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『しーちゃんと記憶の図書館』第113話

丘で待っていた人



放課後、女子生徒はスケッチブックと水彩道具を抱えて、

丘へと向かった。



バスを降りると、春の風がやさしく頬をなでた。

足元には小さな野花が咲いている。



ベンチの方へ歩いていくと、

すでに一人の男性がそこに腰かけていた。



年の頃は六十代くらい。

手には古びたカメラを持っている。



「こんにちは」

女子生徒が声をかけると、

男性は少し驚いた顔をして微笑んだ。



「あなたも、この景色を撮りに?」

「いいえ。描きに来たんです」



そう言うと、男性はカメラを膝に置き、

少し空を見上げた。


「実はね、この丘には……若い頃、一緒に絵を描いた友がいたんです」



男子生徒はその話を静かに聞きながら、

ベンチの横でスケッチを始めた。



夕方、描き終えた絵を見た男性は、

小さくつぶやいた。


「……この色、あの頃のままだ」



丘には、時を超えて同じ色が流れていた。


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