なな
ナナゴのいる方から"ドンッ"と音がする。
"バキッ""ガシャッ"
…いろいろな大きな音がする。
…寝てるのミヤコだよなぁ…
手の接着の位置が変わっている。
…一応足もグミでくっつけておくか…
この後どうしていいか分からず、ナナゴのいる方に目を向けた。
…こっちみてるぅ。むひょうじょうぅ。何もしてないよぅ。えーっと、来てもらおうかな。手を振ってみて。来てくれるみたい。あー、剣を持ってきてる。俺は悪いことしてないよ…
途中でミヤコの変化に気付いたのか、そちらに目線を向けながら隣まで来た。
「タロー様。何をやらかしてしまったのですか?」
「俺じゃない!俺は知らない!何かの間違いだ!信じてくれ!」
「…」
…ナナゴ、疲れが顔に出てるなぁ。さっきまで無表情だったのに…
「もういいです。タロー様、私一人では受け止めきることが出来無いことを理解しました。」
「…ミヤコの事を聞きたかったんだけど、ナナゴも分からないみたいだね」
「はい。どんどん大きくなるのは見たことがありますが、何故そうなるかは分かりません。」
「他にもいたの?どんな人が、どうなっている時だった?」
「タロー様のことです。会った時から戦いが終わるまでずっとです。もしかすると今もかもしれません。」
「…そう言われるとそうかも。初めて会った時から比べると、足の親指の長さくらい背が伸びたかも」
「あし、親指。あの、ですね。その、ですね。ええと、最初に会った時は私の臍くらいでした。起きた時には胸くらいで、戦いの後の今は私よりも高くなっています。本当に自覚は無いのですか?」
「…そこまでだと思わなかっただけ。分かってたよ」
…全然分かんない。だってさー、大変だったんだよ?分かんないところで、分かんない事になって、わかんないままここに居る。そんな些細なことどうでもよくなるだろー…
「…なるほど、そうですよね。タロー様、この剣とナイフを紫色にできますか?」
「それよりも、ミヤコは問題無いかな?」
「正直に言うと、分からないです。しかし、タロー様と同じように見えます。タロー様が気付かないくらいなら大丈夫かと思います。それで、剣とナイフを紫色にできますか?」
「…わかった。様子を見るね」
剣とナイフをそれぞれ1本ずつ紫色にした。
ナナゴは満面の笑みを浮かべ、両手にそれぞれ武器を持って鎧の場所へ向かって行った。
…はあぁ、両手に刃物持ってあの笑顔。後ろ姿が自然体に見える。なるほど、ナナゴは戦う人だったか。フフフ、オレの観察眼を欺くには修行が足りないな…
異変は察知できたが様子見となり、何もすることがない。
ミヤコから少し離れた所で寝転び上を見る。
…御神木様でかいなぁ。意思が有るし。ナナゴの言動からすると信仰対象みたいだし。でも、俺の味方かは分からない。いろいろ分からないことだらけだなぁ。はぁ、なるようになるだろう…
判断材料が少なすぎて考える事をやめた。
開き直ってみると、心が軽くなったような気がする。
すると急に眠気が襲ってきた。
ーーーーーーーーーーーー
目を覚ますと暗くなっている。
…それなりの時間寝たんだろうな。ミヤコは、体勢が変わってないな、息をしているみたいだから大丈夫か。ナナゴは横向いて寝てる。3人を線で繋ぐと正三角形になってるなぁ。お互い監視出来るようにかな、分からんけど。んー、夜って誰か起きてないと駄目なんじゃないかな、襲撃対策とかで。そっか、昨日はナナゴが起きててくれたのかな。だから今日はグッスリ、と。たぶんだけども。それなら俺が起きてようかな…
周りを見渡すと葉や枝が薄っすらと光を反射して、それが暗闇になっていない要因のようだ。
目立った音もなく何かが動いている様子もない。
…ちょっと暇かも。見回りしてみるか。道具の置いてあるとこは、変わりなし。次に犬のとこに行ってみるか。うーん、たぶん昨日の夜はナナゴがやってたんだよな。どうやっていたんだろうなぁ。何をすればいいんだろうなぁ。うん、着いたけど犬はやっぱり犬だなぁ。そういえばこんな体で飛んでたんだなぁ。前足も太いな。んん?まだ手が沈むの?…
前足に手を置くと、毛の中に手が深く埋もれていった。
毛をかき分け三分の一くらい沈めた所で皮膚に当たった。
反対からも同じ位だった。
毛が無ければトイレットペーパーぐらいの太さなのだろう。
