かいてみた
こんにちは。僕は日本人ではありません。日本語勉強中です。何か間違いや誤りがあるかもしれません。その時はどうかご容赦ください!
これは僕の初めての小説であり、連載小説でもあります。これから一生懸命に、週1回新しい話を投稿するように頑張ります。
よろしくお願いいたします!ぜひ感想を聞かせてください!
僕の祖父だって?でも、そんなはずがないだろう?なぜ?これらの疑問は、祖父がこの革命軍を創設した理由ではなく、この革命が追い求める理念に向けられていた。佐藤将軍の話によると、じいちゃんは僕を主要人物とする革命を起こそうとしたというのか?しかし、そんなことはありえない!僕のこと、芸術のこと、そして他の人々のことを愛していた僕の祖父が、ただ単に他人を殺せと命じるような人間なわけがない!
「間違いということはありえませんか?」
「間違い?私が誰と思うの?」
「我々の前から消えろ!忙しいんだ。」
耳は聞こえていることを信じようとせず、言葉を失った僕は、数分前に座っていたあの隅っこに戻った。そこでは既に竜二くんが満足そうな顔をして待っていた。彼のところへ歩いていく間、周りの人々は囁き合い、時折僕と祖父の名前を口にしていた。
「ほら見ろ、言っただろ、ヒロくんは...」
竜二くんが話し始めたが、僕の脳はその時、外界から完全に遮断されていた。耳に入ってくるどんな外部の音も、耳介に留まったままで、本来の目的地である脳に届くことはなかった。僕は聞かされた言葉を、さらに数時間信じることができなかった。迷い込み、自分の思考の中から出口を見つけられないまま、僕は自分の内面の世界に閉じこもり、まるで悪い夢のように現実から完全に消え去った。それを忘れようとしていた。夜明けが過ぎてから、ようやく頭の中の情報を少しずつ整理し始めた時、僕は昨夜何が起こったのかを突然思い出した。それは嵐の中で傷つけられた船のような僕の感情状態が、地平線上に巨大な押し寄せる波を見つけたように感じていた。救いを求めようとして、僕の手は筋肉の記憶に従って左ポケットに伸ばしたが、そこに僕が探していたものはなかった。
その時、僕はここ一ヶ月の間に自分に起こった全ての幸せな出来事を思い出し始めた。経験した全ての喪失と比べれば、それらはほんのわずかだった。それは大海の中の小さな一滴に過ぎなかった。しかしそれでも、僕はほんのわずかな救いを見つけたかった。その時、僕は紀美子とどうやって出会ったかを思い出した。正確に言うと、僕の人生に大きくて越えられない境界線を引いたあの夜を思い出した。あの日、僕は頭から離れなかった本の続きを書いた。そうだ!写真がなくても、あの夜のように、自分で描いてみたらどうだろう?そうすれば、それは写真ではなく絵になるけれど、それがどうしたというのだろう?
