68/73
『しーちゃんと記憶の図書館』第172話
少女のひみつ
⸻
星を渡し終えた少女は、
しーちゃんの隣で静かに夜空を見上げていた。
—
「……ありがとう、付き合ってくれて」
小さな声が夜に溶ける。
—
しーちゃんは首をかしげた。
「どうして、あの子に星をあげたの?」
—
少女は少し間をおいてから、
ぽつりと打ち明けた。
—
「……昔の私みたいだったから」
—
その言葉に、しーちゃんは目を瞬かせた。
—
少女は続ける。
「私、小さい頃ずっと窓から外を見てたの。
笑うこともなくて……
でもある日、誰かが窓辺に星みたいな光を置いてくれたの」
—
それは、誰からだったのか、今もわからない。
けれど、その夜から少女は少しずつ笑えるようになった。
—
「だから今度は、私の番なんだ」
—
しーちゃんは、その言葉を胸の奥で何度も繰り返した。
“自分がもらった光を、誰かに渡す番”——
それは、記憶の図書館にも似ている気がした。
—
二人は夜風の中を歩きながら、
少しだけ心があたたかくなる沈黙を分け合った。