…細すぎないかな?体と羽根の大きさと全然合ってないなぁ。…
何となく気になる所を見て触れていく。
大きさが違うが、翼は鳥と一緒のようだ。
胴は背中の毛が薄く腹側が厚くなっていて、毛を除くと横長の楕円形になっていた。
…なんか、なんか、顔以外犬っぽくなーい!顔は、あー、うん、口が裂けすぎてて犬に見えなくなってきた気がする。しかし、うーん、あの顔のでかさにこの胴の平たさ。そこにくっついてる足の細さ。何と言うか、何と言うかですと体のバランスがなぁ。最後に毛の長さで強そうに見える形に整える。何かの動物は威嚇する時に身体を大きく見せるようにするから、それと類似しているあれかな?ああそっか、飛べるように軽量化していくとこの身体の形になるのか。分かんないけど。おっ、ここは肉がついてる。羽の付け根か、飛ぶ為には筋肉が必要。筋肉は全てを解決する。なんか、タンパク質摂りたくなってきたなぁ。ん?お腹すいたのか?コレが空腹ってことだったんだなぁ…
久々の感覚を思い出し、タンパク質を摂る為にどうしても肉を食べたくなってしまった。
道具をまとめて置いている所へ行き、良さそうな物が無いか見てみる。
…剣とナイフが置いてある。ここで大丈夫?誰でも使えちゃうよ?今、簡単に持っていけるから良いんだけどもさ。さぁ、戻ろうか。触ってみたところでは背中と腿辺りが筋肉があり、他は骨と皮みたいだったな。うーん、背中いってみるか…
犬のところに戻り、剣とナイフを駆使して切り出す。
見た目は歪になったが、大きな塊を2つ切り出すことが出来た。
…とりあえずグミで包んでみて。おっ、吸い取らなければ消えないね。じゃあ、剣とナイフの汚れを落としてから元の場所に戻して。うん、生肉だな。どうしよう…
「なんか美味しそうね。分けてもらえる?」
…!ミヤコ!後ろに!いつの間に!笑顔のはずなのに目だけが笑ってない…
「…いつ起きたの?分けるのは良いけど、生肉だから焼きたいなーって。」
「ついさっきよ。目が覚めたら物音がしたから、様子を見に来たの。ナナゴ…さんが寝てて、タローが居なかったから正直どうしていいか分からなかったの。」
「落ち着いて。分かったから、肉をどうやって焼けばいいか教えて」
「…食欲しかないの?ええと、ここで火を使うと怒られると思うの」
「ミヤコ、どうすれば焼くことができる?」
「…あの、はぁ、炭の入った袋があるはずよ。」
「はい」
「…ありがと。次に金属の短めの棒が2本無かった?」
「はい」
「…早すぎない?あと、鍋があ「はい」えっと、わたしに聞く意味あるの?」
「この道具なら鍋の中で火をつけて、肉をフォークに刺して直火で炙ればいいかな」
「火は鍋の下じゃないの?」
「ナナゴに知られたくない。」
「ああー。なるほどね。炭の跡とか一切残さないようにしたいのね。でも、鍋の中に火があっても下の方が鍋の形に焦げるんじゃないの?」
「このグミを間に挟む」
「へぇ、これ熱を通さないんだ」
「分からない」
「ええっ?それで焦げ跡ついたらどうするのよ」
「その時は、えー、ナナゴ怒るよね。ミヤコ、一緒に逃げよう」
「すごい。全く心が揺れ動かないわ。…一緒に謝るわよ」
「逃げた後で、もし捕まったら謝ろう」
「…はぁ、後で考えるわよ。跡がつかないかもしれないし。タロー、器用よね。話しながら準備したのね」
「えっと、どうすればいい?」
「金属の棒を強く擦り合わせて、ほらっ火の粉が出た。この炭は火がつきやすい物らしいの。何度か当てれば火がつくはずよ」
ミヤコが手本を見せてくれたので、棒を受け取り火の粉を当てる。
すぐに火が点きじんわりと広がっていく。
「ミヤコ、ナイフ持って来て。」
「あれ?どうやって切ったの?」
「…無計画過ぎて片付けちゃった」
「ふふっ、どこにあるの?」
ミヤコにナイフを持ってきてもらい、2センチくらいの厚みで両手を広げたくらいの大きさに切り出した。
その肉をナイフで刺し焼いていく。
…焼けた。ミヤコの顔が近い…
「えーと、半分食べる?」
「この1枚で終わりなの?」
「もっと焼きたいけど、串とかも無いしなぁ。」
「そのグミを手に纏わせたら、お肉を掴んだまま焼けないかな?」
「…やってみるか。今焼けてるやつ食べたら、何枚か同じような形で切り出して」
「もぐもぐ」
