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子どもに目を向ける。
「なんでポチ丸がおれに…」
こちらが視界に入っているはずなのに反応は無い。
ずっと聞き取れないくらいの声で何かを呟いている。
…こっちは放っといてもいいか。犬は、半分目が開いた状態で倒れてるな。あちこちに切られた跡がついてる。3人対犬で争ったのか。アイツラと仲間だったっぽかったのになぁ…
「魔物は死んでますね」
「そうなのか。どうしたい?」
「あの人達を拘束したいですね。反抗されても困りますから。」
「さっきのグミでいい?」
「グミとは何でしょう?」
「あー、紫のやつ」
「なるほど、あの小さい人だけお願いします。あとは…もう生きていないようです」
「わかった」
ゆっくりと子供の視界から外れる。
視線は追ってこない。
足音が出ないよう気を使いつつ後ろに回り込む。
背中に手を当てて首から下を一気に固める。
「ナナゴ、出来たよ」
「分かりました。そちらに行きます」
…グミを出す感覚は覚えた。吸収も分かる。犬にあったナニかも出来る、まぁほぼ理解不足だけど。あとは、このままナナゴについて行っていいのか?って事か。御神木様はどこまで信用していいのか…
ナナゴが子供と目線をあわせる。
「話せますか?何故ここにいるのですか?」
「なぜ、ここに、わたし」
「魔物を呼び、剣を抜きましたね?この方をどうするのですか?」
…無表情だね。怖いね。子供の方も一人称が変わっちゃうよね。冷静になっちゃうよね。そうなると、腰にマフラーっぽい物1枚は何とかしたくなっちゃうよね…
ちょっと離れた所に肩掛けの鞄が2つ落ちている。
静かに両方回収して、こっそりと中身を開けようとして
「それを持ってこっちに来てください」
呼び出し。
「はい!行きます!」
「??何かありましたか?」
「何でもありません!!」…詰問が始まってからずっと無表情ですよ…
ナナゴがキョロキョロと周りを見て、異常がないのを確認してからこちらに視線を戻す。無表情で。
ナナゴの隣に到着して子供を見た。
…視線がこっちを向いたな。さっきよりも落ち着いたのか?話は聞けるのかな?…
「ナナゴ、はい、これ。」
「ありがとうございます。私は中を見るので話を聞いてもらえませんか?」
「俺が聞くの??」
「はい、あなたに用があるような事を言っていたので。私が問いかけても質問を繰り返し呟くだけで、答えてもらえませんでした」
「そうなのか。あー、ナナゴは近くに居てね」
「分かりました。ずっとそばに居ます」
…なぜ満面の笑みなのか…
子供の方に視線を向ける。
「先ずはな、お前らはこちらの命を奪おうとしただろう?正直に言うと生かしているだけでリスクなんだ。その拘束を破って暴れるかもしれない、何か特別な力があるかもしれない、想像を超えて何かをするかもしれない。でも、俺の仲間かもしれないんだろ?一緒に居てくれるかもしれないんだろ?」
…??一緒に居るってとこでナナゴが反応した?まぁいいか。こいつが転生者だったら奇跡の使い方を教えて欲しいんだけどなぁ。敵だと教えてもらえないだろうし、離れてたらどうやって教わるんだよってことだしなぁ…
「あ、あの。あ…」
「うーん、落ち着いて。とりあえず名前を教えてくれないか?」
「わたしはミヤコ」
「よろしく。ミヤコ」
「あなたの名前は?」
「俺の名前は…」
…なんだっけ?思い出せない。ん?ナナゴの方からの音が消えた?おうっ、凝視されてる!何で?…
「あー、憶えてないんだ。」
「そうなのですね。オボエテナインと言う名前だったのですね」
「えっと、わたしは日本だったんだけどどこの国の人だったの?」
「俺も日本だと思う」
「適当に答えてるの!?転生者じゃないの?わたし、間違えた?」
…名前のやり取りをしただけで喜んで、怒って、放心してる。ナナゴはナナゴでニッコニコだし。なんか面倒になってきた。よしっ!なるようになぁれ…
「あー、違うんだよ」
「そうだよね!わたし、そんな名前の日本人聞いたことないもん。どこの国の人?」
「何がどう違うのですか」
…ナナゴが怖い。目が本気だ。俺、なんかしたかなぁ…
「違うのは名前のとこで、分からない、覚えてない、名前がない、と言うことだ」
「オボエテナインだ。おぼえて、ないんだ。覚えてないんだ。なるほど、私の勘違いですか」
ナナゴがバッグを持ちこちらに背を向けるようにして座り、中に入ってるものを確認しだした。
ミヤコは顔を赤くし目線を下に固定している。
…二人共若いな。この程度で恥ずかしがっちゃうとは。俺なら笑いながらごめんで済ますぞ。いや、雑に流すかも…
「それで、えーっと、あー、何だっけ?」
「わたしと仲間になって一緒に居てくれるってことよね?」