素早く立ち上がると、僕の脳は、数時間も同じ場所に座ったまま動かずに、その間何も食べずに、こんなに急に立ち上がるのは非常に悪い考えだと信号を送り、頭をくらくらさせた。壁に寄りかかりながら、僕は紙切れと何か書くものを探しに行った。辺りを見回し、自分がいる建物の壁の外を覗くと、今はもうとっくに朝ではないことが明らかだった。壁に掛かった時計は14時37分を示していた。朝食と昼食の時間はとっくに過ぎていたが、小さな食堂にはまだ食べ残しが残っていた。でもその存在を僕は無視した。僕の頭の中には今、ただ一つの目的と一つの願望だけがあった。それは人間の睡眠や食事といった主要な欲求とは全く関係のないものだった。僕は目標を見つけた。そのために、全ての不必要なものを忘れたのだ。まるであの夜、本の続きを書いていた時のように、沸騰する流れが僕を拾い上げ、未知の場所へと運んでいった。
何も文房具を見つけられず、僕は少し落ち込んだが、そう簡単に諦めようとはしなかった。昨夜、ここに到着した時のことを思い出して僕をここまで運んできたトラックが停まっていた場所へ向かった。駐車場からすこし離れていたわりと大きな砂地だった。昨日真っ暗闇の中でそれを気付くようにかすかな懐中電灯の光は十分だった。右手の人差し指を振るい、僕は「描き」始めた。
目の前には、紀美子と一緒に過ごした瞬間が次々とチラチラと浮かんでた。そんな時はほんの数時間だったが、おそらく、その時までの人生で最も幸せな瞬間だった。彼女のことを常に考え、その顔を目の前に思い浮かべながら、ちょうど太陽が地平線の彼方に隠れ、僕の前に暗い幕を下ろそうとしていたその瞬間、僕は絵を描き終えた。それはとても大きく、近くで見ると全体を把握するのが本当に難しかったので、近くにあった木に登って自分の成果を見てみると、涙を抑えられなかった。目の前の地面には、僕たちが初めて、そして最後に一緒に過ごしたあの日に見た、あのいつも嬉しそうに笑っていた彼女がいた。僕の涙は止まらなかった。何をしても、どんな手段を使っても、この顔を見ていると、こんなにも長い時間を経て初めて、僕は涙に対して無力だった。涙を止める唯一の方法は、彼女の顔を僕の目から遠ざけることだった。僕は彼女の砂の絵の隣の地面に横たわり、会えなくて話せなかった間に自分に何が起こったかを彼女に話し始めた。訓練合宿のこと、自分の考え――全てを、最後の細部まで、何も隠さずに話した。大切な人を一人残らず失ったこと、これからどうすればいいのか分からなくなっていること。じいちゃんが革命軍の創設者であること。そして、自分が殺人者になってしまったことさえも。
数時間話し続けた後、ようやく落ち着き、我に返ることができた。話を聞いてくれた彼女に感謝して僕は格納庫へ向かった。そこでは夕食のために割り当てられた時間はとっくに過ぎ、ほとんどの兵士はもう床についていた。その時、ふと気づいた。僕の胃にはもう二十四時間以上、何も入っていないこと。その瞬間まで、僕の脳は全く別のことでいっぱいで、エネルギーを得たいという欲求を後回しにしていた。そして今、その重荷が下りたとき、ようやく自分の胃の内なる声を感じた。それはいつ死んでもおかしくないような状態だった。
不満そうな胃の大きな音を聞きつけた竜二くんが僕に気づいて駆け寄ってきた。
「一日中どこにいたんだ?佐藤将軍自らが探してたぞ!集会があったんだ。」
「本当?すまない、時間を忘れてしまって。」
「将軍に謝った方がいいぞ。」
「わかりました、ありがとう。」
「ところで、ヒロくんが朝食にも昼食にも夕食にも来てるのを見なかったけど、今日何か食べたのか?」
僕の代わりに、胃が答え、その最も深い場所から再び大きな音を鳴らした。
「やっぱりな!少しだけパンが残ってるけど。ほら、持っていけ!」
「本当にいいの?」
「いいからいいから!今はヒロくんの方が必要だ。」
「本当に、ありがとう!」
「気にするな、俺たち友達だろ?」
「とも...だち?」
「ああ。まあ、もし嫌じゃなければだけどね、あのことがあった後だから。悪いことを言って、避けたりして悪かった。ごめんね!」
僕はすぐにその問いに答えることができなかった。しかし、僕が気にしていたのは、竜二くんが僕と交流を絶ったという事実ではなく、もし今僕たちが友達になったら、彼もまた失ってしまう可能性がどのくらいあるかということだった。今日まで僕にとって大切だった人は皆、もう僕のそばにはいない。僕は竜二くんを危険にさらすことはできないし、そうしたくない。
「急がないでくれないかな?」
「え?なんで?ヒロくんは俺の命を救ってくれたんだろう!だから俺も同じように君に恩を返さなければならない。だからこの瞬間から俺たちは友達で、ヒロくんが俺を守ったように、絶対に守るからな!約束ね?」
もしこの時、彼がこれらの言葉が自分自身に死刑宣告をしていると知っていたら、それでもなおそれを口にすることができたのだろうか?