グミで手を覆い火にかざしてみる。
覆ったところからは熱が伝わってくることがない。
しかし、火に近づいた為に肩より先のむき出しになっているところが熱い。
…覆えばいけそうだな…
「ミヤコ、肉4枚で。グミで覆えば熱くなかったから、一緒に焼こう」
「わかったわ」
自分とミヤコの肩から先を覆っていく。
その時にミヤコの両手にくっついていたグミを回収した。
…忘れてたけど、拘束用のグミがあったんだな。何で効かなかったんだ?犬はくっついていたよな?あー、ナナゴは犬の口の中で動いてたかな?分からん。とりあえず気づかれる前に全部回収して、と。…
半歩ほど離れた位置で準備を終えた。
それぞれ肉を2枚ずつ持って焼いていく。
「タロー。わたし、どれくらい寝てたの?」
「分からない。俺も寝ちゃってたから、時間は分からないなぁ」
「…おおよそでいいの。何年くらいなの?」
ミヤコが消え入りそうな声で聞いてくる。
「えっ。ゼロ年数時間くらい。たぶん」
「…気遣いはいいの。わたしがこんなにもいい体に成長してしまったのだもの。それ相応の年数はかかるものだわ。その間ずっと世話を焼いてくれたのでしょう
?」
ミヤコは体を押し付けながら必死に話していた。両手の肉を火から離さないようにしながら。
「んー…そろそろ焼けるよ。それとね、ホントに1日も経ってない。ミヤコは俺のを送り込んだら成長した」
「…えっ、わたし、そんな、タロー、知ってるの?こっちの世界では、ええっ。むぐっ」
肉が食いたいて仕方なかった。
後悔はしていない。
ミヤコの口に熱々肉を入れた。
…ふむ。入れた瞬間は熱さで出そうとしたが、頬に触れて送り込むと平然と咀嚼を始める、と。鎮痛作用もありそうだ。そうだっ、一瞬だけ止めてみると、顔を歪めた。また送り込んだら、不思議そうな顔をしながら噛み始めた。なるほど、送り込む間だけ鎮痛と回復が働くのか。さて、肉食うか。あっ、おれ、手に1枚。ミヤコ、口と両手で3枚…
空いている方の手でミヤコの手首を掴んで引き寄せ、手に掴まれている肉に噛み付いた。
…熱っ。あぁなるほど、送り込むと普通に咀嚼できるな。肉、美味。おお、力を使ってても味はわかる、と。ん、ミヤコが目を見開いてる。なんでだろう?…
口のなかの肉を飲み込み、もう1枚も食べ終わる。
少し遅れてミヤコも食べ終わった。
「タロー。この世界では気軽に男女の関係になってはいけないの。それと言うのも強い感染症があって、潜伏期間が3〜5年で発症すれば命はないのよ。わたしは初めてだったから大丈夫よ。ただ、離れる気は無いけど順序は守って欲しかったわね」
「へぇー。そうなんだ」…なんで今こんな注意をして来たんだ?んー、まぁいっか…
炭と鍋を別々にグミで包み込んで元に戻し、肉をグミに包んだ物を隣に置いた。
片付けが終わるとミヤコと連れ立ってナナゴのところへ戻る。
…グミは熱を貫通させなかったし、コレでいいだろう。あー、包まれている時の熱はそのままなのかなぁ?後で確かめてみよっと…
ナナゴは寝返りを打ったようで体勢が変わっていたが、起きてはいないようだ。
ミヤコが話しかけてきた。
「そういえば、よくお肉があったわね」
「あぁ、あの犬の肉」
「えっ!???ポチ丸なの!?」
ミヤコの声でナナゴが飛び起き、剣を構えながら周り視線を巡らせた。
「…何かありましたか?」
「危険は無い、と俺は思う」
短いやりとりの後でミヤコの方を向き、目が合うと抱きついて泣き出した。
「うぅ、美味しかったよぉ」
「…何かしましたね?」
「特別なことは何も、と俺は思う」
「ハァ」
ナナゴは溜息をつき剣を下ろした。
「すみません。起きれませんでした」
「やっぱり昨日の夜も起きてた?」
「浅く寝て、物音や気配で直ぐに行動できるようにしています。…今は出来ていませんでした」
「そうだったんだ。ごめん。知らなかった」
「いえ。それはそうと、ミヤコが泣いているのはどうしてですか」
「あー、んー、あっちに犬がいるだろう」
「はい。昼に倒された魔物がいます」
「えー、ちょっと食べました」
「はい。道具を集めているところのパンを食べたのですね」
「いえ、犬を」
「はい。はい?魔物を?」
「食べた」
「はい?魔物を食べた!?」
気分で書きます。
気分で投稿します。
中身も気分次第で。




