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『しーちゃんと記憶の図書館』第111話

丘に眠る色



春の午後、三人としーちゃんは、

図書館から車で30分ほどの丘に着いた。



空は少し霞んでいて、

遠くの山並みがやわらかな青で溶けている。



青年はさっそくスケッチブックを開き、

筆を走らせた。



老婦人と男性は、

黙って丘の一番高い場所まで歩いていく。



そこで二人は、

一本の古いベンチの前で足を止めた。



「……ここだ」

男性がつぶやく。



ベンチの下には、

小さな缶の中に古い絵の具チューブが入っていた。

色は乾ききっていたが、ラベルの字はまだ読める。



「私たちが初めて描いたとき、ここで休んだの」

老婦人の声が少し震えた。



青年はそれをそっと手に取り、

ポケットにしまい込んだ。


「この色も、きっと新しい絵に生きます」



丘の上には、

50年前と同じ風が吹いていた。


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