27/73
『しーちゃんと記憶の図書館』第131話
鍵を握る日記
⸻
物語交換会も、そろそろ終わりに近づいていた。
片付けをしていたしーちゃんの前に、
ひとりの若い女性が近づいてきた。
—
「これ……預かっていただけますか?」
彼女が差し出したのは、
革の表紙に包まれた古い日記帳だった。
—
「祖母がずっと持っていたものなんです。
けれど、誰にも読ませたことがなくて。
亡くなる前、
“いつか、この日記が誰かを助ける時が来る”とだけ言っていました」
—
表紙には、かすれた金色の文字で
『風の道しるべ』 と書かれていた。
—
パラパラと開くと、
日付と短い詩のような文章が綴られている。
そして、ところどころに奇妙な地図や記号が描かれていた。
—
「これは……物語というより、何かの記録?」
—
しーちゃんは、胸の奥に小さなざわめきを感じた。
この日記は、ただの思い出帳ではない。
何か、大切な場所へ導く鍵のような気がした。
—
女性は微笑んで言った。
「もし続きを解き明かしてくれる人が現れたら、託してください」
—
しーちゃんは静かにうなずき、日記を抱きしめた。
“この日記は、まだ旅の始まりに立っている”
—
そして、その時まだ誰も知らなかった。
この『風の道しるべ』が、
後に図書館の歴史を揺るがす物語になることを──。




