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一年隠されていた事実

こんにちは。僕は日本人ではありません。日本語勉強中です。何か間違いや誤りがあるかもしれません。その時はどうかご容赦ください!

これは僕の初めての小説であり、連載小説でもあります。これから一生懸命に、週1回新しい話を投稿するように頑張ります。

よろしくお願いいたします!ぜひ感想を聞かせてください!

 目を開けると、約二メートル先には、雪で覆われたかのような白い天井があった。辺りを見回すと、僕を取り巻いていたのは、十七年間の人生を過ごしたあの部屋と同じものだった。しかし、ただ一つだけ違いがあった――机の上には、見慣れた教科書の代わりに、重みで今にも崩れ落ちそうな、本の大きな山が積まれていた。ここに来てから、目覚まし時計の音なしで起きることが、僕にとって非常に慣れ親しんだことになり、もし誰かに明日は決まった時間に起きなければならないと言われたら、約束を破る方を選ぶだろうが、決して目覚まし時計はセットしないだろう。あの何年もそれを使っていた日々を思い出すと、全身に鳥肌が立った――それほどまでに、その道具は僕にとって望まないものだった。


 部屋を出て階段を下りると、大きなリビングに出た。そこでは別の人物が既に僕を待っていた。


「やっと起きたか?ずいぶん長く寝てたじゃないか!」


「ああ、すみません。」


「ハハ。わしに謝る必要はないよ。ただ早く朝食を用意してくれ。お腹が空いて仕方ないんだ。」


「わかりました。すぐにやります。」


 僕がここにいる間、僕の仕事は食事の準備、家の掃除、そしてこの家に住む人物――坂本(さかもと)優真(ゆま)の世話をすることだ。


「ところで、ヒロくん。今日で君がここに住んでちょうど一年になるね。」


「本当ですか?」


「うん、そろそろ話してくれないか、いったいどうやってここに辿り着いたのかをね。」


 僕がしていることの代わりに、坂本さんは僕がこの家に住むことを許し、「芸術対策」にも革命軍にも引き渡さないでくれている。今、両組織とも僕を積極的に探している。「芸術対策」は僕をそれほど見つけたがっており、全国の全ての都市に僕の「肖像」を記載し、僕の居場所に関する情報の代わりに報奨金が渡している。彼らがこんなことをしたのは初めてだ。最も危険な犯罪者や猟奇殺人者が逃げた時でさえ、その写真を貼り出すことはなかった。一方、将軍率いる革命軍は、「芸術対策」が僕を捕まえるのを妨害しようと全力を尽くしている。


「まだお話ししていませんでしたっけ?」


「君は幼稚園児でも信じないような、支離滅裂な言い訳を考え出しただけだよ。」


「申し訳ございません。」


「だから、わしに謝る必要はない。君はわしたちが約束した全ての条件を優秀に遂行している。その代わりに、わしは君に屋根を提供し、この家にある全ての本、音楽、絵画を自由に使う権利を与えている。」


