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『しーちゃんと記憶の図書館』第175話

はじめての一文



放課後の図書館は、静かな雨音に包まれていた。

窓際の机に、少年がペンを握って座っている。



白いカードを前に、何度もペン先を浮かせては戻す。

言葉を探す時間が、やけに長く感じられた。



しーちゃんは少し離れた席で、本を開きながら見守っていた。

声はかけない。ただ、その背中をそっと支えるように。



やがて少年は、小さく息を吐き、ゆっくりと書き始めた。


ぼくは、まだ何者でもない。

でも、誰かの灯りになれたらいい。



書き終えると、しばらくじっと文字を見つめた。

そして、まるで宝物を渡すように、そのカードを差し出した。



しーちゃんは受け取り、やさしく頷いた。

「あなたの灯りは、もうここに灯りました」



少年は照れたように笑い、雨の向こうに目をやった。

その瞳は、ほんの少し、大人びて見えた。


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