竜二くんが差し出したパンを食べて僕は一番近くの空いているベッドへ向かった。ようやく疲れ切った体を休めることできた。僕はとても疲れ果てていたので、頭の中にはたくさんの考えがあり、もう二十時間近くもそれらは僕を悩ませ続けていたにもかかわらず、頭が枕に触れると、目が次に開いたのは翌朝だった。
もし僕の思い通りにできるなら、あと数時間は眠っていたかったが、周りの人々の騒音がそれを許さなかった。
「ねえ、あれ見た?すごい!誰が描いたんだろう?」
「外にあるんですか?」
「信じられない!見に行こうよ!」
「早くあれを見るべきだ!」
他にも数十の声、男性も女性も、同じことについて話していた。彼らは皆、何かを見せたがっており、大きな格納庫の中の人々は、時が経つにつれてどんどん少なくなっていった。何が起こっているのかすぐには理解できず、何かを探して格納庫から飛び出していく人々の後を追い、僕は昨日、彼女の絵を描くのに約八、九時間を費やした場所へとやって来た。その周りには大勢の兵士が集まり、誰がこれを描いたのかについて議論し、推測していた。
「なんて美しい絵でしょう!こんなに綺麗なのは見たことがありません!いったい誰が描いたんでしょう?」
「実は、あれは『肖像』って言うんだよ。」
「肖像」?何だそれは?そう質問しようとしたが、中年の女性が先に言った。
「『肖像』って何?」
「それは、人の顔だけを描いた絵のことだ。でも、現代の誰かがこれほど美しく描けるなんて思わなかったよ!」
「本当に!私はてっきり、画家――つまり絵を描く人たちは皆、ずっと前に死んでしまったと思っていたよ。そして、芸術作品の一つ一つは、大切に保管すべき過去の貴重なものなんだって。自分で何かを生み出せるなんて、考えたこともなかった!」
「そうだ!俺もそんなこと考えたこともなかった!」
「……」
そうだ!僕も、自分で何かを描けるなんて、意識して考えたことはなかった!待って!描けるということは、つまり、書けるということなのか?!この考えは、紀美子とのあの出会いのように、僕の人生を再び「以前」と「以後」に分けた。
幼い頃の記憶と衝撃が頭に戻り、僕は立っていられず地面に倒れ込んだ。ついに理解した。じいちゃんの葬式の後、あの夜、なぜ無意識のうちに、結末を知ることができなかったあの本の続きを書きたいと思ったのかを。
「じいちゃん!今日はどんな話を聞かせてくれるの?」
「今日もお前に話を聞かせるのか?仕方ないな!いいだろう。話してやる!楽に座りなさい。」
「やったー!!ありがとう、じいちゃんは最高だ!」
「むかしむかし、あるところに、いたずらもののサルと、まじめなカニがいました。ある日...」
こうして、祖父は「おとぎ話」と呼ぶ様々な話を僕に聞かせてくれた。しかし、一度も。全く一度も、話の結末を教えてもらったことはない。いつも僕自身に結末を考えさせるのだった。まさにそのため、あの夜、僕は何の疑いもなく、一秒の無駄もなく、その本の続きを書き始めたのだ。おそらく、あの日、幼い頃のこれらの記憶が僕の頭に浮かばなかったのは、これ以上自分を傷つけないように、僕がそれらに封印を施していたからだろう。じいちゃんと過ごした幸せな瞬間を思い出したくなくて、自分が完全に一人ぼっちであるという現実に直面したくなかったのだ。そして今、これらの記憶はその大きな重荷に耐えきれず、封印を破って溢れ出した。じいちゃんが望んでいたのはこれだったんだ!僕が革命の鍵となるだろうと言った時、そういう意味だったんだ!じいちゃんは決して、戦って人を殺せと命じるような人間ではなかった。彼はそんな人間じゃなかった。彼は、武器ではなく、芸術によって、僕たちが平和的にこの国を変えられるように望んでいたのだ。芸術こそが、人類がその歴史の中で生み出した最も美しく、素晴らしく、壮大なものだと人々に理解させるだけでいいのだ。
地面から起き上がり、僕は佐藤将軍を見つけて、自分の発見を話そうと急いだ。前回と同じように、将軍を高い階級の兵士たちに囲まれているのを見つけた。彼らは何かを議論していた。一昨日と全く同じように、僕は全ての行動規範や礼儀を忘れ、将軍に駆け寄り、叫んだ。
