もない真っ白な空間。気が付いたら俺はここにいた。どこだろうここは……?俺の体すら見えない真っ白な空間……というか、俺の体がない。ラノベなどで言う魂だけの状態に当たるのだろう。
しばらくすると前方から青い光が見えた。体はなくとも動くことはできるようだ。青い光に近づくと、結晶があった。結晶をしばらく見つめると、急に光り輝きだした。
「うわ!眩し!」
***
「………ナ!マ……ナ!…リーナァァァァ!!!」
「カルラ……セシリア……!?どうしてここに……?」
……ここは?
周りの景色を見てみると中世のヨーロッパのような街並みが広がっていた。声や景色がだんだんと鮮明になっていく。今、自分が見ているのは、どこかの広場だ。そしてその広場の中央には、絞首台があった……
「死ね!国に災いをもたらす堕ち神め!」
「我らエルメルに仇なす堕ち神が!」
「早く死になさいよ!堕ち神!」
周りの民衆が絞首台へ連行されている赤髪の女性に対して容赦ない罵詈雑言を浴びせて石を投げている。堕ち神とは、俺らの世界で言う魔女のようなものか……?
連行されている女性は拷問を受けた後だろうか、体のあちこちに鞭で打たれたような、見るだけでもつらくなるようなひどい傷跡があった。しかしそれでも美しい女性だった。絶世の美女とは彼女のことを言うのだろう。見たところ、身長も女性としては高めだし、何より素晴らしいお胸様をお持ちでいらっしゃる。爆乳クラスかな……?おそらくHカップなんだろう。
彼女は後ろ手に縛られて、二人の兵士に絞首台へ連行されている途中で、二人の青髪の少女が彼女を呼び止めている。
「マリーナ!待ってて!今助けるから!」
「二人とも来てはだめ!私のために死んではいけない!」
「いやよ!お姉さま!お姉さまは何も悪くないのに!」
「そうよ!こんなの…て……こんなのって、おかしいよ!」
二人の少女が女性のもとへ駆けていく。
「ええい!二人のクソガキを捕らえろ!」
「「「ハ!」」」
……何……?少女に対してクソガキとはいい度胸してんなあのハゲ!一発ぶん殴ってやる!……ていっても今の俺は体がないようなのでどうしようもない……。ついでにそんな度胸もないしな……。
民衆が投げた石は俺の体をすり抜けて女性、マリーナさんに当たる。
兵士たちが少女の前に立ちはだかり、捕らえようとする。
「お前たちなんかに捕まってたまるか!」
少女たちが”鎌鼬の符”や”火炎符”を唱え、兵士に攻撃する。すると兵士たちが”結界の符”を唱え、攻撃を防ぐ。そして兵士たちは、様々な魔法を唱え、反撃する。少女たちはそれを結界で防ぐものの、背後から外野が”結界解除の符”を放たれ、結界が解除された。兵士たちは少女たちに容赦なく、蹴りを放ち、床に叩きつけ、殴る。
『うわ!なんて奴らだ!少女相手に大の男がマジになってる……!』
「カルラ!セシリア!やめてお願い!もうやめて!!!」
マリーナさんは連行されながらとても悲痛な声で叫ぶ。それでも兵士……いや、大人気ない民衆を含めた糞どもは少女たちに容赦なく危害を加える。
「もうやめて!お願い!!!」
「「「殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!」」」
民衆からは投げ石と殺せコール。そしてついにマリーナさんが絞首台に立ち、目隠しをされる。どうしよ……俺、この糞どもを逆につるしたい……。マリーナさんの首に縄がかけられる。その時、マリーナさんは口を開けて何かを喋った。喋ったというより歌を歌っているのかな……?とにかく糞民衆の殺せコールがうるさくてこちらには聞こえない。黙れお前ら!お前らが死ねよ!
