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ふくをきた
ついにシャツとズボンを身に着けることができた。
ミヤコも着替えたが大きいようで、裾と袖を少し捲っていた。
…むむっ、ちょっとチクチクするな。送り込むと。あぁ、チクチクはなくなったけど少しだけくすぐったいなぁ。下着は腰に巻いてたやつと袋にあった紐でふんどしだ。いよっし、安心感を手に入れた…
「それ、触らせてもらっていい?」
「いいよ。ひょううっ」
「!何変な声出してるのよ」
「脇腹はやめて」
「触ってないわよ。あら、ナナゴの手ね」
「わ、わわ私は、私も、私の服も変えてください」
「わたしのもお願いね」
2人の服も変えて、お揃いの服を着た3人組になった。
「タロー様、ミヤコ。準備はよろしいでしょうか?」
「うん。俺はいつでもいいよ」
「わたしも大丈夫よ」
「では、私が先に行きます。後ろについてきて下さい」
ナナゴに案内されて御神木様を下りていく。
問題もなく進んで行き、昼頃になったようで休憩を挿むようだ。
「タロー様、ミヤコ。パンをどうぞ。水は足りていますか?足りない時は私の持っているのに入っているのを飲んでください」
「俺は大丈夫。あと、俺の持ってる袋に2つ余ってるのがあるよ」
「タロー、わたしに余ってるの1つちょうだい」
「あいよ。」
「ありがとね」
「いただきます。そういえば後どれくらいで着くの?」
「いただきます。そうですね、この地点で今日の行程の8割といったところです。」
「思ったよりも早く着くんだね」
「タロー様とミヤコの動きが良かったので、難しいのですが短い道にしました」
「いただきます。へぇ、わたしには丁度良かったわ」
食べ終え、3人で話しをしながら片付けが終わり出発する頃に来客があった。
「ナナゴ!遅いぞ!どっちが御神木様が言ってたやつだ!」
「ミヤコ!迎えに来てやったぞ!お前と一緒に行った奴等はどこに居る!?」
…いきなりなんだよ、うるさいなぁ…
「マルヨン。タロー様に失礼です」
「うるさい!力尽くでも連れて行く!ナナゴ!そいつの手を縄で縛れ!」
「わたしと一緒に上った人はポチ丸の暴走で亡くなったわ。」
…話が混雑してるし、面倒になってきたな…
「それになんだ!そのお前の中にある力は!なぜ生きてる!お前ら瘴気に侵されているではないか!」
「お前ら!処罰の対象だ!罪人として王国に連行する!」
「!!そうなっていますか」
「…わたしのせいよ。罪に問うのはわたしだけにして」
…おちつけよ…
休んでいた場所は幅4メートルくらいで前後10メートルくらいはまっすぐ、その先は曲がっていて見えない。
対峙しているのが人とエルフそれぞれ1人ずつ。
…2人だけなら何とかなるか?何でできると思ったんだろう?わからん…
全身に…
「ミヤコ、魔法ってあるの?」
「…いきなりなによ。人ではいないけど、魔物に使えるやつがいるわ」
「何を言っている!ナナゴ!大人しくそいつらを連れてこい!」
「お前ら3人共罪人だ!最前線ですり潰してやる!」
…よし!奇跡の力を勝手に魔力って呼ぼう!…
満面の笑みを浮かべ、全身に魔力を回す。
改めて相手を見ると、人の方は1メートル位でエルフはその半分の長さの剣を抜いていた。
…ありゃ、全身グミ。からの突進!うぉっ、はやっ、近付きすぎた!刃物恐っ!くっ、どうしよう?とりあえずエルフの膝を蹴って。えっ、折れたー!剣を振れないように握ってる手を押さえて、うわっ、グチャってなったー!え?え?刃物奪って、離れたとこにポイッ!人の方は?目が合ったー!剣振ってきてるー!あっ、グミが受け止めた。えっ?手をグチャ。膝キック。剣を奪う。2人とも同じになったなぁ。あっ、ナナゴが話しかけてきてる。うっ。何を言ってるのかは分かるけど、すっごく頭が疲れる。魔力を回すのを止めよう…
「タロー様!お怪我はありませんか!?」
2人を無力化するとナナゴが走ってきて、目の前に止まったかと思うと全身をペタペタと触りだした。
「傷は無さそうですね」
…剣とか止めたんだけどな。ナナゴの手はグミ貫通してくるなぁ…
ミヤコが剣を拾いながらこちらに歩いてきた。
「ポチ丸より強くないなら当然の結果ね。…こいつらうるさいわね」
2人が無事な方の手でもう片方を押さえながら叫んでいる。
…体勢が一緒だ。仲良しかな?あっ、コイツラが来た方からゾロゾロと出てきた。人が2でエルフが4、多くない?…
「これは…ナナゴ、何をした」
「マルヨンとこの人がいきなり怒鳴りつけてきて、口論になり剣を抜かれたのです。」
「…怒鳴り声は聞こえた。だが何も無ければ剣を抜くことはないだろう。もう一度聞く、何をした?」
あとから来た6人が剣を抜き構えた。
