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『しーちゃんと記憶の図書館』第110話

新しい筆



展示会の終わり頃、

ギャラリーの片隅で一枚のスケッチを描いている青年がいた。



背中越しに見える紙には、

二人の絵の丘と同じ形が描かれている。



しーちゃんがそっと声をかけた。


「それは……あの丘ですね?」



青年は振り向き、少し照れた笑顔を見せた。


「はい。あの絵を見たら、どうしても自分でも描きたくなって……」



老婦人と男性も近づき、青年のスケッチをのぞき込む。



「線が生きてるね」

男性がぽつりとつぶやいた。



青年は真剣な目で言った。

「この丘に行って、本物を見て描きたいんです。

 もしよければ、案内してもらえませんか?」



老婦人は一瞬ためらったが、

やがてやさしくうなずいた。


「いいわ。あの丘は、誰かに受け継いでもらうためにあるのかもしれない」



こうして、

三世代の画家が一緒に丘へ向かう約束を交わした。



それは、新しい物語の始まりだった。


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