43/73
『しーちゃんと記憶の図書館』第147話
夜明け前の川
⸻
空はまだ群青色で、
川面だけがかすかに光を返していた。
—
少年はゴーグルを額に上げ、
「水、思ったより冷たいね」とつぶやいた。
—
しーちゃんは岸辺で懐中電灯を構え、
光の輪をゆっくりと水面にすべらせた。
—
川の底に、何かがかすかに輝いている。
—
「見える?」
「うん…丸い…金属みたい」
—
少年は深呼吸してから、
水の中へ静かに身を沈めた。
—
冷たい水が肌を刺す。
けれど、その奥に見えたのは──
丸い鏡のような板。
—
鏡の縁には、見たことのない模様が刻まれていた。
—
手を伸ばそうとした瞬間、
鏡の表面に、まるで波紋のように“映像”が広がった。




