40/73
『しーちゃんと記憶の図書館』第144話
水守村の昔語り
⸻
川沿いを歩きながら、老人はゆっくりと口を開いた。
—
「昔、この村は“水守”と呼ばれておった。
川は命の源でな、
人も動物も、みんなここで生きていた。」
—
しーちゃんと少年は、黙って耳を傾ける。
風が葉を揺らす音が、遠い時間を呼び戻していた。
—
「だがある年、大きな水害がきてな…
村の半分は流され、
人々はバラバラになってしもうた。」
—
老人の声は、淡々としているのに、
言葉の奥に深い哀しみがあった。
—
しーちゃんは、その表情を忘れないように
そっと心に刻んだ。




