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『しーちゃんと記憶の図書館』第112話

風を描くキャンバス



一週間後、図書館の一角に、

青年が丘で描いた絵が飾られた。



画面いっぱいに広がる丘は、

やわらかな緑と金色の光で包まれていた。


その中央には、古いベンチが小さく描かれている。



「風が……見えるみたいだ」

来館者の一人が、絵の前でつぶやいた。



やがて、絵の前には小さな人だかりができた。

中には、美術部の高校生もいた。



一人の女子生徒が、

そっとしーちゃんに声をかける。


「この丘……本当にあるんですか?」



「ええ。行けば分かります。

 きっと、あなたの目にも違う色が見えるはず」



女子生徒は目を輝かせて言った。

「行ってみたいです。そして……その色を、私も描きたい」



こうして、丘を描く輪がまたひとつ広がった。



絵の中の風は、

静かに次の人を呼んでいた。


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