「ありがとうございます」


「しかし、死ぬ前にはやはり知りたいものだ。どうやってここに辿り着き、なぜ「芸術対策」が、この国が存在して以来の最も凶悪な犯罪者のように君を探しているのかをね。」


「死ぬ前だなんて。そんな言い方はやめてください、坂本さんはまだまだ長生きしますよ、僕よりも。」


「ハハハ。それもそうだな!でも、もし話してくれなかったら、好奇心で死んでしまうかもしれないぞ!」


「ハハ。わかりました。では今夜、用事が済み次第、夕食の間で必ずお話しします。」


「おお!ようやくか!期待しているぞ!」


 朝食を料理する。この365日で、僕の作る料理は格段に美味しくなった。食べ終わって坂本さんは薬を飲む必要があったので、それを手伝い、彼の部屋に寝かせた。それが終わると、僕は自分の「書斎」へ行った。そこでは昨日から本の山が僕を待っていた。その中から昨日読みかけだった本を見つけて残りの百ページを読み終えた。この本は、他の本とは違って、ほとんど何の印象も残さなかった。面白いとも、文化にとって価値があるとも思わなかった。先ほど朝食を食べたリビングに下りると、MP3プレーヤーを手に取り、音楽を聴きながら、この本が、これまで読んだ他の本と何が違うのかを理解しようと試みた。面白いと感じた他の本にはあって、この本にはないものは何だろう?それらの間の決定的な違いは何か?ある本を面白くし、別の本をそうでなくするものは何か?僕の本を世界で一番面白くするためには、何をすべきか?この自問自答を初めてしてたことではなかった。前回、僕はこれらの問いに正しい答えを見つけることができなかった。今日も同じだった。その日の残り全てを本について考え、音楽を聴いて過ごしたが、探しているものを見つけることはできなかった。窓の外を見ると、そこはもう夕方だった。僕は坂本さんの部屋へ行き、夕食を準備するつもりだと伝えた。


「おお!ようやく時間が来たか。」


「はいはい。行きましょう。」


 リビングに戻ると、それはキッチンとつながっていた。僕は冷蔵庫にある食材で夕食の準備を始めた。そして坂本さんはそれに合わせて、なぜ僕がここに辿り着いたのかを尋ね始めた。


「ヒロくん、なぜわしの家に来たんだ?」


「この家窓から中を覗いたら、坂本さんが見えて、すぐに芸術愛好家のサークルに所属していると分かりました。」


「え?しかし、どうやってそれが分かったんだ?もしかしてどこかに本が置いてあったのか?」


「いえ、そういうことではありません。僕は芸術を知っている人の顔だけが見えるんです。」


「何?どういうことだ?」


「ええと、それはおそらく長い話で、どう説明すればいいのか僕にも分かりません。」


「そうか。わかった。では、なぜ「芸術対策」が君を探しているんだ?何をやらかした?」


「それも僕自身、完全には理解していません。しかし、それは僕の祖父が革命軍の創設者だったことと関係があるはずです。」


「何?ちょっと待て、君は光川将司(みつかわまさし)の孫なのか?」


「はい。ご存知でしたか?」


「知ってるも何も、彼はわしの親友だったんだ!」


「え?本当ですか?」


「なぜもっと早く言わなかったんだ?わしたちにはこんなにも多くの共通点があったなんて!」


「そういうことでしたか、すみません。」


「謝罪は、わしが、君に起こったことを話して一つも疑問が残っていない後で受け入れよう。」


「わかりました。では、おそらく最初から話さなければなりませんね。」


「さあ、しっかり聞くよ。」


 その後、僕は坂本さんに自分の全ての話をした。初めて本を読んだあの日から、革命軍からトラックで逃げ出したあの日まで、僕に起こった全てのことを。ただ一つ、僕が隠したのは、全ての人々の名前だった。それらは意図的に口に出さなかった。僕は、逃げ出した瞬間から経験してきたそれらの出来事を思い出したのはこれが初めてだった。それ以上傷つかないように、わざとこれらの記憶を呼び起こしたくなかった。ただそれらを封印し、自分の奥深くにしまっておきたかった。僕の話の途中、坂本さんは、話に矛盾や不明瞭な点があった時、質問をしていた。そして最後の方になって、彼には一つだけ理解できない点があった。


「そのトラックはどうしたんだ?もしこの小さな町のどこかに駐車したなら、すぐに見つかっていただろう。」


「はい、棒もそう思いました。だから、逃げた後、僕は可能な限り遠くまで道に沿って走り続けました。走っている間、僕は三つの小さな町を通り過ぎました。最後の町には夜明け過ぎに着き、ほとんどの人々が仕事に行っていました。そのため、僕のトラックは多くの注目を集めました。彼らの誰も、そのような車を以前に見たことがなかったからです。町で自動車修理サービスを見つけ、そこに車を入れました。そこで、自分のトラックを、かなり古いがまだ動く別の車と交換することに難なく同意しました。さらに、できるだけ遠くへ行けるだけの十分なガソリンを頼みました。車のトランクがガソリンタンクで一杯になり、もう入らなくなった時、旅の途中で飢え死にしないように、彼らに食べ物を頼みました。それから反対方向へ向かいました。数日の旅の後、僕はこの町に辿り着き、坂本さんを見つけました。」


