第四十九話 圧倒的実力差 side.G
義経は今直接戦闘に加入していない。その現状から、俺達後方支援組は彼を狙うことで弁慶の邪魔ができる。それを前線組に抑えてもらいつつ、総員で弁慶を袋にする。そうすれば、義経も動かざるを得ないだろう。
「悠人は動きながら義経を狙って、胡桃は攻撃を受けないよう義経にちょっかいを出してくれ」
こくっと2人は頷き武器を構える。そのまま悠人は離れながら狙撃を続行、胡桃は直刀を引き抜き音もなく義経へと向かっていった。
俺も戦いに参加する事がベストなのだろうが、司令塔が自ら戦いへ赴くことはチームを瓦解させることのリスクをはらむ。だから…………
「おい坂東!起きて!龍二も五十嵐も足が痛むんだな!?待ってろ、今サトリから教わった鎧殻治癒をしてやるから……」
支援と思考が俺の仕事だ。倒れた仲間を起こして戦闘へ参加させるのも俺の役目。
俺はARモニターを複数展開して龍二の鎧殻と俺の鎧殻をリンクさせる。鎧殻を纏わない坂東と五十嵐は俺の鎧殻を経由して治癒力を高めさせる。
鎧殻とは使用者の生体電気を利用して稼働する代物。本来流れている微弱な電気で動くものなら、強い電気で稼働させたらどうなるか。
「頼む、持ってくれよ体……ッ!」
俺は自分の鎧殻の要求電気量を上げる。すると身体中からビリビリとした痛みと痺れが起こり始め、ARモニターの蓄電量がぐんぐん伸び始めた。
「んぐっ……、これなら……」
過剰供給となっている俺の鎧殻の蓄電を龍二の鎧殻へと流し込む。
するとどうだろう、彼の鎧殻で起こる治癒能力のスピードが上がっていき、痛々しい足の怪我がみるみると治っていく。
「ん…………っ、あぁ、痛みが引いてきた!ありがとな池田!」
鎧殻を持たない五十嵐の足へは俺の鎧殻を使う。手のひらをそっと患部へ乗せ、治癒能力の向きを内側から外側へと向ける。
「あぁ、ワシも痛みが引いてきた。ありがとう軍師。しかしすごいな、この鎧殻の性能」
これで足を負傷した彼らの傷はある程度治癒できた。彼らは腰がひしゃげるんじゃないかってくらいに腰を曲げて感謝を述べてくれた。そしてそのまま2人とも弁慶へと向かっていく。
あとは気絶している坂東を起こすだけだ。
「ぐっ……」
全身が痺れて痛い。手も足も痙攣してずっとビリビリする。だがこんな痛み、颯太や他の頑張ってくれている人に比べたら可愛い方だ。
「(気張れよここで!)」
震える足をガツンと叩き、壁で伸びてる坂東へ近寄る。
彼の外傷は壁との激突面である背中や後頭部に集中している。とは言え気絶するほどの衝撃を体で受けているのだから、少なからず脳みそがシェイクされた事に間違いはないだろう。
おまけに刃左衛門さんとぶつかり合った坂東の刀の腹に一本線の亀裂が走っている。次に刀のぶつかり合いが起きたらポッキリといってしまうだろう。
彼を起こすべきか、それともこのまま寝かせているべきか。
「軍師、起こしたってくれ!」
力強い五十嵐の声がこだまする。彼は俺が起こすのを躊躇っているのを見ていたのだろうか。
やはり人生経験が俺よりも多い分視野が広い。俺がまだ若く甘いから判断が鈍ると踏んでいたのだろう。
迷いはリスクを生む。だから今のこの状況は、いかにローリスクでハイリターンな結果を出せるか、俺の頭にかかっている。大将にチームを任された以上、人を動かす責任は俺が負うしかない。
俺は鎧殻の治癒能力の向きを外側へ向けたまま気付けのパルスを準備する。両の手からビリビリと僅かな電気が帯び始め、俺はそっと坂東の胸に触れる。
「起きてくれよッ!」
バチンッ!——
一瞬の電流と継続的な治癒で彼の体を目覚めさせる。すると次第にピクリと指が動き、浅かった呼吸が段々と深くなってくる。
「ハッ!」
「良かった……起きた…………」
勢いよく起き上がった坂東はキョロキョロと辺りを見回す。自分がどういった状況に置かれているのか、自分が気絶したあとの展開はどうなったのか、など考えているのだろうか、ヒビの入った刀をじっと見つめる。
少しの間を置いたあと彼はぎゅっと刀を握り込み立ち上がった。
「指示をくれ」
坂東の目は諦めていなかった。ボロボロの体と愛刀を震わせてなおその目には闘志が宿っている。そんな顔をされては俺も彼を無理をさせざるを得ない。
「みんなで連携して弁慶に膝をつかせてくれ」
「了解!」
カチンッと刀を鞘に収めて坂東は走り出す。これで対弁慶の人員は颯太を除いた9人となる。
当初の目的である義経を人質にとることを念頭に置き、俺も痺れる体を叱咤して刀を抜く。
しかし、これだけ切羽詰まる戦いを見せてくれているゾウさんと花香とサトリの体力は無限なのだろうか。弁慶の攻撃を受けて避けて流しながら、自分らも攻撃の手を止めていない。彼らの力を信じているからこそ、颯太も自分の戦いに集中できているのかもしれない。
「戦闘中に考え事かな?問題児の友達?」
———ッッ!?!?
声の方を振り返ると、頬が裂けるんじゃないかと言うほど口角が上がった刃左衛門さんがいた。そしてその奥には、二本の刀が地面に刺さって倒れている颯太の姿も見えた。
だが振り返った時にはもう遅い。刃左衛門さんの物干し竿が俺の首の真横につけられている。ここまでか、と俺は刀を捨てるしかなかった。
「そこまで」
荒くもなく大きくもないが、だが確実にみなに聞こえるような声が耳に入る。源義経だ。彼の戦闘を終わらせる号令が降りた。
「みんな、武器を下ろそう」
ぽつり、と俺は総員に告げる。弁慶に挑んでいたゾウさんも花香もサトリも、支援してくれていた悠人も胡桃も、痛む体を動かしてくれた龍二も五十嵐も坂東も、みなピタリと止まる。
そして義経の言葉を聞いていた弁慶と刃左衛門さんも武器を下ろす。
「それでは結果を言い渡す」
ガンダムOOが好きな私、小学生以来のガンプラを購入。
無事にエクシアを組み立てることに成功。やったぜ。