「佐藤将軍!僕は何をすべきか分かりました!」
しかし、将軍の隣に立っていた兵士の一人は、今回は前回のように忍耐強くはなく、僕が彼の横を通り過ぎる際に拳で顔が殴られて僕は床に倒れた。
「自分を何様だと思っている?お前の祖父が何者だったかなんて知ったことか、たとえ神様だったとしてもだ!上官の話に無断で割り込む権利がどこにある?」
「すみません、でも重要な用事で...」
「重要な用事だと?ふざけているのか?我々は今、重要な用事で忙しいんだ!革命をこれからどうするか決めているんだ!新しい人材をどうやって見つけるか、裏切り者をどうやって暴き出すか、その他多くの重要な問題を。それよりも重要なことがあるとでも思っているのか?」
「あなた方は間違っています!」
「俺が間違っているだと?!?」
「すみません、そういう意味じゃなかったんです。あなたは間違った質問に対する答えを探そうとしているから、正しい答えが見つからないだけです!」
「何を言って...」
「続けさせろ」と将軍が僕をかばった。
「あ、ありがとうございます!つまり、僕の祖父は決して血を流すようなことを望んでいなかったと確信しているんです。それは彼が考えていた革命の形ではありません。祖父は全てを平和的に解決したかったんです。まさにそのため...」
「平和的にか?てめぇ、自分が何を言っているのか分かっているのか?革命は平和的に実行できるものじゃない!どうやって権力を掌握するっていうんだ?」
「そんな必要はないんです!つまりこういうことです。頂点を変える必要はない。もしこの国全ての市民の支持を得られれば、政府の中のたかが百人程度が、一億二千万人に対して何ができるでしょう?彼らが上にいられるのは、下からの支持があるからだけです。もしその支持がなくなれば、党そのものも消えるでしょう。そうすれば、無意味な損失を出さずに革命を実行できます。この国の全ての市民が革命に参加するんです!」
「全ての市民だと?ハハハ。それをどうやって実現するつもりだ?」
「ただ、芸術への愛を植え付ければいいんです!」
「芸術への愛を植え付けるだって?もしそれが可能なら、とっくにやっている。ただ、人々は変わりたがらないんだ。全部の国民は現状に満足している。それに、死を恐れている!」
「ならば、国民の心を溶かすような芸術を彼らに紹介すればいいんです!」
「じゃあ、なぜてめぇそういう『芸術』が彼らの心を今まで溶かせなかったと思うんだ?」
「なぜなら、人々はまだ、自分の心の中で死なず、永遠に生き続ける、真に価値のある傑作に出会っていないからです!」
「そして、それをどこで手に入れるつもりだ?今までそんなものはなかったのに?」
「もしないなら、ただ作り出せばいいんです!」
「作り出す?ハハハ。誰がそれを作るんだ?」
「僕が作ります!」
「え?何だって?ちょっと待て、まさか裏庭のあの落書きは、お前の仕業じゃないだろうな?」
「そうです、僕が描きました。それが何かの問題ですか?」
「いったいどうやって」
「言い争いはやめて!」と将軍が再び会話に割って入った。「ヒロ、それを描いたのは本当にお前なのか?」
「はい、本当です。」
「そうか。まあいい。君の意志と助けたいという願いは評価するが、君の提案は却下する。我々は全てを平和的に解決したりはしない。それは無意味であり、何十年もかかるかもしれない。」
「しかし」
「しかしじゃない!もう下がっていい。」
「もう好きにしてください。僕は自分が正しいと思うようにやりますから!」
「今、何と言った?」
「僕は自分で本を書いてこの国中に本当の芸術とは何かを伝えてみせます!」
「早く捕まえろ!」
「え?何の罪で?」
この質問に対する答えを、僕は地下室の鉄格子の向こう側に座って聞くことになる。僕の前には、背後に二人の兵士を従えた将軍が立っていた。