「なるほどな。しかし、君はしっかり考えているじゃないか。」


「ありがと。」


「それによく初めてなのに運転できたな。」


「そうですね。僕自分誰よりも驚きました。これで、もう質問はなくなりましたか?」


 今はもう真夜中で、ようやく眠らせてくれるだろうと切に願いながら。しかし、僕の願いは、僕の少なくとも四倍は年上の、僕よりもはるかに睡眠を必要としているはずのこの人の、たった一言によって打ち砕かれた。しかし、坂本さんの体内のアドレナリンは、彼が一瞬たりとも目を閉じることを許さなかった――それほどまでに、僕の話は坂本さんにとって面白かったのだ。


「もちろん残ってるよ!」


「お聞きします...」


「なんだか元気がないな。とても面白い話じゃないか!それとも、わしのような年寄りに時間を割きたくないのか?」


「いいえ、いいえ。とんでもないです。全くそんなことはありません。ただ、正直なところ、もう眠いんです。」


「ああ、そういうことか。もう少しだけ我慢しておくれ、いいかい?」


「はい。」


「ヒロくんがわしを見つけた方法について。君は芸術に精通している人の顔だけが見えると言ったね。それはどういう意味だ?」


「うーん...それは説明するのがとても難しいです。僕自身、まだそれがどのように機能するのか完全には理解していません。例えば、僕はいつも両親の顔を見ることができましたが、ある時から徐々にぼやけてきて、黒いマジックで塗りつぶされるようになりました。」


「マジックで?」


「僕は少年の時、たった五人の人の顔しか見ることができませんでした――僕の祖父、父、母、祖母、そしてかつての親友です。親の顔は生まれた時から見えていました。しかし、親友の顔は最初、周りの他の全ての人々の顔と同じでした。僕は誰が誰だか区別できませんでした。目の前の全ての人の顔は同じに見えました。黒いマジックで塗りつぶされていたのです。しかし、彼と話すうちに、僕たちは親密になり、最終的に彼の顔を見ることができるようになりました。彼は決して芸術に精通していなかったにもかかわらず、それでも彼の顔を見ることができました。だから、それが正確にどのように機能するのか、完全には確信が持てません。しかし、初めて人を見て、すぐにその人の顔を認識できるなら、それはただ一つを意味します。その人が芸術に精通しているということです。」


「ああ、そういうことか。少しはっきりしたよ。しかし、合宿でヒロくんの顔が見えなかったというそのパティシエはどうなんだ?彼も芸術に精通していたよね。なぜ彼の顔は塗りつぶされていたんだ?」


「それも僕自身、まだ理解できていません。もしかすると、何か例外があるのかもしれません。」


「そうかもねぇな...」


 これらの言葉の後、この長い夜の会話の中で初めて、僕とは対照的に、坂本さんが欠伸をした。僕はというと、話している間に何十回も欠伸をしていたほど眠かった。しかし、椅子に座っているこの老人は、僕の話がそれほど面白かったのか、窓の外に最初の日の光が差し込んでようやく、眠たいという最初のサインを見せた。


