怪獣退治やめます!
うーん、どうしょう
エント村へと向かう馬車を見送りながらわたしは思った。馬車にはBクラスの冒険者さんたちが8人ほど乗っていた。かき集めたメンバーで即席のパーティーを組んで向かうことになったのだ。
でも、肝心の魔物はわたしが既に倒しちゃっているから着いたらみんな、がっかりするだろうな思った。かと言って、本当のことを言う訳にもいかない。
やっぱりわたしが倒しちゃったらダメだったんじゃないの? と思っていると頭の中でオプティオンさんの声が響いた
《何度も言うが怪獣は君たちの力では倒せない。シア、君がやるしかないんだ》
《う〜ん、そうなのかなぁ》
正直、わたしは半信半疑だ。この間は確かに冒険者では倒せなかったけど、それはギルやファナたち駆け出しの冒険者だったからじゃないのかしら、と思うのだ。あれがガンツさんとかようなA級の冒険者だったら倒せたんじゃなかろうか。
A級の人だと素手で大岩を砕いたり、雷を落とせたりするらしい。S級ならもっとすごいこともできると思う。思うってのはS級の人なんて見たことないからだけど、だけどすごいのは確かなの。だからさっきの怪獣だって倒せるように思うのだ。
そうなるとわたしは冒険者さんたちの仕事、つまり生活の糧を奪ってしまったことになる。それは冒険者ギルドの受付嬢としてあってはならないことじゃないだろうか。
《ねえ、やっぱりわたし、怪獣倒すのやめようと思うの。冒険者じゃないわたしが余計なことをするのはみんなの迷惑になると思う》
オプティオンさんに呼びかけてみたけれど返事はなかった。
むぅ、無視かぁ。いいですよ。そっちがその気ならこっちも勝手にやらせてもらいますから!
《いいですね。もう怪獣退治とかしませんから!》
わたしは一方的に宣言をしたけど、やはりオプティオンさんからの返事はなかった。
そんなこんなで、その日の夜。
冒険者さんたちが帰ってきた。受付嬢の仕事を退けて、酒場のお手伝いをしていた時だ。
みんながみんな、疲れて、ムッとした顔をしていた。
「おう、どうだった?」
早速ガンツさんがコルビットさん、うちのギルドのB級の魔法使いさん、に様子を聞いてきた。
「どうもこうもあるかい!」
コルビットさんは開口一番そう言った。いつも温厚なコルビットさんからはちょっと想像できない荒い口振り。これは相当頭に来ている。
「とんだ無駄足だったぜ」
「無駄足? どう言う意味だ?」
「村に着いたら、もう魔物は退治された後だったってことだよ」
「退治されてるって、オイオイ、一体誰が退治したんだ?」
「人じゃないらしい。別の魔物だ」
「別の魔物だと? 一体全体どんな魔物だ?」
はい、それ、わたしです。とガンツさんとコルビットさんの会話を盗み聞きしながら心の中で答える。
「よく分からないが、目撃者の話だと銀色の巨人だ。空中でロック鳥とやりやったあと、山火事を消してどっかへ飛んで行ったらしい」
「空飛ぶ銀色の巨人で、魔物を倒して、山火事消して、どっか飛んでった……意味が分からん」
「俺も意味分かんねぇよ。ただ、完全な無駄足だったってことだ」
「ふむ。どこぞのもぐりの冒険者たちが俺たちのテリトリーで活動したってんなら取っ捕まえて損害賠償もできるだろうが、相手が銀色の巨人となるとなぁ。
銀色の巨人……、銀色の巨人。それってこの間のキラリン湖の時に出た銀色の巨人と同じなのか?」
「知らん! 俺はキラリン湖の時も今回も直接見たわけじゃないからな。
ああ、クソッ! 腹が立つ。
今日は店じまいだ。飲んで帰るぜ!」
コルビットさんはそう言うとそのままギルド内の酒場エリアへと歩いて行ってしまった。
なんかごめんなさい……
今日、わたしはいったい何人の冒険者さんたちに無駄足を踏ませてしまったのでしようか
やっぱり、わたし、金輪際、怪獣退治やめることにします
去っていくコルビットさんの後ろ姿に心の中で謝りました。