…あーあ、どうすんのこれ?みんな血の気が多すぎない?ミヤコとナナゴも剣を抜いちゃったよ。まぁ、2人が無事なら他はどうにかなるか。じゃあ、こっち陣営は全員全身グミで。なんで2人共びっくりしてるのさ?まあいいか、とつげきー…
全身に魔力を回し、相手の隙間を縫うように移動する。
そして手の届く所に触り、首から下をグミで固めていく。
数は今回のほうが多いが、先程と同じ位の時間で制圧した。
…なんかグミ出すの早くなってる。範囲の確定もスムーズにできるようになったなぁ…
「タロー様。口までグミで覆っていただけますか?」
「…はいよ」
「ありがとうございます」
ナナゴの質問の時間が始まった。
1人ずつ離れた場所に連れて行き、グミを外し身ぐるみを剥いでから質問をする。
最初の人が反抗的で大きな声が出ることをしたが、次の人からは比較的に素直に答えていた。
ミヤコに小声で聞いてみた。
「…この世界ではこれくらいが普通なの?」
「違うわよ」
「そうだよね。」
「まだ優しいほうよ」
「これで?」
「これで。そもそもほぼ無傷で捕まえられることがないし、捕まえたあとどうするのって話になるのよ。警察にあたる組織はあるけど、住んでいる所とその周辺しか機能しないらしいの。だから旅の途中では困るのよ」
「刑務所とかは?」
「無くはないけど、たぶん貴族とか限られた人用ね。」
「あー、仕方ないのか。捕まえたのを管理するのに割けるだけの余力があるかどうかだもんな。盗賊逃がしちゃったらまた被害が出るし」
「それに証拠が無いからお互いに相手が盗賊だって言って水掛け論になるらしいのよ。都合よく発言に信用がある人がいるってことなかなかないしね」
「うーん、それだと大きな集団で移動するか、なるべく関わらないように動くのがいいのか。ミヤコはどうしてたの?」
「わたし?わたしは兵士と集団移動よ。自由な時間はほとんど無かったわ」
「なるほどね」
「タロー様、終わりました。このバカにまたグミをお願いします」
「はい!」
…ナナゴが怖い…
ナナゴから話を聞きながら増えた道具を整理する。
「タロー様。私はスリーから出ます。家に荷物を取りに行き、必要な物を買ったらすぐ出立しましょう」
「わかった。ミヤコも大丈夫?」
「問題なしよ。でも、急ね」
「マルヨン達に聞いたところなのですが、タロー様の事は一部の人にしか伝えられておらず、胡散臭いやつが御神木様の上にいると言う認識だそうです。伝わっているのも、御神木様からの依頼と言うことは伏せられています。ミヤコに関してはスリーに30人位の兵士とまとめ役が1人いて、ミヤコと現れた転生者を連れて行くと言っているようです。御神木様の言葉を知っているエルフの王がまとめ役と話し合っている最中ですが、マルヨンの様子を見ると2人を引き渡すことで決まりそうに見えます。」
「あぁ、俺達が逃げ出すのにナナゴが付き合ってくれるってことか」
「違います。私達が一緒に行くのにミヤコがついてくるのです」
「訂正するとこそこなの?でも、助かるわ。タローはこの世界の常識無いし、わたしも狭い世界しか知らないもの」
「…あの、申し訳ないのですが私もスリー以外の町に行ったことはないです」
「そっか、まぁ何とかなるだろ。」
「そうよ。どうせタローがどうにかするわ」
「うん。全力出すよ」
「「全力はダメ」」
3人で賑やかにしながら道具を詰めていく。
「こいつらどうする?」
「…同族もいるので出来れば解放したいです」
「わたしはどうでもいいわ」
「うーん、紐で足をきつく縛って放っとくのはどう?」
「手はどうするのよ?」
「自由にしとかないと、紐を解けなくなっちゃうよ」
「それもそうね。でも、剣も置いていくんでしょ?すぐ切られちゃうんじゃない?」
「何も置いてかないよ」
「えっ!?魔物にやられちゃうわよ!?」
「ほとんど心配はないかと思います。御神木様の所には極稀にしか魔物は近付きません」
「それなら、大丈夫ね」
グミを吸収し足をきつく縛って、余った道具等は吸収して消していった。
「では、行きましょうか」
3人それぞれ剣とナイフ1本ずつ、エルフ式のリュックと大きめの肩掛けの鞄を持つ。
当然、食べ物以外は紫色にして軽量化している。
ナナゴを先頭に歩き始めた時、不意にミヤコが振り返り声を掛けた。
「上の方に監視2人と魔物の亡骸があるわよ」
ぼそぼそと何かを言っていた奴等が一斉に沈黙した。
そして何故か必死になり紐を解こうと手を動かしていた。
俺達は歩みを止めずに下りていく。
「何であんなに焦ってたのかなぁ?」
「魔物の匂わせがあったのです。2匹、3匹目が居ないとは言えないでしょうから、恐くなったのだと思います」
「そうよね。でも、ポチ丸の動きも鈍くなってたし、ここには魔物は近付かないと思うわ」
「なるほどなぁ」
「それはそうと、靴を履いたのね」
「好きで履いてなかった訳じゃない!無かったんだ!」
気分で書きます。
気分で投稿します。
中身も気分次第で。