「坂本さん、こんなに遅くに寝るのは体に悪いですよ。さあ、ベッドに行きましょう。」


「そうだな。行こう。」


 坂本さんを部屋に連れて行き、寝かせると、僕もようやく自分の体の睡眠欲求を満たす機会を得て、自分の部屋に戻り、机の上の本には触れずに、まっすぐベッドへ向かった。


 こんなに騒がしい夜の後、次の日は一日中何もせずに眠りたいと強く思った。しかし、それは許されなかった。この一年で初めて、僕は目覚まし時計をセットしなければならなかった。さもなければ本当に夕方近くまで起きられなかっただろう。しかし、坂本さんは毎日同じ時間に薬を飲まなければならないので、僕は眠りについて数時間後に起きて、朝食を料理し、家主を起こした。横になっていない間、僕はただ一つのことだけを考えていた。それはどうやって早く用事を済ませて、暖かくて柔らかいベッドに戻るか。しかし、驚いたことに、二階の自分の部屋に上がると、眠気はどこかへ消え去っていた。もう眠りたくはなかった。自分の体が嘘をついているに違いないと思って、それでも眠ろうと試みたが、その試しは成功しなかった。約三十分間、ベッドでゴロゴロしながら時間を無駄にした後、僕は「仕事場」に戻り、芸術の勉強を続けた。今日という日に、僕は一冊の本を読み終え、次の本を読み始めることができた。図書館にある未読の本の数は、日を追うごとに減っていった。数週間ぶりに図書館に行くことに決め、この間に読み終えた全ての本を返却し、新しい本を借りるために、僕は隣の部屋へ向かった。そこは本で天井まで一杯に埋め尽くされていた。


 ついに、一年を経て、僕は最後の本棚にたどり着いた。それは、ここにいる意味が来月中にはなくなることを意味していた。聴くことのできる全ての音楽は、もう何百回も聴いた。屋根裏にある全ての絵画は、何百時間もかけて鑑賞した。残すは本を読み終えることだけだ。そうすれば別の家に行ける――そう思っていたのは、坂本さんの家に住み始めて最初の数週間のことだった。しかし今、僕たちの間に感情的な絆が生まれ、それだけではない繋がりもできた今、僕は坂本さんを一人で残していくことはできない。彼の話によると、結婚して夫と共に首都に移り住んだ娘がいて、そこに娘が生まれた。彼らは家族全員で、少なくとも月に一度は坂本さんを訪ねていた。しかし、僕がここに住むようになってから、彼らに一度も会っていない。だから、もし坂本さんが一人で生きていけないと知りながら、そう簡単に一人で残していくわけにはいかない。坂本さんはもうかなりの高齢で、家の中を動き回るのも困難だ。そのため、僕は、感謝の気持ちとして、最後の瞬間までここに留まる決心をした。


 そして再び夕方になった。僕たちがいつもリビングに集まり、僕が料理し始めた。


「ヒロくん!」


「はい?何なんですか」


「ただ、思い出したことがあってね。昨日、君が砂の上に絵を描いたと言っていたね?」


「はい。もちろん覚えています。」


「わしにも描いてくれないか?」


「坂本さんを描くのですか?」


「ハハ。いや、違うよ。わしは毎日鏡で自分の顔を見ている。君が好きになったあの少女を描いておくれ。」


「わかりました。では夕食が終わったら、必ず描きます!」


「ありがとう。」


 夕食を終え、約束通り、僕は紀美子(きみこ)の肖像を描き始めた。正直なところ、僕自身も以前から彼女を描きたいと思っていたが、なかなか手がつけられずにいた。そして今、きっかけができたのだから、先延ばしにする意味はなくなった。僕が絵を描いている間、坂本さんは、僕の祖父との思い出の若かりし頃の話をしてくれた。


 どうやら彼らは大学一年生の時に出会ったらしい。そしてその瞬間から友人になった。当時は、他の芸術と同様に、本も既に禁止されていた。正確に言うと、それは僕の祖父が六歳くらいの時に禁止されたのだ。そのため、彼はその出来事をあまり覚えていないが、自分の両親が常に芸術を大切にし、それを人類の宝と考えていたことをはっきりと覚えている。そのおかげで、僕のじいちゃんと坂本さんはすぐに意気投合し、様々な本を読んだり、絵画を鑑賞したりして、多くの時間を一緒に過ごすようになった。


