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リベリオン  作者: のらねこ
第二章 JACK vs 神奈川 死線合戦零戦線

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50/50

第五十話 圧倒的実力差⑤


 ——数分前——


 

 あっちは岳陽(がくよう)に任せたから大丈夫だろう。他の奴らも指示を聞けないようなヤツらではないし、個々の実力は保証できる。


「センセー」


「なんじゃ」


「道場を離れてからそんなに経ってないのに、俺いろんな経験したんすよ」


 センセーと話しながら俺は黒鞘に手をつける。ふよふよと浮く拡張装甲を鞘の周囲へと近づけ、ガチャンガチャンと変形合体させる。

 そうして出来た叛逆刀(ダンテ)囚獄刀(ジョン)をだらりと下げる。だが闘志が無く諦めたわけではない。


「だろうな、目が違う」


 センセーも物干し竿(宝塔鬼刃)の切っ先を地面スレスレにまで下げる。俺のやろうとしている事はセンセーには手に取るようにわかるのだろう。


 互いに構えは同じ。切っ先も目も同じように向かい合うが、俺の身体からはセンセーを殺す殺意が湧き出ている。しかし、俺が本気でセンセーを殺す事なんて万に一つもできはしないが、刃を体に突き立てる事くらいはできないと困る。


 それに、大切な人だからといって手を抜く理由にはならない。


「「【多聞流(たもんりゅう)(みだ)瑠璃(るり)】ッッ!!!」」


 俺の二刀とセンセーの一刀は刃の残像を生むほど速く空を斬り、その軌跡はより複雑な弧を幾度となく描く。何度も刀を打ち合い、そして何度も斬り返す。

 俺は2本の刀で攻撃をしているのに対し、センセーは扱いにくそうな刀1本で俺の攻撃を捌ききっている。いや、それだけじゃない。俺の刃は2本ともセンセーの体を斬るに至っていないのに、逆にセンセーの刃は少しずつ俺の鎧殻を削り、皮を斬っている。


 やはり一筋縄ではいかない。剣の一太刀一太刀が俺の先をゆき、戦いにおいての先読み能力が半端じゃない。ギャンブルではカスだが。


 やはりこの人は戦いのセンスが飛び抜けている。俺以上に闘争そのものに愉悦を感じながら、心底楽しそうに剣を振る。


「まだまだ連打が甘いな!」


 ガギンッッ!——


「しまっ——がはっ!」


 二刀の連打を大きく弾き、崩れた体勢にすかさずクソ長リーチの峰打ちをぶち込んできた。峰ではなく刃を受けていたなら、今頃俺の胴体は豆腐みてえにスパッとイカれただろう。


「【多聞流(たもんりゅう)瑠璃波(るりなみ)】!」


 マジかよ……!

 センセーは俺の目の前から姿を消した。いや、一瞬のうちに起きた極端な低姿勢による突進だ。瞬きをする間にセンセーは俺の右腕をガッチリと掴んでいて、俺が振りほどこうと囚獄刀(ジョン)をセンセーへ向けるやいなや、合気道のような柔術で俺は地面へとぶん投げられる。


「かはっ……」


 だが床で寝ている暇は無い。すぐさま体勢を立て直すため床を跳ねて左右の刀をセンセーへと…………


「1度振ってみたかったんじゃよからくり刀(リベリオン・ジャック)


 センセーの右手には俺の右手から離れた叛逆刀(ダンテ)の姿があった。


「返してください!」


 左手の囚獄刀(ジョン)を右手へと持ち替えて1歩。白く傷ついた床を踏みしめ一瞬にしてセンセーの眼前へ迫る。高周波を纏った黒刀を縦に割るよう落とすが、センセーは難なく白刀でそれを防ぐ。


