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『しーちゃんと記憶の図書館』第176話

灯りに気づいた人



週末の午後、図書館にひとりの女性が訪れた。

コートの袖口から、冷たい風がすべりこむ。



彼女は入るなり、展示コーナーの前で足を止めた。

そこには、先日少年が書いたカードが立てかけられている。



ぼくは、まだ何者でもない。

でも、誰かの灯りになれたらいい。



女性は、その言葉を何度も目でなぞった。

やがて、目尻に光るものが浮かぶ。



しーちゃんが静かに近づき、声をかけた。

「この言葉に、なにか思い出されたんですか?」



女性はうなずいた。

「…昔、私にも同じような願いがあったんです。

でも忙しさに押されて、忘れてしまっていました」



その日の帰り、彼女は一冊の古いスケッチブックを持ってきた。

そこには、色あせてもなお温かい、優しい絵が並んでいた。



しーちゃんは微笑んだ。

「この絵も、きっと誰かの灯りになります」



その時、少年の言葉はもう一人の心にも届いていた。

灯りは、静かに広がり始めていた。


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