「ヒロくんの祖父は、本当にやんちゃな奴だったよ。将司くんはいつも何か厄介ごとに巻き込まれて、わしは彼を助けなければならなかった!」


「え?本当ですか?そんな風にはとても思えません!」


「まあ、年を取れば、落ち着きも出てくるんだろうな。ハハ。」


 坂本さんは若かりし頃のじいちゃんの話をし、僕は覚えていて知っている祖父の話をした。それはあまりにも相反する、異なる二人の人間だったので、僕たちは本当に同じ人について話しているのか、それとも二人の別の人間について話しているのか疑い始めた。しかし、坂本さんは、それが本当に僕の祖父だと断言して、その疑いをすぐに晴らした。


「わしが最後に将司くんに会って話したのは、ヒロくんが生まれるずっと前のことだ。その時、彼の息子はまだ小学校に通っていた。だから、その間に彼がそんなに変わっていても不思議ではない。もし彼にわしのことを尋ねたら、ヒロくんもおそらく、わしがとても変わったと思うだろうね。」


「そうだったんですか。では、なぜ坂本さんたちは交流をやめたのですか?」


「全ては革命軍のせいだ。将司くんが革命軍を創設しようとしており、わしに副官になってほしいと言った。しかし、わしはその考えが気に入らず、その後喧嘩しまくって、それ以来二度と話をしなかった。」


「正直に言うと、僕もまだ、僕の知っている祖父が革命軍の創設者だとは信じられません。どう説明すればいいか分かりませんが、じいちゃんが人を殺すような命令を下せる人間だったとは思えません。彼はそんな人ではありませんでした。しかし、どうやら僕は彼を完全には知らず、理解していなかったようですね...」


「そうか、わしもどうやら、将司くんをよく理解していなかったようだ。こんなことになって、自分を彼の親友と呼べるとは思わないよ。ところで、あの絵はどうなった?もう描き終わったのか?」


「もう少しだけです。覗かないでください!もうすぐ終わります。」


「わかった。待っている。」


 肖像を描き終えると、あの笑顔の彼女、僕が愛した彼女が目の前に現れた。鉛筆で顔が描かれた紙を差し出すと、坂本さんは最初、数分間、目を細めて何が描かれているのかを確認しようとしたが、うまくいかなかった。僕が坂本さんの頼みで眼鏡を持ってきて、彼がそれをかけると、再び絵に目を落とした。そして今回も、彼は数分間、小さな紙を見つめていた。その表情は以前と同じだった。まるで以前にこの人を見たことがあり、どこで見たのかを思い出そうとしているかのように。しかし、少し後に僕は、実際には彼は逆のことをしていたのだと知った。坂本さんはそこに描かれている人間ではなく、別の人をどうにかして見ようと必死になっていたのだ。


「紀美子」彼は小さな声で囁いた。しかし、完璧な静寂の中、僕は彼の言葉を聞き逃さなかった。


 え?なぜ彼は彼女の名前を知っているんだ?僕は昨日、一つも名前を言っていなかったはずなのに...


「紀美子ちゃん!!!」彼は半分以上が泣き声に変わったような大声で叫んだ。


「...ちゃん」いえ、まさか...


 坂本さんは手から紙を落とし、自分の部屋へと去っていった。普段は彼の手を取って歩きやすくしてあげるのだが、今回は坂本さん自身が、慣れない速い足取りで、家の壁に手を当てながら、僕の助けなしに自分の部屋に辿り着いた。僕はずっと彼の後ろについていき、説明しようとしたが、坂本さんは僕の目の前でドアをバタンと閉め、鍵をかけた。僕は状況を好転させようと話しかけようとしたが、きっぱりと拒否された。


「坂本さん、僕は…」


「自分の部屋に戻りなさい!一人にしておいてくれ!」


 その時、適切な言葉が見つからず、僕はただ黙って坂本さんの指示に従い、自分の部屋に戻った。そこでは机の上の本の山とベッドが僕を待っていた。この二つの選択肢の中で、睡眠よりも本が僕の感情状態に対処するのに役立つだろうと考え、僕は読み始めた。僕はこれまでにないほど速く、休むことなく読んだ。夕食を準備しに行く前に開いたままにしておいた本を読み終え、次から次へと読み始めた。我に返って窓の外を見ると、夕焼けが見えた。坂本さんと最後に話してから、ほぼ一日が経っていた。これから永遠に逃げ続けるわけにはいかないと決心し、僕はベッドに横たわって、休むことなく次々と本を読みながら逃れようとしていた全ての考えを整理することにした。


