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『しーちゃんと記憶の図書館』第107話

色を運ぶ手紙



老婦人はスケッチ帳を胸に抱えたまま、

しばらく黙って立っていた。



「……このページを見ていたら、

 どうしても伝えたくなったの。

 “あなたの絵が、私をまた描く気持ちにさせた”って」



しーちゃんは笑顔でうなずいた。

「じゃあ、その想いを手紙にしましょう」



テーブルの上に便箋とペンが置かれた。

老婦人はゆっくりと言葉を紡ぎ始める。



『ずっと遠くにいても、

 あなたの色は私の中で生きていました。

 もし許されるなら、また一緒に空を描きたい』



手紙を書き終えたとき、

老婦人の頬はほんのり紅くなっていた。



「住所は知らないけれど……」

そう言いかけたところで、

しーちゃんが一枚の封筒を差し出した。



「この図書館に作品を寄贈してくれたときの送り状、

 ちゃんと保管してあります」



老婦人は驚いたように目を見開き、

深く頭を下げた。



数日後。

手紙は、風に乗るように相手のもとへ届いた。



封を切った友は、

そのまま窓辺にスケッチブックを広げたという。


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