「事情を説明しよう、ヒロ。我々のスパイから、お前が『芸術対策』にマークされ、お前の正体を知られているという情報が入った。さらに、お前の祖父が我々の革命軍の創設者だということもな。だから奴らは、お前を見つけ出すまで追い続けるだろう。お前の両親はおそらくもう生きていないか、今まさに拷問を受けているところだ。もしお前が捕まれば、同じ運命をたどるだけ。だから私はお前を逃がすわけにはいかない。たとえお前が我々に手伝うつもりがなくても、私はお前の祖父に恩があり、彼の願いによってお前を守らなければならない。次の基地に移動するまで、ここで少しだけおとなしくしていてもらうぞ。」
「もし祖父への恩を返したいなら、ただ僕にしたいことをさせてください!」
「そうはいくまい。お前たち二人、絶対に目を離すな。」
「了解!」二人の兵士が声を揃えて言い、将軍から僕の独房と隣の独房の鍵の束を受け取った。
そして再び、僕はこの場所にいた。周りには三つの壁と鍵のかかった鉄格子だけがあり、その前には時折、僕が何をしているか確認するために、兵士たちが交代で姿を現した。しかし、今回は過去とは違っていた。あの時僕を殺したような静けさはここにはなかった。二人の兵士の会話が僕を落ち着かせた。次の違いは、食事が運ばれてきたことだ。僕がここに閉じ込められてから数時間後、昼食が運ばれてきた。
「ねえ、格納庫の裏のあの絵、本当にお前が描いたのか?」
「はい、本当です。」
「信じられない!どうやってそんな風に描けるようになったんだ?俺も子供の頃に一度挑戦したことがあるけど、全然ダメだったんだ。たくさん描いたのか?」
「正直に言うと、あれが初めてでした。」
「初めて?ふざけるなよ!信じないぞ。さあ、本当のことを言ってくれよ!」
「初めてだと言ったでしょう。」
「まあ、言いたくないなら、いいさ。」
「…」
「だったら、あの女の子は誰なんだ?付き合ってるのか?」
「彼女は僕にとって大切な人です。」
「へえ。そうか。君は彼女を好きのか?」
「はい」僕は恥ずかしさでかすれるような声でささやいたが、それでも鉄格子の向こう側にいる人々に聞こえるには十分だった。
「じゃあ、彼女は君を?」
紀美子が?僕のことどう思っていたのだろう...
「ねぇ無視しないでくれる。彼女は君を好き?君は彼女のために他にも絵を描いたことがあるのか?」
紀美子は僕を好きだったのだろう?それはおそらく、永遠に知ることができないだろう。その瞬間に押し寄せてきた感情を抑えきれず、涙が目に浮かんだ。運ばれてきた昼食も食べ終えずに、部屋の隅へ逃げていった。そこには小さな布団と枕が床に置いてあった。うつ伏せに倒れ込み、枕で音を隠そうとしながら、泣き始めた。しかし、枕だけでは僕から発せられるこの大きな音を隠すには十分ではなかった。
この出来事の後、僕の看守たちは会話の中で二度と彼女の話題を出さなかった。いや、正確に言うとこうだ。その後、僕たちは二度と話をしなかった。頭の中の考えを整理しようとしていると、全く予期せぬうちに夕方になり、トレイに乗せた夕食が運ばれてきた。食べる気力も食欲もなかったので、ただ部屋の隅の布団の上に寝転がり続けた。そしてついに夜が来た。
兵士たちの会話から、彼らはこの夜、2時間ごとに交代で僕を見張るつもりであることが分かった。しかし、最初の交代の後、僕は二人の異なるいびきの声を聞いた。それは二人とも眠ってしまったことを意味していた。彼らとは対照的に、僕の脳は一瞬たりとも眠ろうとはせずにいった。たとえ心が持てる全ての力で、僕を眠らさせなかった全てのことを忘れさせて、少しでも休もうとしていたにもかかわらず、こんなにもつらい瞬間に、脳は僕の体を覚醒させ続けた。
しかし、僕の脳の努力と、二人の兵士が眠っていたおかげで、僕の耳は、眠っている人が捉えることのできない音を聞き取ることができた。
「ヒロ~」
え?今の聞き間違いか?それとも誰かが僕の名前を言ったのか?数十秒待っても、相変わらず壁に顔を向けて横たわったままで、僕はそれが脳が作り出した幻覚に過ぎないと判断した。しかししばらくして、再び同じ声が、同じ言葉を囁くのが聞こえた。