 おそらく、坂本さんにとっては、自分の家族はまだ生きていて、何かの用事で訪ねられないだけだと思っている方が、家族全員が亡くなったと知るよりも楽だろう。それも、あの夜一緒にいて生き延びた人間から聞くのはなおさらだ。ついに部屋を出て階下に下りる決心をすると、家主はまだ自分の部屋に閉じこもっているだろうと思ったが、驚いたことに、坂本さんはリビングに座って、僕が食事を料理するのを今か今かと待っていた。


「おお!やっと降りてきたね!どこにいたんだ?朝で久しぶりに自分で料理をしなければならなかったよ。」


「あ...すみません。ただ本を読んでいて、時間を忘れてしまって。」


「本か?それならいいだろう。」


 キッチンへ行き、僕は夕食の料理を始めた。普段はこの時間に坂本さんと何か話すのだが、今日だけは違った。今回は、掛け時計の音と、木のまな板を叩くナイフの音だけが静けさを破っていた。この重苦しい沈黙を破ろうと思った瞬間、坂本さんも同時に同じことをしようとした。


「あの...」


「ヒロくん、聞いてくれ...」


「あ、おっと。どうぞ、お先に。」


「いやいや、ヒロくんから先に言ってくれ。」


「わかりました。こんなことになってしまい、謝りたいと思います。

「何を詫びているのか、はっきりさせたいのだが?」


「え?どうしてって?坂本さんの...を救えなかったことです。」


「ちょっと待ってくれ!それは謝ることじゃない!」


「え?しかし、なぜですか?」


「紀美子ちゃんは自らその選択をし、君を救う決断をしたのだ。だから自分を責める必要はない。もし謝るとしたら、こんな悲しい知らせをわしに話したことで謝るべきだ。」


「わかりました。申し訳ありませんでした。」


「よろしい」


 この気まずく短い会話の後、再び静寂が訪れた。それを破るにはさらに数分かかるだろう。


「坂本さんは何を話そうとしていたのですか?」


「わしが?」


「ええ、僕たちが同時に話し始めたあの時に。」


「ああ、そうだった!このぼんやり頭、すっかり忘れてた。聞きたかったのは、君があとどれくらいここにいるつもりなのか、ということだ。もうすぐ全ての本を読み終えるんじゃないか?」


「はい、あと二週間くらいだと思います。」


「それですぐに出て行くのか?」


「もちろん違います。坂本さんを一人にすることはできません。だから、ご厚意への感謝として、最後までお世話します。」


「そう言うと思っただよね。わしのことは心配しなくていい。ヒロくんはすべきことをするんだ。」


「しかし、誰が坂本さんを助けるのですか?」


「前に言っただろう、わしのことは心配するな。わしのことについて世話を焼く人もいる。今日だって(はるか)ちゃんが食材を届けてくれた。大丈夫か、一人でやっていけるかって聞いてくれたよ。もしヒロくんが出て行ったら、彼女に手伝ってくれるよう頼むだけだ。それだけさ!」


 坂本遥は坂本さんの姪だ。週に二回ここに食材を届け、いつも助けを申し出ている。しかし、彼女もこの小さな町の他の住人たちと同様、僕がここに住み、家主の世話をしていることを知らない。だから彼女の心配は容易に理解できる。


「ところで、ヒロくんは自分の本に何を書くのか話すと約束したね。もう考えたのか?」


「正直なところ、何を書けばいいのか全くわかりません。非常に多くの異なる作品を読みましたが、それらは大きく異なっています。僕たちの世界について語るものもあれば、ドラゴンや他の架空の生き物がいる空想の世界について語るものもあります。面白い作品もあれば、面白くない作品もあります。そしてこの一年、僕は何が一冊の本を面白くし、何がそうでなくするのかを理解しようとしてきました。」


