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緑に囲まれて1年は経ってないよね日目
「そろそろ街に行ってみる?」
「そうですね。服の追加が欲しいです」
「雨が降ると乾かすのが大変よね」
「タローもミヤコも毎日服を洗ってますからね」
「きれいにしておきたいのよ。寝る前にも着替えたいくらい。ああ、乾燥機が欲しいわぁ。」
「カンソウキとは何でしょう?」
「短い時間で濡れた服を乾かすことができる箱ってとこかな」
「箱の上に置いておくだけでは乾くのが遅くなります」
「箱の中に入れるのよ」
「?、濡れたものを箱に仕舞っても乾きませんよ?」
「タローのような箱なのよ」
「ああ!そういったものなのですね」
「とても不服です」
コン蔵が瘴気を抜く前の肉を食べているのを見て、試しにそのまま食べてみた。
結果としては食べれなくは無い。
味がどうのということはないが、例えるなら苦味が強すぎて吐き出したくなる。と、言ったところだった。
…コン蔵は平気な顔をして、むしろ進んで食べてたんだけどなぁ…
暫くはトカゲを主食にしていたのだが、数が減りすぎて探すのに時間がかかるようになり、食いしん坊の提案で移動することにした。
…街道っぽいものも横切ったし、どこかの街に行った方が早かったような気がするなぁ…
移動先は急な山の斜面に空いた穴。
奥行き5メートルで幅3メートル、高さが立った状態でも天井まで少し余裕がある全面岩造り。
穴は奥に向かってほんの少しだけ登っていて雨の日にも水が入ってくることはなさそうだった。
…元の家主は熊だったなぁ。中を覗いた時のナナゴの笑顔が忘れられないなぁ…
熊の姿を見たときは窮屈そうにしていたが、解体するために外に出した後の空間は十分広いものだった。
場所としても10メートル程下ると幅が2メートル位の川が流れていて水の心配は無い。
…優良物件なんだよなぁ…
「えぇっと、どれくらいでここに戻ってくるのかしら?」
「タロー様。どうしましょうか?」
「どうしようね?俺じゃあ判断付かないよ。ここからどれくらいで人の住んでいる所に着くかも分からないし」
「わたしもね」
「任せてください。大体の方向はわかります」
「どれくらいの遠さ?」
「わかりません。この辺りは私も初めてなので」
「…街のある方向は大丈夫なのよね?」
「はい。私、木に囲まれても帰れなかったことは無いので」
…なんか不安になってきた。つまりはナナゴは知ってる所で迷ったことはないって言ってるんだよね?ここって知らないとこなんだよね?…
「なるほどね。じゃあいつ出発するのかしら?」
「荷物は多くないから明日にでもいく?」
「そうですね。それではごはんを狩って来ます」
「…そうなるわよねぇ」
ナナゴが山に魔物狩りに、ミヤコが川へ洗濯に行きました。
…状態が良さそうだったり使い勝手が良さそうなのを残して消してるけど、これくらいで幾らになるんだろう?…
俺は我が家の片付けと掃除をしていた。
「なんだかんだ住み心地は悪くなかったなぁ」
剥ぎ取った皮はグミに包んで保管している。
その皮を外に出し、状態を確認する。
「良し悪しは分からないけど、全く変化はなさそうだから問題ないだろ」
「キュゥゥ」
「おっ、コン蔵は残ってたか」
マスコット枠だと思っていたコン蔵は気配を消すのが上手く、自己主張もしないため影が薄くなっている。ような気がする。
「お前もよく食うもんなぁ」
「クゥゥ」
「そうだよ。よくくうぅだよ」
「クゥゥ」パタパタ
「あー、終わらなくなるから走り回るな」
遊んでもらえると思ったのか縦横無尽に走り回っている。
「うぁぁー。荒らさないように動いてるのは分かるんだけどさぁ、やめてくれぇー」
情けない声が出ていた自覚はある。
…つかまえたい…
コン蔵は動き続けている。
…追跡。いや、面で攻めるか…
体くらいの大きさでグミを網状にして出そうとする。
…歪だ。疲れを感じるなぁ。負担があるのか…
一度戻し作り直す。
…まずは小さく掌くらいで…
ばらつきはあるが大分整ってきた。
…複雑なものは負担があるのか…
網目の大きさが揃うまで出しては戻しを繰り返した。
…よしっ。これくらいでいいか。もう疲れた…
体は元気だが、頭が疲れてきている。
「コン蔵!くらえっ!」
両手を前方に出し、そこから網を射出する。
「隙間なんてあけて無いから、逃げられないだろ?」
コン蔵が網に絡め取られた?
「えっ?すり抜けるの?あー、囲いを抜けれるんだから当然かぁ」
コン蔵がゆっくりとした足取りでこちらに近付いてきた。
「あーあ。」
コン蔵を抱き上げそのまま皮の上へ寝転がる。
そして、抱きしめたままふて寝した。