すると少女たちの体が青く光り、やがてそこには少女たちはいなくなった。景色がまた青く輝く。すると絞首台のほうから、がたんと音が聞こえた。
マリーナさんは助からなかったのか……。
*********
「う~ん……ここは?」
知ってる天井だ……。ってこれ、2回目だな……。そうか、俺また気絶したのか……。しかし今日はなんか胸糞悪い夢を見たもんだ。
『天!良かった……気が付いたのね……』
「おはようイヴリーン。あれから何日経った?」
『3日よ』
3日か……以前よりは短いな。
『どうしたの天?なんか気分があまりよくないけど……て、そうか、病み上がりだからまだ気分がよくないんだよね』
「いや、まあそれもあるだろうが、胸糞悪い夢を見たんだ」
『胸糞悪い夢?』
「ごめんなイヴリーン。また面倒をかけてしまって」
『ううん、別にいいわ。ヴァリアントの覚醒は体の負担が大きいって聞いて聞いたし、天の場合はまだ慣れていないのかもね。フォースがセカンドやサードよりも負担が大きいという可能性もあるのだけれど』
「あれ?イヴリーンにしてはやけに優しいな」
『“にしては”は、余計よ!』
「ごめんごめん(笑)」
俺とイヴリーンはしばらく雑談していると、セシルたちが部屋に入ってきた。
「目が覚めたのか天……お疲れ。大丈夫?何か体に異変だとかは?」
「ああ、なんとかな」
「それはよかったぜ!」
「そうそう、これは副作用の物なのか、アビリティの物なのかわからないんだけど、今日、変な夢を見たんだ」
「変な夢?」
俺が先ほど見た夢の内容をみんなに話した。話すたびになんか萎えてくるんだけど………。
「何!?幼女をフルボッコにするなんて腐ったやつらだな!まるでEUNのようだ」
「だがその話は実際にかつてのエルメルで起こった話だな……700年前の出来事だと思うが……」
「ただの夢……ではないのか?それにしては内容もなんか生々しかったけど……」
「ただの夢ではないと思う。……自信ないけど……。いやでも俺、エルメルの中世時代とか知らないよ?」
「そうか……ならヴァリアントが何かしら関係あるだろうな……。前回も何か見た?」
「いや、前回は何も……」
「でも不思議ね~。赤髪でマリーナといえば、“マリーナ・アルブランク”のことで間違いないと思うけど、歌にマナをのせて歌うだなんて聞いたことないよ~」
「マリーナ・アルブランクは不思議な力の持ち主だったって有名だけど、天の見た夢が実際の過去を映した夢なら、あれ本当のことなのかもしれないね」
「でもなんでマリーナは処刑されたんだ?見たところとても悪そうには見えなかったんだけど」
「いろいろと諸説はあるけれど……有力な説としては彼女には不思議な力があり、それを恐れた王族貴族、神職者が彼女を陥れたという説。あるいは王子が彼女に一目惚れをし、貴族の娘たちから嫉妬を受け、彼女を陥れたか……。俺は後者派だが、天の夢の出来事を聞く限り前者も可能性が出てきたな」
『ひどい話ね……』
「ね、天。真相を明らかにするためにもう一度寝てくれない~?」
「え!?また寝るの!?」
「もういいじゃん、また今度」
ちなみにマリーナに一目ぼれをし、何度も彼女をパーティーに誘ったという当時の王子の日記が見つかっている。そのため貴族の娘嫉妬説を支持する人が多い。ただ当時は情報が少ないということもあって本当に不思議な力があると信じている人も多かったらしいので不思議な力説も支持している人も少なくない。どちらにせよ、彼女の存在が気に食わない人物が彼女を陥れたのは間違いない。ほんと最悪だな。性格悪いわ。
「それに当時の裁判も相当滅茶苦茶だったらしいし、あることないことを適当に言って死刑を出したらしいな!」
「中世の裁判なんて所詮そんなもんだろ………。上の人間が適当にデマさえ流せば民衆はそれを信じ、被疑者に対し、疑心暗鬼になるもんだ………」
やはりここも俺たちの世界で言う魔女狩りが行われていたのだろう。やはり情報が少ないと民衆は不気味な要素に敏感になるのだろうな……。
「そうそう、噂によればEUNの一部の裁判では弁護士なしの裁判が行われているらしいな……」
『え!?ちょっとそれ酷くない!?』
「あくまで噂だ……SNSで今日見かけた」
「でもEUNだからあり得そうだよな……EUNに逆らった人間は、死刑もしくは消息不明になってる人も多いくらいだし……」
「それはやばいよな……」
「俺たちがBSにいた頃も仲間が何人か捕まった。大半が死刑になったけど……」
セシルが悲しげにそうつぶやく。ほんとEUNなんでもやり放題だな……早くあいつらを何とかしないと……。
「あ!不思議な能力といえば明ちゃんだよね~明ちゃんのアホ毛(笑)」
「え!?アホ毛……?」
「明ちゃんのアホ毛も副作用で間違いないだろうけど、あれはすごかったな……」
『え!?なになに~!ききたい!』
「明ちゃんの頭に顔が普通にかかるアホ毛があるんだけど、アホ毛って自由自在に動かせるんだよ。でももっと驚くべきことは」
「私のはさみで明ちゃんのアホ毛を切ろうとしたらなぜか私のはさみが折れたの~(泣)しかも一度ならずに五度までも」
「『ええ!!!』」
「あれは本当に笑ったぜ!」
「しかもアホ毛はぴんぴんの無傷……」
「どうなってんだよそのアホ毛!?」
俺が知る限りそんなアホ毛は知らないんだけど……。
「まあ、その話はあとにして、飯食おうぜ!」
「そうだな~腹減ったし」
『ご飯は私たちが持ってくるわよ。天はここで休んでて』
「ああ、ありがとうみんな」
グゥ~………
俺の腹の虫が鳴り、みんなが笑った。そして俺たちは夕食の時間に明ちゃんやほかのBSの奴の秘密(一部悪口)について語り合った。
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~イヴペディア~
*中世当時はエルメル帝国ではなく、エルメル王国だった。
*ちなみに明ちゃんのアホ毛は45センチもあるらしい。
*ソランジュは美容師になるのが夢のようだ。