「うーん。そうだったね。本当に難しい問題だな。」


「坂本さんはどう思いますか?好きな本はありますか?」


「好きな本か?そうだな…おそらく『罪と罰』だろう。」


「ああ、そうですね。あれは様々なことを考えさせられ、自分の人生を再構築する機会を与えてくれますね。」


「そうそう、その通り。しかし、面白い本とつまらない本を分けるものか...ここで降参だ。何と答えたらいいか分からない。ヒロくんはどう思う?」


「僕もまだその問いに対する答えを見つけていません。」


「では、何を書くつもりだ?決めたのか?」


「恥ずかしながら、何のアイデアも浮かびません。」


「では、わしが提案しよう!」


「え?本当ですか?何を書けばいいかご存知なのですか?」


「ああ、それどころか、ヒロくん自身が何を書くべきか知っているのに、完全には理解していないだけだ。」


「どういう意味ですか?」


「君の人生についての本を書くことを提案する。」


「伝記のようなものですか?」


「いや違う。ヒロくんの祖父が亡くなり、君の人生が完全に変わったあの日から始まる本だ。」


 じいちゃんが亡くなったあの日...ああ!まさにその日、僕は初めて本を読み、その後すべてが変わったのだ。


「ああ!そういうことか!」僕は椅子から飛び上がり、大声で叫んだ。


「そして、そこには多くの意味があるだろう。本についての本。いい響きだろう?」


「本当にそうです!僕は自分が経験した、既に出来上がった物語を持っています。自分以外の誰にも、自分と同じ体験をさせたくありません。だから、芸術の素晴らしさを語る本を書きます。本当にありがとうございます!坂本さんのご恩は一生忘れません!」


「ハハ。いいえ、いいえ。全力を尽くしておくれ!」


 この考えが頭に浮かんでから、僕はもう他の何も考えられなくなった。僕は急いで階段を駆け上がり自分の部屋へ向かった。そこでは机の引き出しにしまってある白い紙と鉛筆が僕を待っていた。机の上の全ての本を一振りで乱暴に床に落とし、筆記用具を取り出し、僕は書き始めた。僕は時間を完全に忘れた。何時間、何日、何週間が経ったのか?知らない。僕は椅子に座り、鉛筆を動かし続け、白い紙に黒い跡を残し続けた。机の引き出しに蓄えてあった紙が完全に無くなり、新しい紙を求めて一階に下りなければならなくなって、ようやく我に返った。


 一階に降り、掛け時計の少し下に掛かっている小さなカレンダーを見ると、ようやくどれだけの時間、机に向かって自分の内面の世界に閉じこもっていたのかを知った。つまり、僕は水も食べ物も摂らず、眠らずに、まる三日間座り続けていたのだ。坂本さんに声をかけたが、何の返事もなく、僕は彼の部屋へ行った。


 部屋に行くと、恐ろしい事実に対する理解不能な認識が僕の意識に達した。僕が坂本さんと最後に交わした言葉は、三日間の夜のことであった。もう二度と、僕は坂本さんに自分の考えを伝えることも、代わりに彼の声を聞くこともできない。


 これ以上この家に長く留まるのは単純に危険だった。なぜなら、遥さんが訪ねてきた時、何の返事も得られなければ、彼女は必ず家の中に入ってくるからだ。そして僕は、他の人々に自分がここにいることを知らせるわけにはいかなかった。だから、全ての持ち物をリュックに詰め、僕はじいちゃんの親友に最後の別れを告げて一年ぶりに家を出て、次の旅へと向かった。

感想を首を長くしてお待ちしております。

この小説は「面白い」とか「いいな」とか思った読者様はいるなら、よかったらポイントやリアクションを入れてください!僕にとって読者様の意見は一番大事なのでぜひおねがいします!

第九話は4月19日 10時00分に投稿します!

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