第四十七話 圧倒的戦力差③
猛攻。猛攻。猛攻。
俺達はお互いを潰し合わないように、そして個人の力を最大限発揮できるように、先生の避けた隙を潰すように猛攻を繰り出した。
サトリの速くて重い拳を避けた先には、鈍重だが武器を振った風圧も痛いほど力強い花香がおり、それを弾き距離を置いたところに、広範囲高威力の大剣を振り回すゾウさんがいる。そんな彼の攻撃をも受けきり反撃の姿勢を取ると、俺の拡張装甲が斬撃を防ぎからくり刀の刃が喉元へ近づいてくる。
誰も先生のように高スペックでは無いが、俺達の個々の能力はその辺の雑兵よりも高い。そんな俺達が本気で潰しにかかっているのだから膝ぐらい着いて欲しいものだ。いや、膝ぐらい着いてもらわなければ困る。
「ふむ、筋は悪くないが、全員殺意が無いの。これじゃ武器は力を貸してはくれぬぞ」
先生は一度に4人の近接アタッカーを相手にしているのに、その表情と行動は全く乱れを感じない。それどころか、俺達の戦い方についての伸び代を考えてる。
戦う意思とその強さを活かす事しか頭にないのか、先生は本気で戦う俺達のことをよく観ている。
先生は前からなにかに没頭すると周りが見えなくなるタイプの人間だった。だからいつもギャンブルでヤメ時を逃して大敗している。
後ろで指示を待つサポート3人には、先生のこの弱点を突いて戦いを終わらせる事が出来る作戦を指示したい。
何か、何かないか。正攻法では勝てない先生に勝つ方法を。
「何を考えてるか知らんが、今のままじゃワシにゃ勝てんぞ問題児」
「いや勝たせてもらいますよ!」
俺は自ら前へ出て先生と真正面から刀を打ち合う。それはもう、俺だけを見ろと言わんばかりの力を込めて刀を振るった。すると俺の誘いに乗ってか、先生も俺の太刀筋に集中するようになった。
「すぅぅ………………、ふんっ!!――」
大きく息を吸い、歯を食いしばり、からくり刀に思い切り力を込めて大きく振る。その間呼吸はせずひたすらに腕を動かし、筋肉から酸素が無くなるまで動き続けた。
しかし動けど動けど、先生との力の差を思い知るばかりだった。
そこで俺は根本から考え方を変えるため、先生が言った言葉を思い返してみることにした。
【殺意が無い】
この言葉が頭の中に浮かぶ。俺達を試すつもりの先生を、俺はもちろんJACKのみんなも、誰1人殺そうとは思っていない。
しかし先生は、殺意が無ければ武器は力を貸してくれないと言った。これはどういう意味なのか、俺なりに考えてみる。
少なくとも殺意とは相手を殺そうとする意思という意味で合っていると思う。ならばこそ、相手を殺す意思のない者に、相手を殺すための武器が力を貸すはずがない。という意味になるのだろうか。
であるならば、俺は先生を殺す気でからくり刀を振ってみる。
(ブチ殺すッッッ!)
ピリリッ――
目付きも剣先も覇気も殺気も、全て先生の命一点に集中し、完全に敵を殺す気でからくり刀を握り直した。
すると先生はニヤリと笑い細い目を少しだけ垂れさせる。口角の挙がった口からは僅かに歯が見えており、俺の殺気を感じて喜んでいるようにも見える。
「わしを殺してみぃ!」
直後先生が持っていた物干し竿は淡く瑠璃色に光り、次第にバチバチと蒼い稲妻を纏っていく。俺のからくり刀の鞘から纏う高周波とはまた違った形相で稲妻を纏っている。
「構え!」
ビクッ!――
先生の喝に身体が反応し、からくり刀をごく自然に構えてしまった。身体がこわばり少し硬直もしているが、殺意と稲妻を纏った物干し竿が眼前に迫ると腕が動いた。
ガギイィィィンッッ!――
バチバチッ!――
ガギギギガギィィィンッ!!!――
目で追い腕を動かすだけの防戦で精一杯になってしまう先生の猛攻は、俺以外の他のメンバーが助けに入る事が出来ないぐらいの激しい剣戟だった。あんなに長く、あんなに重そうな刀を、速く強く振りかざしている。
しかし俺も負けてはいられない。ここで退けば今までのナマケモノの俺と変わらない。ここで変わるしかない。
「そうか、そういう事か!」
「ん? なんじゃ」
先生の目にも止まらぬ刀さばきを受け、ごくごく僅かな隙で微量な反撃をしているさなか、俺はこの勝負に勝てる良い作戦が思いついた。
今俺と先生はタイマン状態にあり、その力はわずかながら拮抗している。いや、拮抗するように先生が戦ってくれている。ようは、俺を舐め腐りながらも俺にしか集中していない状態にある。
元々この同盟結成試験は俺達の有用性を証明するためにある。つまり、大将である俺が強いのは大前提なうえで、他の者も有用であることを伝えなければならない。
「おい岳陽、今から言うことを実行してくれ。……………………」
「……………………はぁ? 俺らはどうなるんだよ」
「お前らならいける。俺は今センセーの相手するしか出来ないから頼んだ。お前らも聞いてたな。軍師に従えよ」
気絶している者以外のJACK総員に作戦を話し、その実行及び指揮に岳陽を据えた。暇しているであろう戦闘狂共もこれなら大満足間違いなし。
「殺し合い中にのんきなもんだな問題児ィ!」
ギイィィンッ!――
「作戦練るのは弱者の特権っすよセンセー!」
少しは大将らしいところを見せなければならない。多少格好つけてでも、アイツらの作戦の邪魔はさせない。文字通り、この俺の命を持って先生を俺に釘付けにさせる。
作戦名『大将の屍を越えてゆけ』開始。




