22
まずはコン蔵が目を覚ました。
「どこか痛いとこは無いか?」
「キュゥゥ」
「わからん」
見た目での変化は、尻尾が膨らみとても大きな1本になっている以外はいつもと変わらない。
「しっかし甘えてくるなぁ」チロッチロッ
「クァン」
「そんなに怖かったんだな」ベロンベロン
「グァ」
「どんな奴に襲われたんだ?」グチャングチャン
「クュ」
「舐め過ぎだろ」カプカプ
両頬をベチャベチャにされた。
両手が塞がっているので引き剥がすことも濡れた所を拭くこともできない。
顔を右へ左へ動かし逃れようとするが、振り幅が狭くて避けきれない。
「んんぅ。息苦し…くない。あ、タロー」
ミヤコが起きた途端に強く抱き締めてきた。
「いきなりどうしたの?どこか痛い?」
「んーん、体は痛いとこないの。そうね、わたし達だけがいる世界って言えばいいのかしら?」
「んぁぁ。あっ、タロー様。」
「ナナゴも起きたな。痛いとこは?」
「ありません」
ナナゴは頭を俺の腹にグリグリとねじこんできた。
「2人共どうした。ミヤコ、さっきのどんな意味?」
「そのまんまよ。タローとナナゴが最後の仲間?味方?で、ここから出ていったら孤独になるって気がするの」
「言葉にするのは難しいのですが、私も似たようなものです。あっ、コン蔵も仲間ですね」
「コン蔵やめて。尻尾をどけてよ。もちろんあなたも仲間よ。顔をファサファサしないで。前が見えないわ。」
「んー。危険にさらされたのが原因かなぁ。2人共、何に襲われたのか覚えてる?」
「わたしは瘴気を吸い込んで倒れたのよ」
「私もです。あの紫色の物体が水から露出したあたりから一気に濃度が上がりました」
「そうよね。あの時と同じような感覚で、より強かったもの」
「あー、ミヤコは吸い込んで咳き込んだ事があったものなぁ」
「そうよ。わたしは経験者なのよ」
「ふふっ。胸を張ることではありませんよ」
3人で笑い合った。
…もう不安感は無くなったかな…
「2人共、体に不調が無ければ外に出ようか。ここに居ても何も無さそうだし」
「わたしは大丈夫よ。あの紫のなんだったのかしら?」
「私も問題ありません。アレが何なのかわかりませんね」
「あー、俺は見たことある。なんなのかは分からないけども」
「どこでみたのよ」
「身体ができる前に。宇宙っぽいとこを飛んでると言うか、引っ張られていたと言うか。そんな時に見たし吸い込んだし」
「うちゅうって何ですか?」
「あやふやね。あと、宇宙って空の上よ」
ナナゴが天井を見上げた。
「今上を向いても岩しか見えないでしょ。」
「…それもそうですね。外に出たら宇宙を見てみます」
「見ても理解するのは難しいと思う。言葉で説明しても、想像がしにくい。と、思う」
「ミヤコは理解できているのですよね。それならば見たことがあるのですか?」
「夜の星は宇宙にあるものだし、見えてはいるのよ。」
「??」
「あー、あれだ。ふわっと説明しようとすると混乱するやつだ。落ち着いたときに夜空を見ながら話そうよ。俺も詳しいわけじゃないけども」
「わかりました。楽しみにしておきます」
「…タローは覚えてられなそうだから、機会を見て宇宙の話を振らないとダメそうね」
「ふふっ。そうですね」
「んんっ。とりあえず外に出ようか」
「誤魔化そうとしてるわね」
広い空間まで戻った。
トカゲが騒々しい。
「あちこちで鳴き声がするなぁ」
「あっ、ゴブリンがいる!」
「珍しいで…食べられましたね」
「ゴブリン狩りで賑やかになってるのかなぁ」
「今まで無かったわよね」
「先程瘴気が濃くなったからでしょうか?」
「普段ゴブリンは隠れてるから、瘴気に釣られて出て来た?」
「トカゲのほうが元気になってゴブリン探しを始めたのかもしれないわよ」
「わかりませんね。とりあえず何匹か肉を狩りましょう」
「呼び方が肉」
外に出るまでに大きめの個体を3匹狩り、それぞれ引き摺っていく。
「わたし達、ゴリラ…?」
「?、ゴリラとは筋肉の塊のことですよね?」
「間違ってはいないわね」
「胴体よりも太い手足、どんな衝撃でもびくともしない腹筋、それらをつかって砦の門を壊せるほどの岩を投げることができる。あのゴリラのことですよね」
「わたしが思ってたのと違うわ」
「ボロボロの砦だったとか?」
「ゴリラは人の生存圏になかなか近付きませんから、前線での話です。そこの砦が抜かれると魔物の領域が増えてしまいます。ですので、しっかりと保守されているはずです」
「そうなのか。ゴリラすげぇ」
「ゴリラ。ほんとにゴリラね」
「ええ。ゴリラ、食べ応えがありそうです」
「え?」
「え?」
ゴリラがゴリラだったゴリラ。
そんなゴリラ話をしているうちに外に出ることができた。
道中、広間に入ってすぐに狩った3匹を引きずっている俺たちを見て、トカゲもゴブリンも背を向けて逃げて行ったため戦闘もなかった。
…蓋にしていたのも異常なし。もう日が暮れるか。外にも魔物の姿はないし、気を抜いてもいいかな…
「タロー。囲い作って」
「はい」
…気を抜くのは早かったようだ…
「じゃあお肉を切り分けていきます」
「ナナゴ、まだ瘴気抜いてないよ」
「えっ?…コン蔵、食べてますよ」
「なにを?」
「瘴気を抜く前の肉を食べてるわね」
「え?」
「ん?」
「たべてる!」