「誰ですか?」
「俺だよ。森山竜二だ。ヒロくんをここから連れ出しに来た。」
「え?でも、どうしてそんなことを?」
「ヒロくんは俺を救ってくれた。同じように恩を返す時が来たんだ。」
「でも、どうやってやるつもりなんだ?」
数秒の沈黙の後、僕は数時間前に聞いたのと同じ音――僕の独房の錠前に差し込まれた鍵が回る音を聞いた。しかし、今回は違った。独房のドアは閉まらず、逆に開いたのだ。布団から立ち上がり、片手で隣の壁に寄りかかり、もう片方の手を前に伸ばして、この真っ暗闇の中で何かにぶつからないようにした。さらに数秒後、僕の前に光源が現れた。それをまっすぐ見ると、簡単に目が覚めてしまいそうだった。
「何してるんだ?懐中電灯を消せ!起きちゃうだろう!」
「心配するな。飯に睡眠薬を混ぜておいたから、そう簡単には起きないよ。」
「睡眠薬?どこで手に入れたんだ?」
「医療室で取ってきた。眠れないって言ったら、くれたんだ。」
「そうか。でも、どうやって三つのトレイのどれに睡眠薬を入れるべきで、どれに入れないべきか分かったんだ?」
「全部に入れたよ!」
「なに?もし僕が...」
「ヒロくんがこの時夕食を食べられるわけないだろう!」
「ああ、そっか...」
「逃げる時間だぜ」
「逃げる?でもどうやって?」
「車で!」
「え?運転できるのか?」
「いや、ヒロくんができると思ったんだけど!」
「え???車に乗ったのは三回だけだぞ。」
「まあいい、何とかなる!」
彼がこんなに軽く言えることに、信じられない思いだった。僕はまだ、竜二くんがどうやってここから逃げ出そうとしているのか理解できていない。周囲全体に警備が立っているはずだ。ましてや僕たちがいるこの建物の中はなおさらだ。単に誰にも気づかれずに外に出ることさえ、難しい課題だろう。地下の部屋から階段を上がると、竜二くんは自分が先に行き、僕はただ彼についてきて、一切音を立てないようにすると言われた。出口に向かって歩いている間、辺りを見回すと、数十人の眠っている兵士が見えた。夜だったのでほとんど照明はなく、僕たちはほとんど苦労せずに出口まで進むことができた。しかし、出口に近づけば近づくほど、照明は明るくなり、気づかれずに通り抜けられる暗い場所は少なくなっていった。目的地である大きな門――トラックが楽に通れるほどの大きさのものだった。そこに近づくと、竜二君はようやく、僕たちが階段に上がってから最初の言葉を発した。
「とにかく、怪しまれないようにするんだ。ただ外に出るだけだ。」
「え?それが計画か?奴らは僕の顔を見たんだぞ、僕が誰だか知ってるんだ?」
「こんな薄暗い照明じゃ見るのは難しいだろうし、実際に見たかどうかも定かじゃない。」
「正気か?捕まったらどうなるか分かってるのか?僕は多分何もされないだろうけど、竜二くんは...」
「心配するな!ただの普通の兵士のふりをしてれば、怪しまれないから。」
竜二くんの計画は、僕には信じられないほど愚かで馬鹿げているように思えたが、僕も彼も他の計画を思いつくことはできなかった。だから僕にできることは、ただ彼を信じてついていくだけだった。出口に近づくとき、竜二くに言われた通り、僕は普通に振る舞い、ただ眠れずに新鮮な空気が必要なだけのふりをした。ここではそれはごく普通のことだった。革命軍が完全に敗北したという事実によって引き起こされた精神的圧力に対処するのが難しいのは、僕だけでなく、ここにいる他のほとんど全ての兵士も同じだった。しかし、僕たちの間にはただ一つの違いがあった。僕たちの苦悩の原因だ。それは完全に異なっていた。僕は革命の結果などどうでもよかった。なぜなら、その目標と行動は間違っているとすでに理解していたからだ。同時に、彼らは、僕がなぜ苦しんでいるかなんてどうでもよかったのだ。
門に近づくと、両側に一人ずつ兵士が立っていた。彼らの目を見ないように気をつけながら、僕たちは彼らを通り過ぎた。危険は過ぎ去ったかに見えたその時、見張りの一人が僕たちを呼び止めた。