 ジリジリッと刃同士は己の切れ味を誇示するよう火花を散らす。白も黒もサトリと俺が育てた世界に2本とない名刀。ゆえにどちらも己が強いと譲らない。


 ガギンッ!——


 ギャリッ!——


 刃が欠けるんじゃないかというほど力を込め、一太刀でも受けたら命に関わるほど殺意を乗せる。


「ははっ!その顔、様になってきたな問題児!」


 ガギィィンッ!——


 白と黒は再び睨み合う。そこに映った両者の顔は、鋭い目付きで相手を刺しながらはち切れんばかりの笑顔をしていた。


 こんな窮地は体感したことがない。今まではだいたい何とかなると思いながら戦ってきたが、何とかしなければと思いながら戦うとプレッシャーで刀が鈍りそうになる。

 だがそのプレッシャーの中、力のセーブを捨てた本気の殺し合いは最高に楽しい。


 心のどこかでどうにもならないんじゃないかと思えば思うほど、それならとことん出し切ってみようとタガが外れる。


「【多聞流(たもんりゅう)瑠璃彗星(るりすいせい)】ェェ!」


 センセーのように弓を引くようなタメの長い刺突では当たらない。なら俺は、同じ技でもより速くよりコンパクトに撃つ。


 通常の刺突モーションから早い段階で刀を前へ突き出す。

 しかしセンセーはそれを後ろへ1歩下がる事で避ける。刀の切っ先5センチほどの間を開け、無駄なく反撃できるジャストの位置にセンセーは立っている。


 だが。


 俺はニヤけた顔をさらに歪ませ刀弾射出狼煙(リベリオントリガー)を弾く。黒刀の柄内部で超過負荷電圧機構ハイパーオーバーロードを一瞬にしてフル稼働させ、激しい稲妻と共に黒刃を射出。


 高周波を帯びた黒い刃はセンセーの身体を容易に貫く。


 …………はずだった。


「うそぉ!?!」


 センセーは俺の攻撃の()()()を察知したのか、トリガーを弾いたと同時に身体を全力で後ろへ逸らし、「70歳ならこのくらい腰曲がるか〜」の前後逆バージョンを披露してくれた。


 あまりの身体の柔軟さと獣のような野生の勘に、もはや感嘆の声しか出せない。


 だがさすがのセンセーも無傷とまではいかなかったようで、ほんの僅かに腹部の頂点から小さな赤いシミができた。いや、カスっただけなの自信なくなってくるんだが。


「痛痒いのぉ、問題児ィィ!」


 ひっ……、ブチ切れてんよセンセー…………。


 急いで刃を戻して攻撃に備えるが、そこからのセンセーの動きはまじでバケモンみたいに変わった。生物なら誰しも地に足をつけてから行動が始まる。人も、犬も、鳥でさえ足場から足場へと飛ぶ。

 だがセンセーの動きはまるでドローン。縦横無尽に地を駆け()を駆ける。()()()()()を蹴って移動しているとしか思えないほど、宙での動きが変則的で変態的すぎる。


 正面から刃が飛んできたと思い、こちらも刃で応戦しようとした時には既に身体のどこかが浅く切られている。正面からならまだ姿の捉えようもあるが、地面を除く360度のどこからでもその刃が襲ってくるのがもう絶望。ただ不幸中の幸いなのは、センセーの持つ獲物が物干し竿(宝塔鬼刃)ではなく叛逆刀(ダンテ)であり、クソ長リーチのアドバンテージが無いことだろう。まぁどうせ斬られることに変わりは無いから意味は無いが。


 だがここで挫けては大将の名折れ。仮にも組織の頭なら、託した作戦を成功させるまで絶対に諦めない。


 不可視の刃から当て感で刀を振りながら打開策を考えた。センセーの動きの癖や刀の振り方、俺の刀の振り方や装備の性能など、1から全て絞り出す。


 からくり刀(リベリオン・ジャック)には高周波を纏わせ切れ味を上げる機能や鞘の特殊機構などがある。俺の鎧殻にも刀を引き寄せる機能や拡張装甲が………………あ!!


 目にも止まらぬセンセーの猛攻を止める手段。簡単な話だった。叛逆刀(ダンテ)を手元に引き寄せたらいい。

 パチッと電気を帯びた手のひらをセンセーへと、いや、叛逆刀(ダンテ)へと向ける。


「ぬおぁっ!?」


 手元が狂ったのか、センセーはマヌケな声を出して俺の真横を横切って空を斬る。さらにラッキーな事に、空振った勢いでセンセーの手からスルリと叛逆刀(ダンテ)が抜け落ちる。

 

 この好機を逃すわけにはいかない。


 そうしてずっこけたように地面に手をついたセンセー目掛けて囚獄刀(ジョン)を振りかぶる。これは入っただろ、なんて心の中で勝利を確信した。


「甘いな問題児!」


 眼前へ迫る黒刃を白刃取りならぬ黒刃取りでパシッと掴み、そのまま俺を自分の方へ引き込む。体勢が崩れた俺の顔面に向け強烈な蹴りを放ち、囚獄刀(ジョン)までもセンセーに奪われてしまった。

 尻もちをつき涙目で鼻血を垂らす俺をニヤけた顔で見るセンセーは、地面に転がった叛逆刀(ダンテ)を拾い上げる。両手を二刀へかざし引き寄せを試すが、センセーは力ずくでそれを阻止する。


「何か言い残すことはあるかの?」


「まだ、勝てないっす」


「知ってる♡」


 センセーはウッキウキで俺の胴体に一瞬にして4回斬撃を入れる。鎧殻ごと胴の前面をぶった斬られ、その傷はまるでアスタリスク、いや、ア〇ルのような模様で刻まれた。最悪だ。

記念すべき50話は下品な敗北で幕を閉じましたとさ

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