「ずいぶん前向きだな。」
「まともな転生者と居たいのよ。この世界の人はわたしを道具のように使いたいみたい。戦って、競わせて、罵ってきて、大人しくしていると扱いが雑になる。あそこにいた転生者はわたしの仲間だとは思えない人達だったし。あなたの仲間のナナゴって人との関係が羨ましく見えたのよ」
…まともって。そんなに仲良さそうに見えたのか。もしくはほかの人が酷すぎるのか。分からない。…
「で?なんて呼べばいいのよ?」
「あー、たろうで。この世界だと珍しいかな?」
「タロー様ですね」
「タローね。わたしの周りには居なかったわ。でも、監視役の人の会話では出てきてたわ」
…ミヤコ、監視って息が詰まりそう。ナナゴは反応が早い…
「じゃあ、それでーーー」
ミヤコに話を聞くと、
転生者は
何十年かに一度、教会に現れる。
前回迄に転生した人で生存している人は居ない。
裏方をしていた人も何故か短命に。
全員奇跡を行使できる。
力が強く、病に罹りにくい。
会話が成立しない転生者が多い。
この世界について
読むのは出来る、書くのは人による(薔薇は読めるけど書けないみたいなもの)
ミヤコが知っている限りでは、国が少なくとも2つ、自治している集まりがエルフで5つ、獣人で少なくとも8つ。
お互い交流は多くはない。
魔物が生存圏を拡大させていて、人類は数を減らしている。
野生動物が追いやられて、人類を襲う事が多くなっている。
人同士で争うほどの余力がない。
ミヤコが食べた事ある料理に限って言えば美味しくはない。
俺の頭で理解出来たのはこれくらいだ。
更にミヤコがされた事としては、早いうちから前線に出され、大人しくしているとどんどんと要求が増えていったそうだ。
知識面に関しても何かを警戒されていたのか、行動を共にしていた人に質問をしても答えてもらえないことが多々あったようだ。
「なるほどなぁ。ナナゴ、何かおかしなとこ…えっ?」
ナナゴが倒れてる2人から肌着以外を外し、綺麗に寝かせている。
「どうかしましたか?こちらの方は仕分けをして終わりです」
「脱がしたの?」…ミヤコの方を見ても驚いてないし、こういう風習なのかな…
「?してはいけなかったのでしょうか?」
「ちょっと待ってて。ミヤコ、こっちでは?」
「普通よ。火葬して埋葬するのよ。その時、こっちでは火葬を送り出すって言葉に置き換えるのよ」
「なるほど。で、脱がすの?」
「薄い下着以外は燃え残るかもしれないもの。ちゃんと旅立てないってことになるらしいわ」
「へー。ナナゴ、手を止めさせてごめん。2人を送り出すの?」
「はい。御神木様から降りたらすぐにでも」
…燃え移ったら大惨事だもんなぁ…
「そうだ、グミって熱を通すのかな?」
「ここで火を使うのですか?御神木様で?正気なのですか?」
…顔が近い。目が据わっている。これは、答えを間違えてはいけないやつだ。俺は正しい言葉を選び取る!…
「すぅー、ん?」スンッスンッ
ナナゴがすすっと2メートルくらい後ろへ下がった。
泣きそうな顔になっている。
「私はにおうのですか?」
「うわー、デリカシーが無いよねぇ」
「ちがっ、そうじゃなくて、いい匂いがするなぁって」
「匂うのですね」
「俺にとって嫌な匂いじゃないから!」
「そうですか。…火は使わないでください。仕分けに戻ります」
「…はい」
ナナゴは複雑な表情をして作業にはいった。
ミヤコのほうを向くとニヤニヤしていた。
… …
心が無になった。
ミヤコの後ろに回り背中に手を当てる。
無言で弱く吸い取る。
「えっ!?なにっ!?何してるのよっ!?」
…ナニかと同じ感覚がする。あとで聞いてみるか…
吸い取るのをやめて、送り込み始める。
「うっ、ゔゔゔぇぁ、うぇゔぁぁぁ」
…まだ弱くしかして無いんだけどなぁ…
顔をのぞき込むと、凄い表情をしていた。
…ふむ、何も感じない。なんとなくだが一部の感情が薄くなっているか欠落しているようだな。おっ、量が増えた。変化はない。いや、傷がふさがっている。ふーん、こうなるのかぁ。ん?ナナゴが見てる。嫌そうな顔してるなぁ。あっ、いつの間にかミヤコがだらしない顔をしている。最後にナニかの力を送ってみて、やはり変化はない、と…
「私と同じ事をしたのですか?」
ナナゴがいつの間にか隣にいた。
「そう、同じようなやつ。ナナゴに悪い影響が無いか確かめたくて」
「同じ位にしといた。だらしない顔を見たあたりからナナゴと同じようないい匂いがした気がしてさ」
ナナゴがまた複雑そうな顔をしている。
「私と同じ事をしたのであれば、グミから解放しても問題ないかと思います」
「うーん、じゃあ自由にしてみるか」
グミを吸収すると、ミヤコが倒れてきた。
意識がないようだ。
気分で書きます。
気分で投稿します。
中身も気分次第で。