「おい!どこかでお前を見たことがあるぞ!」
その瞬間、冷や汗が背中を伝い、僕は自分の運命を受け入れる覚悟を決め、少し震える声で言葉を発した。
「誰かと間違えてませんかな?」
しかし、僕のかすかな声は相手に届かなかった。竜二くんの大声がそれを遮ったのだ。
「ああ、そうだ!田中さんですね!俺は森山です、覚えてくれてますか?」
「そうだ!森山くんだね!ハハ。どうしてすぐに気づかなかったんだろう?」
二人は話し始め、やがて門に立っていたもう一人の兵士も加わった。注目を集めないように気をつけながら、僕はゆっくりとした歩調で入り口から遠ざかり、彼らに気づかないふりをした。驚いたことに、それはうまくいった。いや、正確には、それがうまくいったのは、ずっと僕から注意をそらし続けていた竜二くんのおかげだと言うべきだろう。建物の角を曲がり、トラックが停まっている駐車場へ向かう途中、道すがら、タバコを吸っている、離れて立っている六人の兵士を見かけた。どうやってここから逃げ出すつもりなんだ?すぐに気づかれて追いかけられるだろう。そう考えながら、駐車場のそばに立っていた小さなベンチに座りって相棒を待った。そしてすぐに、彼が目の前に現れた。
「この後の計画はどうなってるんだ?」
「正直、まだ考えてない!今から考える!」
「ええ?本当か?」
「そんなに心配するな!少なくとも俺たちは外に出られた。後はどこに行くか決めるだけだ。」
竜二くんのことを思うにつれ、僕はますます驚かされる。何の計画もなく、こんなにも危険なことをするなんて...彼は裏上さんとは正反対だ。裏上さんは、たとえ何をすべきか分からなくても、いつでもまず計画を立てて、そこから何かを始められるようにしていた。あの時、「芸術対策」本部のビルに行った時でさえ、道すがらおそらく何度も頭の中で会話の展開の可能性をシミュレーションしていたに違いない。
「ね、竜二くん、僕も君も運転できないんだから、ただ逃げるだけじゃダメか?」
「そうなると、きっと長くは持たないだろうし、それに一番近い町がどっちの方角かも分からないし、食料もなしじゃ、ただ飢え死にする可能性が高いぞ。」
「ああ、そうだね」
彼はしばしば支離滅裂で愚かなことを言うけれど、驚くべきことに、竜二くんはこういった重要なことを考えることもあるのだろう。
「ってことは、やっぱり車しかないのか?」
「ああ、運転するのは俺がやらなきゃね。父ちゃんにちょっとだけ教えてもらったから、だいたいの見当はついてる。あとは誰にも気づかれずに車に乗り込んで、走り出すだけだ。」
「でも、どうやって逃げるんだ?エンジンをかけた瞬間、周りの全員に聞こえて、追いかけてくるぞ。」
「ってことは、追跡する手段をなくせばいいんだよね」
「え?手段をなくすって、まさか...」
「そのまさかだ!」
「正気か!絶対に悪い考えだ!」
「しっ、静かにしろよ。」
誰にも気づかれずに駐車場に忍び込み、運試しをして、ようやく三台目のトラックでキーがつけっぱなしにあるのを見つけた。それを移動手段として選びんで僕と竜二くんは夜の闇に紛れて、僕たちを追跡する可能性のある全ての手段を破壊する準備を始めた。その間、彼は車の運転方法を説明してくれた。「どうしてそんなことを教えるんだ?」と尋ねると、彼は単に沈黙が嫌いで、何か話したいだけだと言った。しかし、少し後になって、それが嘘だったことが判明する。ようやく必要な数の手榴弾と爆薬をトラックの中に見つけて所定の場所に配置して僕らは小さな「花火」の準備を終えた。
「なあ、やっぱり運転するのはお前だ。」
「えぇ?何でだ?」
「もし今、トラックを一台でも爆破したら、連鎖反応で他の全てのトラックも、俺たちのトラックもろとも爆破されるだろう。だからまずは車を走らせて、それから爆破しなきゃならないんだ。」
ああ、そうだね。あ!待て!彼は最初からこれを計画していたのか?だから運転方法を説明したのか...竜二くんは最初からどこにも行くつもりはなかったんだ。一人で逃がして、自分はここに残るつもりだったのか?
