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リベリオン  作者: のらねこ
第二章 JACK vs 神奈川 死線合戦零戦線

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第四十八話 圧倒的実力差④


『大将の屍を越えてゆけ』にはいくつかのプロセスがある。そのどれもが欠けてはならず、必ず遂行しなければならない。それが俺達に残された唯一の勝利条件。

 

 その1

 颯太(そうた)が死ぬ気で刃左衛門(じんざえもん)さんを止める。これが出来なければそもそも作戦が成り立たなくなり、俺達の敗北が自動決定されてしまう。


 その2

 後方支援組の俺達が(みなもとの) 義経(よしつね)を人質にとる。暗殺を得意とする胡桃(くるみ)と司令塔の俺がどうにかして義経(よしつね)の首に刃を向け、それを悠人(ゆうと)が支援する。


 その3

 義経(よしつね)に張り付いている弁慶(べんけい)を前線火力組が抑える。破壊力のあるゾウさんと花香(はなか)弁慶(べんけい)のヘイトを買い、機動力のあるサトリが手痛く攻撃する。これにより弁慶(べんけい)義経(よしつね)を護るよりも自分のことで手一杯になるはず。


 その4

 ここが正直1番の難所なのだが、義経(よしつね)に試験の合格を言わせることがこの作戦の着地点。各員が自分の持つ長所を生かし適材適所の働きをすることで、俺達JACKが有用であると証明できるはず。


 颯太(そうた)はこの作戦の指揮を俺に任せ、自分は刃左衛門(じんざえもん)さんとの戦いに全神経を集中させるはず。恐らくそれが今一番いい判断だろう。


「前線組、義経(よしつね)に斬りかかってくれ!」


 俺の号令は静かに彼らへ届き、呼吸を合わせることなく一斉に義経(よしつね)へ走った。


 異変を感じた義経(よしつね)は半歩下がるが、逆に弁慶(べんけい)は半歩前へ出る。ムスッとした顔を前線組へ向け、手は既に背中にある大量の武器へと伸びている。


 ヒュッ――


 ギギギイィィィンッッ!!――


 一度に3人もの人間が襲ったはずなのに、その刃はことごとく弁慶(べんけい)に止められてしまった。ガタイのいい体躯に見合うドッシリとした構えに打ち合いにいけば、たとえ個々の力が秀でていようと止められるのは必然。


 しかし、それにただで負けるような人材はウチにいない。ゾウさんの打たれ強さと花香(はなか)の豪胆さはさすがの弁慶(べんけい)にも無視出来ないものがあるのか、単純な膂力では彼らと拮抗した様子を見せる。

 ゾウさんプラス花香(はなか)で弁慶と拮抗するのであれば、そこにサトリが入ればその拮抗は崩れる。


 弁慶(べんけい)はリーチと刃幅に優れた薙刀を持っており、ゾウさん(大剣)花香(大槌)に対してはリーチと膂力でアドバンテージを得ている。しかし……


「懐に入っちまえばそのリーチも無駄になるなァ!」


 真白い拳が弁慶(べんけい)のみぞおち目掛けて飛ぶ。動体視力がズバ抜けて良いわけじゃない俺の目には、確実に当たると思うような速度が出ているように見えた。


「…………!」


 ガヂイィィンッ!


 おおよそ拳が腹に命中した時には絶対に出ないような金属音が弁慶(べんけい)から響く。拳を打ち込んだ当の本人(サトリ)は明らかな痩せ我慢の涙を浮かべて少し硬直している。


「そのまま打ち続けて!」


 涙目のサトリはクイッと俺の方を向いたと思えば、まるで般若のような顔で睨みつける。しかし長い時間そんなことしている暇もなく、弁慶(べんけい)はすぐさま体勢を立て直した。


 ゾウさんと花香(はなか)は呆気なく弁慶(べんけい)に吹っ飛ばされ、その勢いでサトリも離れることを余儀なくされる。


 しかし、このまま怯む彼女らではない。

 1がダメなら2、3と試し続ける。颯太(そうた)に頼まれた以上、俺も大将の屍を超えて行かねばならない。


 俺も弁慶(べんけい)の行動をよく観て考えた。

 余裕のある攻撃と防御で前線組の動きを制している彼は、その巨躯と力を活かした戦闘をしている。

 そしてゾウさんと花香(はなか)との攻防に差し込まれるサトリの攻撃は甘んじて受けている。それは、サトリの攻撃は効かないと分かりきっていて受けているのか、個別に受ける()が無いのか。


「うーむ、悠人(ゆうと)、誰かの攻撃に合わせて足を狙って狙撃する事はできる?」


「あぁ、もちろんですが、足でいいんですね?」


「足で頼む」


 もしも捌ききれずに攻撃を受けているのだとしたら、悠人(ゆうと)の狙撃も喰らうことになる。


 ゾウさんと花香(はなか)の力強い猛攻は今なお弁慶(べんけい)へと注がれている。大剣を防ぐと大槌が迫り、それを止めるとまた大剣が襲う。薙刀のリーチを活かした体捌きは見事なもので、力の受け流しも超一流。


 だが…………


「喰らえ」


 ドバアアァァァァンッッ!!——


 この閉鎖的空間を切り裂く轟音は悠人(ゆうと)第五十三式(だいごじゅうさんしき)対物狙撃銃アンチマテリアルライフル。この音は弾丸の到達よりも遅れて聞こえるため、弁慶(べんけい)は気づくのが遅れる。戦闘中はアドレナリンも出るため痛みにも鈍くなる。


 弁慶(べんけい)の足の甲にはぽっかりと穴が空いていて、そこからじんわりと血なのかオイルなのか分からない液体が漏れ出し始めた。


「ッッ!」


 手痛い攻撃を喰らったと認識した弁慶(べんけい)は狙撃手の方を見つめて狙いを定め、ドスッドスッと走り始めた。


「行かせねぇ!」


 そんな巨躯を止めるのは深紅の大剣を振りかぶったゾウさんだった。大剣の刃は弁慶(べんけい)の首には届かないものの、薙刀で受けた彼と鍔迫り合いに持ち込むことができた。

 

 全然の彼らが頑張ってくれている中俺は、2つの疑問と1つの可能性が見えてきた。


 1つ目の疑問は、小さな女の子程度の拳やただの弾丸なんて避けるまでもないとの慢心で攻撃を受けたのか。


 2つ目は、避ける()()がなかったからなのかサトリの拳や悠人(ゆうと)の弾丸を受けたのか。


 弁慶(べんけい)の反応を見るに2つ目の説が濃厚だと俺の中では踏んでいる。

 つまり、弁慶(べんけい)の対応しきれない速さの攻撃は当てることができる。


「よし、弁慶(べんけい)対策が固まった。みんな指示を聞いてくれ!」


 大将の屍を超えてゆけ、本格始動。

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