45/73
『しーちゃんと記憶の図書館』第149話
鏡越しの声
⸻
風が止まり、
水面の映像だけがゆらぎを残していた。
—
赤いマフラーの少女は、
雪の中で静かに口を開いた。
—
「……探してたよ」
—
声は確かに聞こえた。
けれど、耳ではなく胸の奥に直接届くような響きだった。
—
少年は足をすくわれたように立ちすくんだ。
「ぼ、僕を……?」
—
少女はうなずくと、
手のひらに何かを乗せて見せた。
—
それは、小さな銀色の鍵。
陽に反射してきらりと光る。
—
「この鍵は、君が持っていたはず」
少女の唇がそう動いた瞬間、
水面に大きな波紋が走った。
—
しーちゃんは思わず声を上げた。
「待って! その鍵はどこに……」
—
けれど映像は崩れ、
ただの冬空が映るだけの鏡に戻っていた。