「僕は君を一人にしたりしない!」
「この国を変えたいなら、そうするしかない。他に方法はない。」そう言って、竜二くんはイグニッションキーを回し、トラックのエンジンを始動させた。それは、もはや後戻りできないことを意味していた。
「でも...」
「おい!そこで何をしているんだ?車から離れろ!」
突然、懐中電灯を持った男性の大声が僕たちの会話を遮り、僕たちに気づいて近づいてきた。
「行け!時間がない!早く!」
「でも、竜二くんはどうするんだ?」
「ヒロくんは俺の命を救った。だから俺も同じように恩を返さなきゃならないんだ。父ちゃんに、『借金を踏み倒すんな』教えられてるんだ。」
「止まれ!撃つぞ!手を上げろ!」
「ヒロ!後ろを見るなよ、いいな?」
竜二くんは車内から飛び降り、僕の視界から消えた。僕は車のサイドミラーに映る彼の遠ざかる背中を見ることしかできなかった。
「ここで全部爆破する。三つ数えたらだ。逃げなかったら、お前も死ぬぞ!」
「い~ち!」
「待て!」
「に~!」
もはや竜二くんを止められないと理解して僕は数分前に彼に教えられた通りに、アクセルペダルを床まで踏み込むと、トラックは動き出した。その大きなサイズにもかかわらず、車は急速に加速して瞬く間に元の場所から数十メートル離れたところまで到達していた。
「さ~ん!」
これが竜二くんから聞いた最後の言葉だった。彼はわざと僕に聞こえるように大声で叫んだのだ。この言葉の後、一秒も経たないうちに、最初の爆発が轟き、続いて二発目、三発目、四発目、五発目、そして最後に最大で最後の六発目の爆発が起きた。爆発はあまりにも大きかったので、もし隣にあった三百人以上の兵士が収容されている格納庫が爆発してもおかしくなかったが、それは起こらなかった。後ろを見るなと言われていたにもかかわらず、僕は我慢できずにサイドミラーを通して後ろで起こっていることを見てしまった。しかし、距離が離れていたと大きいな煙のため、何も見えなかった。
こうして、またしても僕は友人を、大切な人を失った。しかし、今回は、これまでのどの時とも異なっていた。僕はそれが起こることを知っており、覚悟していた。少なくとも、そう思っていたし、そう望んでいた。心にさらに深い傷を負わないように。竜二くんが「この瞬間から俺たちは友達だ」と言った時、心のどこかで、これが必ず起こるという意識があった。僕は必死に、この瞬間に備えて自分を準備させようとしてた。それほど深い傷を負わないようにしたかったが、準備に与えられた時間はあまりにも少なすぎた。新たな喪失を受け入れられないまま、僕は見知らぬ道を、見知らぬ方向へと走り続けた。
感想を首を長くしてお待ちしております。
この小説は「面白い」とか「いいな」とか思った読者様はいるなら、よかったらポイントやリアクションを入れてください!僕にとって読者様の意見は一番大事なのでぜひおねがいします!
第八話は4月12日 10時00分に投稿します!




